第8話 一次転職
朝起きて、魔法を……使いたいのだが、何を使おうかな。『エンチャント』をかけながら教会に行くか。
「ツクモ様?なぜ魔法を使っているのですか?」
「なぜわかった!?」
「【魔力感知】というスキルがありますので。それで、なぜ魔法を?」
「MP使わないと勿体ないと思って。『エンチャント』なら他人に迷惑かけないし」
「おやめください。ギルド内であれば問題にはなりませんが、街中を歩く際に使っていれば、騎士に捕まりますよ?」
「野蛮な騎士共め!」
「傍から見たらツクモ様が野蛮人ですよ」
「仕方ない。部屋に戻って『ライト』と『ダーク』を……」
「訓練場でお願いします」
「あー」
訓練場に来たのに、安全な魔法を使うのはちょっと味気ない。『サンダー』を連射する。
「『サンダー』『サンダー』『サンダー』『サンダー』……」
「お、おい、お前……魔力切れを起こすぞ?」
「あ?」
「そんなに魔法を連発したら魔力切れでぶっ倒れちまうって」
「MP量は問題ない。鑑定したら分かるんじゃないか?」
「【鑑定】なんて誰でも持ってるわけじゃねぇんだよ」
「へぇ」
強面なのにどことなく、優しげな雰囲気を纏う冒険者(?)に話しかけられた。【鑑定】って生まれながらに持ってるスキルじゃないのか。
10残しで1540MP分『サンダー』を的に撃ち込んで、訓練場を後にする。
教会の有無って【地図】を使えば分かる事だったな。地図を見ながら教会に歩いていく。
デカい……。冒険者ギルドもデカかったが、それに負けないくらいの大きさだ。中に入って、聖職者ってぽい人に話しかける。
「すいません、教会で転職できると聞いたのですが」
「転職希望の方ですね。一次転職でしょうか?」
「はい」
「では、転職の間にご案内します」
一次かどうか聞くってことは、転職の間は幾つかあるのかな?
「こちらの水晶に触れて表示された職業の中からお選びください。私は外で待っていますので、終わったら声をかけてください」
「分かりました」
バカでかい水晶に手を触れると、ステータスのようなものが表示された。
名前:ツクモ・ニノマエ
第1職業候補
・魔法剣士
・魔法士
・治癒士
・聖剣士
・剣闘士
・聖法士
第2職業候補
・魔法拳士
・魔法士
・治癒士
・聖拳士
・拳闘士
・聖法士
第1職業は魔法剣士一択だが……第2職業はどうするか……。職業スキルを全部使う方向性なら、聖拳士かな。
魔法剣士と聖拳士を選ぶと、ステータスが変わっていた。
名前:ツクモ・ニノマエ
種族:人間
Lv:10
HP:1550/1550
MP:1100/2550
加護:無し
第1職業:魔法剣士
第2職業:聖拳士
スキル:【鑑定Lv:16】【偽装Lv:MAX】【言語理解】
【アイテムボックス】【地図】
職業スキル:【剣術Lv:25】【魔法術Lv:26】【拳術Lv:20】
【治癒術Lv:26】
魔法スキル:【雷魔法Lv:19】【光魔法Lv:14】
【闇魔法Lv:14】【無魔法Lv:16】【治癒魔法Lv:26】
【生活魔法Lv:1】
【詠唱省略Lv:37】【MP上昇Lv:5】【MP回復量上昇Lv:6】
耐性スキル:【雷耐性Lv:48】【身体的苦痛耐性Lv:48】
【疲労耐性Lv:9】
ユニークスキル:【運命改変】
近接職2つでHPが+1000、魔法職2つでMP+1000か?それとも1つだけでも1000ずつ上がるのか?よく分からん。外の聖職者に聞いてみるか。
「終わりました。転職に関して質問があるのですが」
「なんでしょうか?」
「魔法剣士と聖拳士にしたら、HPとMPが1000ずつ増えていたのですが、これは普通ですか?」
「普通ではありません!普通ではありませんが、混合職を2つも取ればそれくらいは上がるでしょう……それにしても、MPが上がりすぎですが。普通の二次職はHPなら500ずつ上がりますが、MPは魔法職にしても250ずつで合計500しか上がらないはずです」
「そうなのか……。【MP上昇】って関係あったりしますか?」
「関係あります。転職時の【MP上昇】のLv × 100のMPが、毎回足されていきます。今、Lv:5ですか?」
「はい」
「なるほど。だから、1000も……」
「謎は解けましたね。ありがとうございました。それではこれで」
「お待ちください!教会に所属する気はありませんか?」
「俺は冒険者ですよ?」
「冒険者でも、教会所属の方はいます」
「うーん」
「神を信じていないのですか?」
「神は信じていますよ?」
「ではなぜ?」
「逆に、なぜ勧誘を?」
「あなたが聖拳士だからです。当然、【治癒魔法】を使えるのでしょう?それに最低でも2000のMPがありますよね?」
「だから?」
「人々のために使いましょうよ」
「断る」
「はい?なぜですか?」
「ちなみに、治癒神様は普段何をしてるんだ?」
「治癒神様は聖職者達に祝福を与えてくれています!祝福があれば、我々聖職者の【治癒魔法】の効果が高まるのです!」
「じゃあ、治癒神様を勧誘すればいいんじゃないのか?祝福で効果が高まったとしても、治癒神様並にMPがあるわけじゃないだろ。治癒神様並に効果が高いわけでもない。なら、治癒神様にやってもらった方がいいんじゃないのか?」
「治癒神様はお忙しいのです」
「俺も忙しいな。だから、断る。じゃあな」
「え、え、お待ちを!人々のために力をお使いください!」
聖職者を無視してそのまま教会を出た。宗教の勧誘って、やっぱりろくなことにならないな。今後は全部無視していこう。神は信じてるさ。神に会ったことがあるんだからな。でも、それとこれとは違うだろ?
あれだな、MPが上がったのは嬉しいが、使い切るまで時間かかるな。まだ夕方まで時間があるし、ギルドで魔法を使うか。
「ツクモ様。無事転職できたようですね」
「鑑定しましたか?」
「あ、つい……失礼しました」
「構いませんよ」
「以後、確認をとってからに致します」
「聖職者って面倒くさいですね」
「勧誘されましたか?」
「えぇ……聖拳士だから、【治癒魔法】は使えるんだろ?って」
「あぁ……。話し方が元に戻っているのは、聖職者と話したからですかね」
「あ」
「ふふ。勧誘は断られたのですか?」
「断りましたよ」
「今日は依頼を受けますか?」
「ここから森へ行っても、すぐに帰ってこなくてはならないので、訓練場でLv上げしますよ」
「そうですか。【魔法術】と【治癒術】が上がりやすくなっているでしょうからね。頑張ってください」
「はい。あ、受付さんの名前を教えてもらっていいですか?」
「私の名前ですか?」
「声をかけるときに、「受付さん」よりも名前の方がいいでしょう?」
「そう……ですね。私の名前は『レイヴン・クライシス』と申します。レイヴンとお呼びください」
「レイヴンさんですね。では、今後ともよろしくお願いします」
「はい」
受付のお兄さん、改め、レイヴンさんと別れて訓練場に入った。
今更なのだが、上がりにくかったはずの【魔法術】と【治癒術】が【剣術】と【拳術】くらいLvが上がってるのはヤバくないか?
『エンチャント』を掛けてから木剣を振るう。「魔法」使いながら「剣」を振るうのは、魔法剣士っぽいな!
ステータスを見てて思ったのだが、【恐怖耐性】ってスキルは無いのか?雷竜のときに取得しててもおかしくないと思うんだけど……。雷竜のときに俺は恐怖を感じていたか?否!ブチ切れていただけである。だからだな。
「精が出るね、ツクモ君」
「クラインか」
「もう草原ではやらないのかい?」
「草原で魔法を使っちゃいけないらしい」
「周りに人がいないとしても、危ないからね。しかも雷って……威力が高かったり、込めるMPが多ければ、放った魔法が消えるのに時間がかかるからね」
「攻撃系は初期魔法しか使えないから大丈夫だ」
「初期魔法でも魔法スキルのLvが上がれば威力も上がるよ?それに、魔法というのは"最低"の消費MPしか表示されないからね」
「最低?」
「そう。例えば、【火魔法】の『ファイヤーボール』だけど、消費MPは10。でも、20や30を込めても発動するんだよ。威力は2倍、3倍ってなるね」
「ほう!そうなのか!!」
「ツクモ君の『サンダー』って結構MPを込めていたんじゃないのかい?」
「最低の20しか込めてないが?」
「威力高すぎじゃないかい?」
「【魔法術】と【雷魔法】のLvの問題だと思うぞ」
「教えてくれたりは?」
「見たければ鑑定しろ。【鑑定】を持ってないならわざわざ教えるつもりもないな」
「だよね〜」
「込めたMPが多ければ、スキルに入る経験値も増えるのか?」
「もちろん増えるよ」
「おお!だったら」
「でも、今は【剣術】のLv上げをしているんだろう?なら、『エンチャント』を掛けたままのほうが早く素振りできるから、その分多くの経験値が入ると思うよ」
「『エンチャント』って消費MP増やしたら効果時間も増えるとかは……」
「無いね。効果は上がるけど時間は上がらないよ」
「チッ」
「だから、1回1回掛け直しな」
「そうする」
それから、途中で回復した分も含めて1300程消費するまで剣を振り続けた。
シャワーを浴びて、服に『クリーン』を使い、キレイにした。『クリーン』を使った瞬間、疲労感が出てきた。1回ではキレイにならなかったからだ。【生活魔法】のLvも上げないとな〜。
明日は基礎Lvを上げに森へ行く。Dランクの依頼もこなしたいところだし。
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名前:ツクモ・ニノマエ
種族:人間
Lv:10
HP:1550/1550
MP:0/2550
加護:無し
第1職業:魔法剣士
第2職業:聖拳士
スキル:【鑑定Lv:16】【偽装Lv:MAX】【言語理解】
【アイテムボックス】【地図】
職業スキル:【剣術Lv:25】【魔法術Lv:29】【拳術Lv:20】
【治癒術Lv:26】
魔法スキル:【雷魔法Lv:19】【光魔法Lv:14】
【闇魔法Lv:14】【無魔法Lv:21】【治癒魔法Lv:26】
【生活魔法Lv:3】
【詠唱省略Lv:39】【MP上昇Lv:5】【MP回復量上昇Lv:6】
耐性スキル:【雷耐性Lv:48】【身体的苦痛耐性Lv:48】
【疲労耐性Lv:11】
ユニークスキル:【運命改変】
プレビューを見ると
ステータスのスキル欄がごちゃごちゃしているので
1話から少しずつ直していきます