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第35話 お節介な異邦人






金だ。金が必要だ






先程素体を回収する前に闇ギルドに立ち寄り、改造に使えない不用品の処分を行ったのだが、たいした金にはならなかった





処理しなければならないゴミを引き取って貰い、その上金銭まで恵んで貰えたと考えれば得した気分だかそんな頭お花畑な事は言ってられない





事態は深刻なのである。ホームを入手できた為、宿代はかからないのだが、食料が高すぎる





なんなんだこの国は。大陸共通通貨(ゴールド)がこの国ではまともに機能していない。物価が全体的に高く設定されており、殆どの取り引きには王国流通貨幣が使用されているし、そもそも私自身の所持金が少なすぎる





数日分の食事代だけで財布の中身はすっからかんだ。なんとかして稼がねば。またなにか毒でも調合して闇ギルドに持ち込むか? 





いや、そうも頻繁にあのレベルのものを持ち込んでいると確実に怪しまれてしまう。ノル婆には既に目を付けられていそうだが、弱体化している以上、あまり悪目立ちし過ぎるのは良くない





仕方ない、全うな手段で金を稼ぐしかないか。となれば向かう場所は決まる。ランクはFだが、スリよりはマシに稼げるだろう。一応ランダムアイテムボックスから出てきた武器もあるし





いざ行かん、冒険者ギルドへ









▲▽▲▽▲▽▲








王都には、混雑緩和の為に複数の冒険者ギルドが存在している。私の家から最寄りの冒険者ギルドまでら貧民街を抜けて少しの所だ





「手っ取り早く金になる依頼があると良いけど、そうも上手くはいかないよなぁ」





若干諦めつつも私は冒険者ギルドの戸をくぐった






以前、シュルーベルツの街で見た以上の活気。広さも倍以上だ。この分なら依頼も期待出来るかもしれない




「どれどれ、薬草採集…は渋いしなぁ…新たに発見された迷宮の探索…あーCランク以上限定か。お、はぐれ魔竜の討伐、金貨五百枚か。いいね、ランク制限もないし。うん。これにしよう」




「待て待て待て! お前死ぬ気か!? 」





掲示板から依頼書を手に取ろうとした瞬間、お節介な連中が何処からか湧いてきた。私の手を掴む力が強すぎて振りほどこうにも力が足りない





「これ、なにかな? きみはなんで私の手を掴んでるの? もしかして知り合いだったりする? 全く記憶に覚えがないんだけど」




「いいや初対面さ。けどアンタみたいな未来ある若者がみすみす死ににいくのを見過ごしては居られ無くてね」




「若者って…私と君ら、そんな歳変わらないでしょ。…もしかして人間じゃなかったり? 」





「それにはぐれ魔竜の討伐は最前線の攻略組ですら失敗したクエストだぜ? 駆け出しプレイヤーのお前が到底叶うとは思えないな」




「ん? プレイヤー? ってなんの事かな?




キザったらしい奴だ。何処かのライトノベルから借りてきたような、聴くだけで胸焼けしそうな言葉を吐きながら的外れな質問を投げ掛けるその姿は正直滑稽で仕方ない





見たところロクな装備もしていないようなこんな男に心配されるとは、それほどまでに弱く見えているという事か





それに装備のせいでカーソルが消えているにも関わらず異邦人であると判別されてしまっているらしい。早いとこ装備を整えないと、色々面倒だ






「…どういう事だ…? プレイヤーじゃないのか? なら特殊クエストのフラグ? …どちらにせよ…」



「タクト様~やっと追い付いた~」



「全く…人騒がせな男だ」



「いきなり走っていくんだから驚いたぜ。…そいつは? 」





私の手を掴んだ男の仲間と思われる人間がゾロゾロと集まってきた。魔法使いの女に重厚な鎧を身につけた大盾使い。弓と短剣を装備した男…バランスの良いパーティーだ





「…ああ、悪いな。こいつがはぐれ魔竜の依頼を受けようとしているのを見ちまってな」




「急ぎで金が必要でね。手っ取り早く稼げるかと思ったんだよ。それに死に行く訳じゃない。そんなに心配しなくても…」





ぞわりと何かを探られる感覚がした。なんだこれは。誰かが私の事を見ている。誰だ。辺りを見渡すとどうもこの男のパーティーメンバー、弓と短剣使いの男が怪しい





「覗き見かい? 趣味が悪いね」





「驚いた…まさか観察が見破られるとはな。たが見たぜ。お前のステータスじゃ到底はぐれ魔竜に勝てるとは思えないな。スキルじゃどうしようもない力量差がある。ハッタリは止すんだな」





どうやら覗き見られたのはステータスの数値のみらしい。スキルや称号は見られていないようだが、今後そういったスキルを持った異邦人も増えてくる事だろう。なにか対策を考えておかなくては





しかしどうするか。はぐれ魔竜の依頼は受けれそうにないし。金を稼がなくては数日後には飢え死にだ





「あの~良ければあたし達と一緒に依頼を受けませんか? 丁度王都の近くに住み着いたゴブリンの集落の調査依頼を受ける所で、タクトもあなたのこと気になってるみたいですし」





渡りに船。しかし罠である疑いも捨てきれない。これはどっちだ? 





「そうだな。それが良い。お前もそう思うよな!」




「…あまり無理強いするな。おい、お前。嫌なら断って良いんだぞ」





異邦人の男は発言しない。パーティーメンバーの三人はおそらく現地人。罠の可能性は低いか。そもそも罠だった所で失うものは殆ど無い





「いいや、正直困ってたんだ。良ければ一緒に連れてってくれないかい? 」





儲かりそうになかったら最悪、気を見計らって異邦人を始末してからパーティーメンバーの現地人を殺して死体を漁ればいっか。レベル上げにもなるし一石二鳥だ





「決まりだな、オレはタクト。職業は格闘家だ。よろしく頼むぜ! 」




「私はピロル。魔法使いです。主に回復を担当しています。よろしくお願いしますね」




「ザブ、重騎士。タンクだ」




「んで、俺がハーバー。一応狩人だ。パーティーでは状況に応じて臨機応変に動いてる、ま、心配すんな! なんかあったら俺が助けてやるからよ!」





顔と名前を覚えていられる自身がないが適当に頷く。曖昧な笑みを浮かべておけば相手は勝手に場が和んでいるなんて都合の良い勘違いをしてくれる






「レイム。敵の動きを封じる鎖魔法を軸に斧術で近接戦闘も少し出来る。よろしく頼むよ」




扱いやすい連中だ。タクトとか言う異邦人がこのパーティーのリーダーらしいが、実際にパーティーのバランスを保っているのはハーバーか





なにか一つでも歯車の噛み合いがズレればすぐに崩れてしまうような不安定なパーティーだが、今回限りのパーティーだし問題点を指摘しても雰囲気が悪くなるだけだ





「それじゃあ行こう! 」


「おー! 」


「…」


「おう! 」





其々がタクトの声に答え、歩みを進める。簡単なクエスト。ただの調査だ。本格的に戦り合う訳じゃない。とっとと済ませて報酬で服でも買いにいこう










▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽












目的地までは馬車で向かうらしい。なんでもタクトは凄腕の空間収納魔法の使い手らしく、馬車も軽々持ち運べるのだとか





空間収納魔法、おそらくストレージの事だろう。上手く誤魔化したものだ。パーティーメンバーにも自身の正体を隠しているのか。排他される事を恐れているのだろうか? であれば同じ異邦人同士でパーティーを組めば良いのに





馬は収納出来ない為、ザブが連れているらしく、乗馬スキルを習得しているザブが御者をしてくれた。馬車の乗り心地は可も無く不可も無くといった感じだ





「それで、レイムはどうしてあんな無茶な依頼を? はぐれ魔竜の討伐なんて王宮の魔導師ですら抑え込むので精一杯だったってのに」





「どうしても金が必要でね。それに依頼書を見た限りそれ程難しい相手じゃない気がしてね」





おそらく、はぐれ魔竜の戦闘能力は骸骨騎士並みか、それ以下だ。肥大化した肉体が動きを鈍化されてしまい、空を飛ぶのもままならないらしいじゃないか





鱗がより強固に変質しているらしいが、流石に内側にまで鱗がある訳じゃないだろう。であればそこを攻めれば良い





ハイドとルージェストの死体から使えそうな物を回収し、それを調合なり、怪人、怪獣に組み込むなりしてどうにかはぐれ魔竜の体内に仕込んでしまえばこちらの勝ちだ






「そんな貧弱なステータスでなーにいってんだか。ま、俺たちとクエストに来たからにはレイムにも生きて帰って貰うぜ。このパーティーから死者は一人も出さないって決めてるんだ」





歪すぎる傲慢。神の視点、立場が違うからこそ出る言葉だ。パーティーメンバーが死んでも自分は死なない。何故ならば異邦人だから。だから自分がパーティーメンバーを死なないように守ってやる





そんな自分に酔っているのだろう。パーティーメンバーの事を自分が気持ち良くなるための道具としか思っていないのかもしれない





「タクト、それは──」





流石に指摘しておかなければ、いつか本人がこのズレに気が付いたときに後悔する。そう思い声をかけようとしたが、タイミングが悪かった





「着いたぞ。お喋りはそこまでだ」





今回限りの仲間だし、そこまで深い仲になる訳でもない。なら面倒事に首を突っ込むのは止めておいた方が良いか





「みんな…行くぞ! 」





準備は整った。何処までやれるか、試してみよう



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