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断罪

初めましての方は初めまして“マーキ・ヘイト”です。

今回から新しい長編小説を投稿して行きたいと思います。

投稿頻度は一週間に一回程度になると思いますが、どうか気長に待って頂けると幸いです。

それでは前書きはここまで。

本編スタート!!

 今にも雨が降りそうな程、厚い雲に覆われた空。地上に太陽の光が届かず、一日中薄暗い。そんな景色を冷たく硬い床に座りながら見上げる青年。


 ここは独房。薄汚いボロボロの薄い服に身を包み、何日も飲まず食わずなのか、唇と肌はガサガサ、服の上からでもガリガリに痩せているのが見て取れる。綺麗だったであろう金髪は、薄汚れた黄土色に変色していた。


 口で呼吸するのがやっとであり、両手首に取り付けられた木製の拘束具が、彼の自由を奪っていた。


 そんな彼の下に一人の男が訪れる。助けに来た……という雰囲気では無かった。それは男の異質な風貌が物語っていた。


 背丈は青年と同じ位だが、素肌を一切見せない真っ黒なローブで全身を包んでいた。その為、唯一体型から男性であるという事しか分からない。


 また、その男の手には切っ先の無い剣が握られていた。所謂、“エクスキューショナー”、処刑人の剣と呼ばれる道具だ。


 そう、この男は死刑執行人。そして囚われの青年は死刑囚だったのだ。男が独房の鍵を開け、中に入って来る。今日が青年の死刑執行日当日。男の姿を見上げながら全てを悟った青年が口を開く。


 「ぞ……う……が……じ……がん……が……」


 口の中の水分が全く無い為、発せられた声はガラガラ。しかし、死刑執行人が来たというのに、青年は至って冷静だった。ふらふらと覚束ない足取りで、男に自ら近付いて行く。


 すると、男は懐から事前に用意していた布状の袋を取り出し、青年の頭に被せた。そして何も言わず拘束具を引っ張り、青年を無理矢理独房から連れ出した。




***




 王宮の中庭。花と緑に囲まれ、蝶々と小鳥が集うこの場所は、貴族や令嬢の憩いの場として人気だ。


 そんな場所の中央に、血塗れで上半分に奇妙な窪みがある木製ブロック、その前に備え付けられたこれまた血塗れの木製バケツと、非常に似つかわしくない二種類が置かれていた。


 するとそこに死刑執行人の男が現れ、続いて袋を被らされた青年が連れて来られた。そんな二人を王宮内の窓ガラスから眺める者達がいた。顔はハッキリとは分からない。が、全員薄ら笑いを浮かべている事だけは見て取れた。


 今日、この場所で公開処刑が執り行われる。美しい花や草木が青年の血で真っ赤に染まる事となる。男は何も言わず青年を促す。また青年も何も言わず、黙って血塗れの木製ブロックの前で膝まずき、ゆっくりと上半身を地面に下ろした。木製ブロックの奇妙な窪み、そこに丁度綺麗に青年の首が収まった。


 その様子を見届けた男は、持っていた剣を両手で握り締め、ゆっくり、大きく、高く振り上げた。


 その時、剣を握る彼の両手に一粒の水滴が降り落ちる。雨だ。弱々しく降り始めた雨は瞬く間に強い豪雨と化した。次第に近くで雷が鳴り響く。そんな中、窓ガラス越しに見ていた者達が何やら騒いでいた。この雨と雷のせいでよく聞こえないが、身振り手振りから早く処刑しろと指示している様だった。


 無理もない。振り上げた剣が避雷針になりかねないのだ。そうなれば処刑は延期。そんな事は、この場の全員が望んではいない。


 激しい雨に打たれながら男はしばらくの沈黙の後、振り上げた剣を濡れて滑らない様に改めて両手で強く握り締め、青年の首目掛けて勢い良く振り下ろした。


 まるで天がそれに応えるかの様に、雷が中庭に落ちた。思わず耳と目を覆いたくなる程の轟音と閃光。気が付くと処刑は完了しており、青年の首は前に備え付けられた木製バケツに入っていた。


 その光景を窓ガラス越しに見ていた者達は、高笑いを浮かべた。そしてもう興味が無くなったのか、そのまま窓ガラスから離れて行った。残されたのは青年の遺体と、彼を亡き者にした処刑人の男の二人のみ。


 雨はよりいっそう激しさを増す。役目を終えた男は持っていた剣から手を離し、両膝を付きながら木製バケツに入った青年の首を両手で丁寧に持ち上げる。


 「……うっ……うぉ……ぉおおおおお……おおおおおお……」


 男は泣いた。青年の首を強く抱き締めながら。首から滴る血でローブが汚れるが、この雨で直ぐに流れ落ちてしまう。そして男の叫び声は、この雨に掻き消されてしまうのであった。

遂に始まりました。

初めて投稿した作品「笑顔の絶えない世界」の時と同じ様な暗く謎めいた始まり方でしたが如何だったでしょうか?

気に入って頂けたのならば幸いです。

それではこの辺で……。


次回もお楽しみに!!

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