第34話 先行解放と怪獣作成
変更 スキルの表示について
変更前 【●●】 【●●+1】
変更後 【●●Lv1】 【●●Lv2】
混乱を事前に防ぐ為の変更です。ややこしくてすみません
──ステータスシステム、項目DEXが規定値に達しました。状態を保護、試練への挑戦権を付与、異邦人の転送を開始します
失敗。古代種の魔王との遭遇、その他実績を参照。試練を破棄。特典を付与します
現実性が上限をオーバーしています。終末龍の因子を保有しています。既存種族に対する想定外の改造、人体実験、大量虐殺を確認。カルマ値を参照。属性、混沌、邪悪。データが不足しています。データが不足してします。データが不足しています
特典を変更。獲得経験値増加、棄却。現実性拡張、棄却。最終戦争、棄却。幻実世界、棄却。虐殺機構、棄却。生命創造、棄却。混沌の二面性、棄却。邪悪の集合体、棄却
再構築、生成。称号、黒幕を付与します
残り■■%、エラー。対象の死亡を確認。保護を継続。特典の付与を保留します
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どうやら気絶してしまっていたらしい。カーテンの隙間から照射される陽光から推察するに昼過ぎくらいか
あと数日もすれば卒業式だと言うのにこんな調子で大丈夫だろうか。まぁ、どうでもいいか
「っは! …ああクソ、また死んだ」
ここ最近、頻繁に死にすぎている。この前は骸骨騎士。今回は魔王。どちらも良く考えて行動すれば生き残れた筈だ
この世界では死が軽い。死の価値が薄いのも、私が死にすぎている原因…いや、それは責任転嫁が過ぎるか
どうやらゲームの内部で再現されたものをこちら側まで持ってきてしまっているらしい。身体の内側を焼き尽くし、骨の髄までを溶かしてしまうような痛みは一向に収まる気配がない
十中八九現実性による影響だ。確か痛覚に関するパラメータも現実性に含まれていた筈
もっとも現実性を下げるつもりはさらさら無いのだが
なんでもない幻の痛みだ。本当に肉体が焼かれた訳ではない。そうはわかっていても、痛いものは痛い
あいにく鎮痛剤なんて家に無いものだから、せめて身体を冷やすために風呂場へ向かい、冷水のシャワーを浴びる
肌を刺すような冷たさが全身を浴びせるが、熱は未だに収まらない。熱い。肉が焦げてしまうくらいに、痛みが無くなる気配がまるでしない
仕方ない。明日は休んで一日中仮想世界で過ごすことにしよう。私は床を這い機器の中に潜り込み、仮想世界に意識を移す
仮想世界には現実世界での肉体的疲労や痛みは引き継がれない。が、幻の痛みは別らしい
こちらに来ても収まる気配のしない痛みに嫌気がさしつつも、それを意図的に脳内から排し、掲示板に目を滑らせる
どうやら私の眠っている間に緊急メンテナンスとそれに伴うアップデートが実施されたようだ
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神格のロストを確認。それに伴いこれまで付与されていた成長促進、新規スキル獲得難度緩和が解除されます
各地で封印を管理する従属神のロストを複数確認。それに伴い各地の封印に綻びが生じます
古の時代、世界の殆どを手中に収めた古代の魔王が復活、それに伴いアルフガルドに勇者が招かれました
プレイヤーへの現実性の部分適用(NPCの詳細描写、グラフィックの向上)が実施されます
ストレージに収納できるアイテムの総量の上限が変更、以降は総合レベルと同じ数が上限となり、PLレベルと同じ数だけアイテム保護できます
デスペナルティーの仕様が変更、従来の二十四時間のログイン制限は撤廃
新たなデスペナルティとして保護されていないアイテムから五から十個程度のランダムドロップ、死亡から二十四時間に再ログインした際には一時的なステータス低下
最大で十レベルのレベルダウン(SPの再獲得は不可)
その他細かな不具合の修正を実施
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古代の魔王とはおそらく私を殺した魔王の事だろう。どうりで、そう考えれば納得の強さだ。それにログイン制限も無くなったらしい
デスペナルティはキツくなったが良い調整だ。おかけで異邦人からの略奪が可能になったし、ロールプレイの幅が広がる
素早く機器を操作し、私はあの世界へと意識を移した
痛みはまだあるが十分我慢できる範囲内だ。それにログイン制限も無くなった事だし。この世界に来ない理由がない
リスポーン地点は王都、スラム街近郊の一軒家。前日闇ギルドからの依頼で得た念願のホーム。出来ればこんな形での帰宅をしたく無かったが仕方ない
お気に入りだった白衣や主要武器であったメスは魔王の攻撃で消滅してしまったらしい。万が一公衆の面前で粗末を晒させない為か、今は初期装備を着せられている
「当面の目標は怪人、又はそれに準ずる手駒の用意。次点で骸骨騎士と魔王へのリベンジかな。とりあえず水でも…」
喉の渇きを覚え、水を取り出そうとメニューウィンドウからストレージを開いた瞬間、辺りに数多の雑多な品々が撒き散らされる
「あーそういえばストレージの仕様が変更されてたっけ」
いや待て。だとしてもこの量のアイテムが吐き出されるのはおかしい。ああそうか。なるほど。私が弱くなっているのか
ステータスを確認してみると案の定レベルは初期の数値まで落とされており、ステータスにいたっては初期の数値以下まで落ちている項目すらある
なぜかDEXの数値だけは無事のようだが、一番の問題はほぼ全てのスキルが弱体化、もしくは消滅してしまっている事だ
体術や薬品作成、隠密、身体強化魔法。威圧、支配、外法医術、短剣術。その他にも呪術と低位魔道術式も奪われてしまっている。鑑定や身体改造のスキルはスキルレベルを落とされているし、これは大きな戦力ダウンだ
魔王が私に対して使用した喪失の宝珠。アレが原因なのだろう。どういう理屈かスキルまで奪ってしまうとはずいぶんと凶悪だ
とりあえずは最低限戦闘可能なステータスを取り戻す所からか。しかし困った
レベルを上げるにも薬品作成スキルを失った私では科学者のレベルを短期間で効率良く上げる事は出来ないし、魔物を狩ろうにもこのステータスでは返り討ちに遭うのがオチだ
現状、戦力の向上を期待できるのは、前回のイベントで入手したSPアップポーションとランダムスキルスクロール、それと補正値を含めて一万の大台に到達したDEX
「現状を打開しうる鍵は…これだね」
新たに出現した称号、黒幕。なんだこれカッコいい…じゃなくて、この称号はおそらく全プレイヤー中最速でDEX一万に到達した事を記念する称号だと推測出来る。重要なのはここからだ
この称号には特殊効果が付与されている。それは異邦人には解放されていない機能の先行解放
その恩恵を受ける為には未実装の機能についてある程度理解している必要があるらしいが、救済措置なのだろうか。ステータスウィンドウには職業欄の科学者の下に余白が出現しており二次職業の選択を促している
能力が著しく低下してしまったが、これのお陰で以前の力を取り戻す所かそれ以上のパワーアップも期待できる
一時職業の転職はその職業での経験を元に反映されるらしいが、二次職業はどうだろう?
・戦士
・狂戦士
主に近接戦闘を得意とする。HPが一定の割合を下回ると、自信のステータスが強化されるスキル【狂化】【再生速度向上】が習得可能
・魔法使い
・黒魔法使い
主に中近距離での戦闘を得意とする。【黒魔法】を習得可能
・商人
・詐欺師
相手を騙し、自身の利益を最大化する事を得意とする。モノの情報を偽る【偽装】、相手の認識を歪める【詐術】が習得可能
・武具職人
・改造職人
改造に特化した職人。対象は生物のみに限定される。【身体改造】スキルを習得可能(習得済みの場合はスキルレベルが一上昇)
・戦争屋
街レベルの勢力を相手取る事を得意とする職業。二人以上を相手にする際に自身、もしくは自身と他者を強化する【大判狂わせ】、大陸共通通貨、ゴールドを使用する事で武器や防具等を購入できる【武装購買】。フィールドを区切り、同意の無い場合でも戦闘を強制できる【戦争】スキルを習得可能
・敗北者
敗者が為の職業。この職業についた時点でステータスを変動させる全てのアイテム、スキルは適応されなくなり、レベルアップは可能だがSPは獲得できなくなる。これまでの自身の死亡回数に応じてLPが付与され、LPに応じて職業専用スキルを習得可能
・黒幕
称号、黒幕を獲得した者のみが選択可能な職業。スキルレベルに応じて指定したスキルを一時的に使用できるスキル【偽造擬術】。様々なパラメータ表示に干渉可能で鑑定、観察、推察、看破等の効果を受け付けない【改竄】に加え、習得済みのスキルの中から一つのスキルを変異させる事が可能
おそらく同じようなシステムが適応されているのだと思う。ポップアップにはキャラクタークリエイト時に科学者の他に選択できた四種の職業に加え、その派生と思われる四種。その他に三つの心引かれる職業が表示された
「やっぱ黒幕でしょ」
私は黒幕を素早く選択した。一瞬戦争屋とどちらにしようか迷ったが、今回は手広くこの世界を遊び尽くしたい
戦争屋を選択すると確かに戦闘能力は格段に向上するだろうが、今後を考えると私のプレイスタイルに合っているのは黒幕だ。変異させるスキルはもう決めた
「身体改造を変異…お、やっぱ思った通りだ」
黒幕仕様に変異させた身体改造改め【改造】は身体改造にあったらしい上限が完全に撤廃され、改造の自由度が飛躍的に向上したようだ
代償として今まで行えていた自動での改造が行えなくなっているたようだが問題ない
SPポーションを使用し、獲得できたSPは三百。これだけあればキャラクタークリエイト終えた直後と変わらないくらいの能力は取り戻せる
「さて、お次はお楽しみのスキルスクロール…なにがでるかな」
選ばれたスキルは【鎖魔法】《鎖生成》でMPを消費し鎖を生成、《バインド》で相手を拘束出来るらしい。事前に生成していた鎖を使用する場合は魔力消費ゼロで拘束可能らしい、扱い方次第で幅広く応用が利きそう。これは当たりだね
さてと、一通りの自己強化を済ませた所だし、部屋に散らばる不用品の処分も兼ねて、怪人作成。やってみようか
異臭漂うごみ屋敷と化したホームを後に貧民街へ。事前に支配しておいたガキをようやく使う時が来た。それにしてもやっぱ匂うな。今度清掃業者を入れた方が良いかも
「お、いたいた」
素早く背後に回り込み、首を締め落とし、意識を奪う。以前仕掛けておいた支配はおそらく、スキルを失ったことで解けてしまっている
であれば顔を認識される前に意識を奪うのが吉。変に騒がれたり、抵抗されると面倒だからね
早速鎖魔法が役立った。回収を済ませさっさと家に帰ったのだが身体を拘束できる丁度良い道具が無かったため、《鎖生成》により鎖を生成し、身動きがとれないようにリビングの食卓の上に《バインド》で縛り付けている
さて、どんな改造を施そうか。まだ幼い素材だから、あまり強引な改造だと身体が持たないだろうし、原型を保ちつつ、使い勝手の良い……うーん
「とりあえず手数は正義だよね。とはいえ単純に腕をくっ付けるだけじゃ芸がない」
装着している武器の数が多ければ多いほど良いという訳ではないが、それなりに便利なのは事実。うーむ。悩む
そうだ。武器とスケルトンの骨格を接合したものを背中にでもくっ付ければ良いんじゃなかろうか。手で武器を握っている訳じゃないから武器を落とす事もないし。より直感的な動作が可能になったりするかも
「よし。決まりだ」
改造の方向性は決まった。なら後は素材だ。素体はこのなんの変哲もない貧民街の住民。【鑑定】してみた所、種族も至って普通の人間、職業は無し。名前も無しと、ずいぶんと酷い人生を送ってきたらしい
笑みが、笑い声が漏れていたのかもしれない。拐ってきたガキは目を覚ましていた。寝惚けているのか、自分の置かれている状況を理解できていないらしく、なんとか鎖から逃れようと身を捩らせている
ふと、目があった。怯えているのか。そうかそうか。なら安心させてやろう。改造の成功率は少しでも上げておきたい。それにヤケになって死なれでもしたら振り出しだ。面倒なこと極まりない
「大丈夫だよ。きみは今日、私の手で生まれ変わるんだ。だから安心して? 」
「ひっ…い、いやだ! 死にたくない、おれは──」
こんな時に便利なのがコレ【終末を翳す手】だ。コレも細やかな不具合の修正に含まれてしまっていたらしく、以前ほど多彩な異常状態の付与は出来なくなっているが、子供一人黙らせるには過剰過ぎる性能をしている
選択するのは麻痺と沈黙。もう一つ選択可能だったが、ただでさえ弱っているのにさらに毒を与えて死なれたら面倒なので今回は二つだけ
さっさと改造してしまおう。仰向けに体制を変え、背中を切り裂き、心臓付近に魔石を埋め込む。今回はスケルトンの物を使用する事にした
臓器は最悪傷付けてしまっても、ポーションを浴びせればある程度なら治るので気にしない。痛みからなピクピクと痙攣しているが、事前に麻痺させておいたお陰であまり抵抗されずに、スムーズに改造を進める事が出来ている
「あ、やっべ麻酔してないや」
どちらにせよ外法医術を失った私ではちゃんとした麻酔は行えないだろうし、問題はない。現に改造はスムースに進んでるし。ショック死してしまわないか心配だが、仕方ない
心臓に魔石が馴染むまで、少し時間がかかりそうだ。本来魔物のみに存在する物を人間に取り付けている為、なにか副作用が発生してしまっているのだろうか? まあその辺の検証は追々
今のうちにスケルトンの骨を削り、形を揃え、スケルトンから回収した武器と接合、一体化させておく
傷をつけた臓器にポーションを浴びせ、骨を削りスケルトンの骨格を接合する為に丁度良い形に整える。接合部分には魔石を組み込み、より強固に接着。後は切り裂いた背中を縫い閉じて、ポーションをかける
「さて、どうなるかな。うまくいくと良いけど」
拐ってきた時とは大きく変化し、大柄とは言えないものの体格それなりに。自分の意思で操作できているのかわからないが、背から生える四本の骨に繋がれた武器は戦闘面で大いに役立ってくれる筈だ
しかし、四足歩行で私のホームを踏み荒らしているこいつからはどうしてか知性を欠片も感じない。先程まではきゃんきゃんと吠えていたのに、今ではたまに獣のような唸り声を上げるだけだ
まさかとは思うが人格が改造に耐えられなかったのか? おいおい、期待外れにも程がある。貧民街育ちなら辛いことなんて散々経験してきた筈だろう? なのにこの程度なんて。期待を裏切られた気分だ
こんなものは怪人ではない。獣。ただの怪しげな。奇っ怪な。怪獣とでも名付けようか。こんな欠陥品
使い道が無いわけではないが、次回に向けて改善点を探らなければ。魔石を肉体に組み込むアイデアは間違いでは無い筈だ。現に今回も魔石を組み込む事で大幅なパワーアップが図れた
素材の相性か? いや。問題ではない筈。やはり器、肉体が脆すぎたのか
今度はもっと強力な素体を用意して改造に挑む事にしよう。今回の失敗を繰り返さない為に




