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第39話 強盗と蜂の巣




「なんで君が私の家に居るのさ」






自称勇者一行との接触から一夜明け、ホームの扉を開いた私を待ち受けるのは、先日路銀として金貨一枚を手渡したエルフの少女





「もう余裕が出来たって訳? 流石エルフ。じゃあ恩を返して…」





「それが、行く当てがなくて…しばらく側に置いてもらいたいの。仕事は手伝うわ。数日だけでも、お願い出来ない?」





面倒だ。殺しておけばよかったな。気まぐれにエルフを助けた自分の優柔不断さを恨みつつ、渋々承諾し、エルフをホームに招き入れる





怪獣は地下室に待機させているし、腐りそうな余った死骸なんかも怪獣に食わせて処理している。エルフの少女には地下室の存在を伝えなければ良いだけだ。なんの問題もない






むしろここで恩を売れば、リターンもかなりの物を期待できる。エルフだけに伝わる秘伝的な何かを教えてもらえるかも。そう考えると気が楽になってきた






「部屋は二階の空き部屋を適当に使って。食べ物は…」




しまったな料理をするにも食材を買い忘れた。金も白衣の購入費用で吹き飛んでしまったし





「…取り敢えずこれでも食べてて。私はすこし依頼を受けてくる」






棚から適当な食器を取り出し、先程購入したホットサンドをエルフの少女に渡す。飲み水は欲しかったら勝手に水魔法で生成するだろう




しかしいくら稼いでも金が足りない。勇者にからまれた件の迷惑料として王国に金貨百枚要求したいくらいだ。槍も盗んできて売っ払えばよかったな







▲▽▲▽▲





手っ取り早く金を稼ぐなら闇ギルド一択なのだが、少々問題が発生してしまっている





「おいロリエルフ。留守番しててって言ったよね? その長い耳は装飾品だったりするのかな? 」






「誰がロリエルフよ。わたしはもう成人してるし」





言いつけを守れない時点で自制心の無いガキじゃないか。しかしやけに幼く見える。ファンタジー等でよくあるエルフは長寿であるという特徴はこの世界でも適応されているようだ





「クレア、わたしの名前。変な呼び名じゃなくて名前で呼んで」





面倒くせぇ。殺そうかな。一度エルフはバラしてみたかったし丁度良い。身体の作りは人間と一緒なのか。一体どのような差異がここまでの種族的な違いを産み出しているのか





魔力量を増大させる器官なんてものも備わっているかもしれないし、もし仮にそれを移植する事が可能ならいろいろ便利に使えそうだし






「…どうかしたの? 」





その為には数が必要か。最低でも十人は欲しいな。丁度ゴブリンの集落にはクレアの同胞が捕らわれているんだっけ





出来れば回収したいけど、今の実力のまま再戦を挑んでも返り討ちにされてしまう。今度は逃げ帰る事すらままならないだろう





ゴブリン達も馬鹿ではない。奴らは野性的だが、決して知能が全く無い訳ではないのだ





現状、私の戦闘能力では先日苦戦したゴブリンリーダー程度であれば軽々屠れるのだが、それ以上となると苦戦を強いられてしまう





力が必要だ。失った以上の力が。骸骨騎士にも、魔王にも劣らない、私だけの力が





「クレア。装備を整えたら街の外に行くよ」





経験が足りない。知識不足だ。才能も欠落している。こちとら現代人だぞ。平和な国の生まれだから、喧嘩もろくにしたことない。戦闘経験なんてもっての他





だからこそそれを補う必要がある。貧弱な肉体を鍛え上げ、戦闘に関する技術を学ばなければならない





科学者は戦闘に不向き? 武力面は怪人や怪獣に任せておけば良い? 馬鹿を言ってはいけない。そりゃ困ることは無いだろう。だけどそれはらしくない(・・・・・)





自ら制限を設けるなんて馬鹿のする事だ。一先ずは肉体の強化、レベルアップしSPを獲得する為に、魔物を狩らなければ





襲う魔物にはアテがある。格下相手でもなく、突出した何かがある訳でもない。今の私とほぼ同格の魔物。毒が少々厄介だが、こちらには回復魔法の使い手が居る





「取り敢えずは媒体、杖だけあれば効率よく魔法を使えるわ」





「悪いけど今手持ちがないんだ。昨日渡したお金で装備を整えてくれる? 準備が出来たら昨日通った門の辺で集合しよう」





なんでも媒体さえあれば昨日以上の威力の魔法を余裕をもって連発出来るらしい。どうやら里の中でも上澄みの魔法の使い手だったようだ





それがどうしてゴブリンなんかに捕まっていたのか。あの集落にはそんな強力な魔法使いを殺さず無力化できる実力者が存在するのだろう。本当なんとか逃げきれて良かった





さてと、私も準備をしないと。流石に武器がないと奴らの相手はキツイ。でもどうしようかな。金もないし





「おいテメェ、痛い目をみたくなかゃ出すもん出せや」





やっぱ治安が悪いってのは良いものだ。ならず者(財布)が向こうから歩いてきてくれるのだから。武器は…魔鉄製のロングソードか。いいね。武器まで持ってきてくれて、なんて優しいんだろう





「ひ、ご、勘弁を。手持ちはこれだけしか」





怯えの表情を作り、目には卑屈さを。声帯を震わせ、緊張を演出。俯きながら両手に銀貨四枚を並べ、差し出す






「へっ、賢い選択だぜぇ…ッ!? 」






捕まえた。私の手のひらから銀貨を回収する為にはどうしても至近距離まで近付く必要がある。その際に隙を作る為に、相手を油断させる必要があった。取るに足らない相手だと、自らを誤認させる必要があった





掴んでしまえばこっちのものだ。【終末を翳す手】により毒、麻痺、沈黙の異常状態が即座に付与され、ならず者は身体の自由を失った





しかしまだ安心は出来ない。強引に襲いかかってくるかもしれないし《バインド》で拘束をしておく






「【竜…そうだ。ついでに制御の練習でしておこうか【偽造技術】《剣術》」





地面に落ちているならず者の剣を拾い上げ、スキルを発動。以前斧術を再現した際には全く制御が効かず、狙った位置攻撃が当たらないなんて事が多々あったが、あれはおそらく不具合ではなく仕様だ






スキルを獲得する為にはDEXを最速で一万まで上げる必要があるというのに、あまりにもDEXが高過ぎると扱いにくくなるスキルなんて欠陥品だろ






いや、数値に対して私自身のプレイヤースキルがついていけていないのか。本来であればスキルに肉体の操作を勝手に補強されるなんて動作は想定されて居なかったのかも





「ほんとここ(スラム街)は良いところだよ。きみみたいな馬鹿がノコノコとそこらから来てくれるんだから。奴隷相手に練習しようかと思ってたけど、おかげで金が浮いた」





剣を緩やかに構え、ならず者の足へと振り下ろす。足の付け根を狙った一撃は僅かに狙いを外し、ならず者の下腹部から下を切断。おいおい、これじゃあすぐに死んでしまう





沈黙を付与しておいたお陰で声も出せないようだし、残りの表面積的にもう一回くらいはチャレンジ出来そうだ






狙うは顔。目を抉り、脳まで一突きだ。偽造擬術により再現されたスキルはアーツまでを再現することは出来ない。その為、例えば弓術スキルを再現したとして、補正がかかるとしても相手に矢を当てれなければ意味がないし、《ホーミングショット》や《ビックアロー》なんて簡単なアーツも全く使用できない






だからこそ技術を磨く必要がある。想定外の挙動をしていまうスキルなんていくら強力でも格上相手には心もとない





それに今気が付いた事なのだが、どうやら偽造擬術により補正された攻撃には武器の耐久性能等を考慮せずに、相手に致命的なダメージを与える事だけが優先されているらしい





この前ゴブリンリーダーに砕かれた吸血斧もそのせいで壊れかけの状態だったのかもしれない。現にたった今奪ったばかりの魔鉄製の剣には既にヒビが入ってしまっているし






ならず者の装備を漁ってみると、腰に鉈を一振吊るしていた為、回収、同様に腰袋の中の回復薬なんかと金銭を奪っておく。銀貨五枚か。まぁ良いだろう





「さて、ストレージにも余裕があるし、死体は適当に処理しておけば良い。周囲の目もない。きみはどうやら私の経験値になれるみたいだぜ? 喜べよ」





偽造擬術を発動する際には武器は使い潰す想定で運用しないといけないな。この前みたいに使い勝手の良いスキルが付与された貴重な武器をそう何本も潰していたら金がいくらあっても足りないし





▲▽▲▽▲▽










王都を出て、街道沿いの道をしばらく歩き、ある地点から獣道を通れば目的地まではすぐそこだ





「ねぇ、これ何処に向かって…」





「静かに。蜂は音に敏感なんだ。ここから先はなるべく会話を控えて。どうしても必要な場合は極力声を潜めるように」





先日支配下に置いたゴブリン達に足止めを任せて、なんとか撤退してきた蜂の巣。一つの村を飲み込み、大樹に絡み付く形で形成されているそれはあまりにも巨大で、ギルドで聞いた話によれば騎士蜂なんて上位種も存在しているらしい






今回は戦闘訓練が目的ではない。条件が良ければ逃げずに戦闘を行うつもりだが、あくまでも本命は金策である





標的とする魔物を殺すにはこの程度の装備では心許ない。偽造擬術用に使い潰す前提の武器も何本か用意しておきたいし、各種道具類を揃え、万全の状態で挑まなければ前回の二の舞だ





先日殺害した蜂の魔物の遺体を回収、ギルドに売り付ける事が出来れば、それなりの額になるだろう





毒の抗体を作るにも毒そのものが必要だし、構造を把握、弱点を探すにも一度バラした方が簡単だし、少しの手間で想定外の事態を防げる





王都の近くにこんな物があるとなればギルドとしても早急に対処しなければならない事案だろうし、もしかしたら相場の倍以上の価格で買い取ってくれたりするかも






それもこれもあの蜂達が同族の死体を回収していたら頓挫してしまうのだが、その時は少しちょっかいをかけて数匹分の死骸を回収してすぐに逃げれば良いだけだ








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