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解決×昔話

 再びスマホに耳を当てる。


「あ、はい、大丈夫みたいです。でも、こっちもあまり準備とか出来ていないので住むには少しばかり居心地が悪いかもしれません」

「分かってるよ。ああ、口調とかも変えた方がいいかな。変に思われるかもしれないから」

「いえ、別に構いませんよ。多分既に俺も初も変わり者と思われているでしょうし」


 俺の言葉に初が「私は変ではありませんけど……」と口にするが、むしろ今のところ普通のところがない。


「まぁ、私はとても強くて頼りになるから、もう安心していていいよ。……詳しい話は、ゆっくりあとで話そう」

「ああ、歩いているんでしたっけ。すみません、急にこんな……」

「いや、こちらの都合も含めて君達に協力するつもりだから気にしなくていい」


 ……なんかいい人そうだな。という風に感じながら改めて礼を言う。


「細かい話は電話じゃなくて会ってからしよう。可能な限り急いでいくから」

「はい。ああ最後にいいですか?」

「何かな」

「本当の方の名前も聞いていいですか?」

「西郷くんに名乗ってた名前?」

「いえ、最初の名前です。知らないと……なんか悪い気がするので」


 俺が尋ねると女性は不思議そうな声を出してから「ふふっ」と笑う。


「いむだよ。苗字はなかった」

「いむさん。……すみません、これから妹をよろしくお願いします」

「いや、昔の名前で呼ばれても困る……まぁ、そろそろトンネルに入って電波途切れるから切るね」


 女性は電話を切り、俺はホッと息を吐いてソファにもたれて初を見る。


「あー、オールオッケーっぽい。だいたい解決だ」

「……えっと、ほとんど兄さんの声しか聞こえてなかったんですけど……そんなに信用出来そうな人だったんですか?」

「まぁ、少なくとも俺よりかは怪しくないな」

「それってほとんど何も言ってないのと同じでは……?」


 初の中での俺の怪しさはどうなっているんだ。……いや、まぁ……怪しい存在なのは否定出来ないけど。

 そう思っていると初はクスリと笑う。


「冗談ですよ。もう信用してます」

「いや、疑ってくれてもいいが……。少しゆっくりするか」


 初はコクリと頷いて俺の隣に座る。


「兄さんの、楽しかった思い出とか聞きたいです。……あっ、途中で喉乾いちゃうかもしれないので飲み物用意しますね。兄さんは体力を使わないように座っていてください」

「……どれだけ長時間語らせるつもりなんだ……?」


 初はコーヒーの入ったカップを二つ持ってきて、ミルクと砂糖を隣にポンと置く。


「コーヒーカップとか、買いに行った方がいいかもしれませんね。通販だとよく分からないでしょうし」

「あー、まぁもう一人増えるしな。来たら一緒に色々買いに行った方がいいだろうな」


 俺がそう言うと初は少しむすーっと頬を膨らませる。


「どうしたんだ?」

「端的に言いますと、二人でというつもりの誘いだったので軽く流されたことに不満を抱いています」

「あ、あー、なるほど。デートの誘いだったのか……」

「デートとは言ってませんけど」

「まぁでも、結局ふたりで買いに行くのは難しいからなぁ」

「それはそうですね」


 話が終了してしまった。

 まぁ、えっと……楽しかったことか……。まぁ初も暗いことばかりで明るい話をしたいのだろう。

 とは言っても、基本的に根暗だからな。


「……まぁ初からビー玉をもらったのとか嬉しかったな」

「それは思い出じゃないです。近況です」

「俺はこの思い出を胸に生きていこうと思っているんだ」

「もっと前向きになってください。……あの、別に答えなくてもいいんですけど……彼女とかいましたか?」

「いると思うか?」


 初は嬉しそうに「いそうにないです!」と答える。……実際いないんだけど、そうハッキリ言われると……。


「ほら、だって兄さん、人前でご飯食べるのも嫌がるじゃないですか。他にも色々と人と関わるのが嫌そうですから」

「ああ、そういうアレな」


 だよな。決して俺がモテなさそうということを初が言うわけないよな。優しいし。


「あと、全体的に独特な空気感を纏っているので人を選びそうです」


 ……うん。多分気を遣ってくれているけど暗にモテなさそうって言ってるな。


「……まぁ、実際にモテなかったけどな。……もっと楽しい話をしよう」

「えへへ、まぁそうでしょうね。えへへ」

「……嬉しそうだな」

「私は兄さんのいいところを知ってますからね。独り占めです。デートとかもしたことないんですよね?」


 デートという言葉を聞いて少し考えた後に頷いて肯定を示すと、初は少し驚いた表情を浮かべて俺を見る。


「えっ、今なんで考えたんですか? もしかして昨日の帰り道をデートに含んでましたか?」

「ああ、いや、似たようなことがあっちの高校でも少しあったなって」

「え……な、な、なんでですか!?」

「いや……デートじゃないぞ? 遊びに行ったわけでもなく……」


 何故か慌てている初に肩をぎゅっと握られる。


「しょ、詳細を教えてください」

「いや、本当に何もないというか……。あ、あー、遊びに行こうって誘われて金がないし奢られるのも困るって断ったら、なんか公園に行くことになって水道水飲んで帰った」

「え、ええ……ん、んんっ? それはデート……いや、デートとは言いにくい……。ほ、他には?」

「いや、他も何も……。水道水飲んで帰ったという他に言いようがないんだが……」

「い、意味が分からないです」


 いや、それは俺もサッパリなんだよ。一応は異性に遊びに誘われたという形なんで思い出したが、デートとは言えない謎のイベントだった。


 初は胸の前で腕を組んで「うーん」と考える。


「遊びに誘われたというのは、多分好意を持たれていて、奢りを断ったってことは女の子の方がお金を出そうとまでしていて……最終的に公園……。めちゃくちゃ好かれてませんか、それ」

「いや、そんなことないと思うぞ」

「……楽しい話をしたかったのに、ヤキモチを妬く感じになりましたね」

「公園に行って水飲んだだけなのに……」

「というか、それは浮気なのでは?」

「昔、公園に行って水飲んだだけなのに!?」


 理不尽な……あまりに理不尽だ。


「もう兄さんは女の子と公園に行って水飲むのは禁止ですからね」

「めちゃくちゃピンポイントな事柄を禁止された……」


 公園に行って水飲んだだけなのに……。

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