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フリー・シンギュラー・オンライン 悪役志望のロールプレイング  作者: 神代悠夜
第一章 存外、世界は非日常で満ちている
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第30話 非合法ギルド クローラーへようこそ





暗い暗い奥の底。スラム街の奥地にその建物は存在している





その建物は以前は科学者ギルドとして運用されていたらしいが、辺り一帯がスラム街と化してからは国もギルドの運営を放棄し、その機能を失ったらしい






しかし科学者ギルドの跡地には様々な設備がそのままの状態で放棄されていた為、現在では他の事業者に流用されてしまっている







曰く、奴等は自由を謳い、依頼があれば金銭次第で標的を殺害するような野蛮な輩である






曰く、多額の金銭を積めば、日時や時間、殺害方法等もほぼ自由に設定することが出来るらしく、腕は確からしい






彼らは自身の事をクローラーと名乗り非合法に関わる仕事ならば何でも受け入れると囁くらしい






人攫い、恐喝脅殺害予告。何でもござれの非合法組織。それが闇ギルド、クローラーだ






そんな非合法組織の実力者と思われる老婆に担がれ闇ギルドのロビーまで連れてこられた惨めったらしい印象を受ける薄汚れた白衣の男は誰か





「ほら、着いたよ。ったく、ここからは自分で歩きな。いつまでも甘えるんじゃないよ」






残念な事にそれが私なのである





「聞いても良いかな」



「質問なら後で答えてやるよ。ほら、さっさと行った行った」






邪魔者を追っ払うように手をひらひらとさせる老婆はどうやら私の質問に今答えてくれる気はないらしい






かといって私はそんな事でキレ散らかす程沸点の低い野蛮人では無いため、黙って老婆のいう通りに杖を頼りに自分の足で受付らしき場所に近付くと受付の一人、額に傷のある大男に話しかけられた






「おい、こっちだ。ノル婆から話は聞いている、仕事を探してるらしいな」





「ノル婆? あぁ、私をここまで連れてきてくれた人の事か。盛大な歓迎に涙が出そうだよ」






「そのまま殺して畜生の餌にでもしてやれば良かったか? 」







肩を動かし首を切るジェスチャーをしながら見た目とは裏腹に軽い口調でお似合いの酷い事を言うものだ






「そいつは勘弁願いたいね。あぁ、聞いているとは思うんだけど私は仕事を探してるんだ。出来れば手っ取り早く大金を稼げるような。そういう依頼かなにかは無いかな」






高額依頼の斡旋。しかもぽっと出の怪しい科学者に任せられるような依頼。そんなものがある訳がない。しかしまぁ、無いのなら作ってもらう他無いのだが、今回その必要は無いらしい





「ノル婆からの紹介だからな、依頼の融通くらいは利かせてやるさ。ただし、しくじった時は覚悟してもらうけどな」






覚悟。国中に手配状を回し懲罰部隊でも差し向けるつもりなのだろうか? ハイリスクにはハイリターンという言葉もあるくらいだ。高額依頼にはそれなりに危険が伴うという事を遠回しに伝えようとしているのだろう。甘い人間だ






「わかってるよ。出来れば激しい運動を必要としない依頼が良いんだけど。ほら、こんな足じゃ何かと不便でね」






欠損している左足をぶらつかせながら、依頼の内容が書かれていると思われる数毎の紙を吟味する大男に呟く





「おいおい、部位欠損を治すポーションとなると相当の額だぞ。体力回復薬とは訳が違う。一度や二度の依頼じゃあれほどの物を買うにはまだ足らねぇよ」





そうかな? 案外、異邦人が作りすぎて市場は飽和状態になってるかも。もしかしたら投げ売りでもしてるかもしれない





今のあまり激しい動きの出来ない身体は不便で仕方ないので、速く左足を治しておきたい所だけど





「わかってるよ。それで、私向きの依頼は? 」





受付のカウンターテーブルに座り足をぶらつかせ片足の無い不思議な感覚を楽しみならがつき出された三枚の依頼書を見る





一つ目は人探しの依頼。貸金業者からの依頼だ。多額の負債を抱えたまま首を吊った男の娘を探して欲しいとのこと






男の妻から請求すれば良いじゃないかと思ったが、男の妻も男と一緒に首を吊ってしまっていて、唯一王街に出稼ぎに出ている娘からしか取り立てる相手が居ないらしい





しかしその娘がこの広い王都の何処に居るのか全く見当もつかないし、少ない手がかりを頼りに探すにしてはこの王都は広すぎる。よってこの依頼は無しだ






残りの二つの依頼はまだマシだといいんだけど。そんな事を考えながら後の二枚の依頼書に目を通す






二つ目の依頼は闇ギルドからの物で重要ではない雑多な依頼書の整理を頼みたいらしい。危険は無いがこの依頼、報酬の方がかなり低く設定されている





高額依頼ではない依頼を混ぜてきたのは舐められているからなのか、信用が無いからだろう






三つ目の依頼も闇ギルドからの物。これは闇ギルドの中でも有数の実力者からの依頼らしく、暗殺に用いる毒薬の調合を頼みたいらしい





しかし単純に優れた毒を欲している訳では無いらしい。対象を速やかに殺す毒や、外傷の目立たない毒等の優れた毒をいくら渡してもこれではないと、こんな物は頼んでいないと機嫌を悪くするらしい






恐らく依頼人が求める毒はただの優れた毒では無いのだろう。ではどのような毒を依頼人は求めているのか? 簡単だ。嬲り、苦しめる毒。拷問にでも使うようなそういう毒を望んでいるのだ







しかし闇ギルドの職員はなぜこんな簡単な事を理解できないのか。少し考えれば誰でも簡単にわかる事なのに






闇ギルドの職員はもしかするとそれほど有能では無いのかもしれないと自分の中の評価を再設定する







「なるほど。じゃあ三つ目の依頼を受けるよ」






「ああ、ならそこの扉から廊下に出て突き当たりの部屋が製薬室になっている。今回は製薬室に置いてある物は何でも使って良いが、部屋を出る前に使用した物品と作成した薬物を記録して提出してもらう。製薬関係の書物は突き当たって右の部屋だ。いいな? 」





「わかったよ。手間をかけたね」






依頼書に何かを記入し始めた大男を背に、私は扉をくぐり製薬室に向かった










▽▲▽▲▽










部屋の中は薬物特有の青臭い香りが充満していた。窓には防犯対策の為か鉄格子が取り付けられており、窓は半開きの状態になっていて少し肌寒さを感じる






蛇口を捻れば清潔ではないが、一応水が流れてくる。部屋の奥にある棚には調合に利用する物と思われる素材が納められており、部屋に並べてあるテーブルの天板はすべて黒色で統一されていた






製薬室というよりは、まるで昔の理科室みたいだ。こんな設備で本当に製薬作業なんて出来るのだろうか? 






前に一度粗悪品を作る機会があったが、完成した品を容器に移し替える作業に神経を使った事を覚えている






なにせ空気中の二酸化炭素や、酸等に触れてしまうと青酸ガスが発生してしまう






いくら入念な準備を行っても、素人が行う事だ。安心は出来ない。以前は父の会社の設備を無断で使ってしまった為、相当こっぴどく叱られた。警察に突き出される事はなかったが見限られたのはきっとあの時だったのだろう







さてと、とりあえず目的の物を探すかな






早速私は棚に納められている材料に対して【鑑定+2】を発動し、それぞれの効果を確認していく







しおれた毒草 

弱い毒素を含んでいるありふれた毒草。触れただけでは効力を発揮できない。HPの減少等の効果をもたらす




ポイズンスライムの体液

金属をも溶かす毒を持ったスライムの体液。無論、人間の身体など一瞬触れただけでどろどろに溶かしきってしまう





スケルトンの頭蓋骨(火属性)

非常に脆く、振動を与えると爆発する。威力はあまり大きくない





フグの魔物の死骸

海の生存競争に敗北した魔物が海岸に打ち上げられていたのを回収された。強い毒性を有している為、取り扱いには最新の注意が必要





オークの内臓

豚のような顔をした屈強な生物の内臓





ありふれた野花

原っぱに咲いているような何処にでもあるありふれた黄色の野花。香りを嗅ぐと仄かに甘い香りがする





トレントの枝

森に住まう樹木のような姿をした魔物の枝。生命力が強く、日の光を浴びせ、毎日欠かさず水をやるとトレントに成長する事もあるほど





鉄液

弱い機械種族の体液。鉄分を多く含んでいる、青色の液体。魔力を加えると硬質化状態と液体化状態にかたちを変える事が出来る





爆散貝の砕けた殻

天寿を全うした爆散貝はその生を終える際に残りの生命を爆発エネルギーに変換し、大爆発を起こす。とはいえ欠片に強い衝撃を与えると小規模の爆発が発生する











「よし、材料は揃ってる。あとはちゃんと作れるかどうかだけど…」







失敗してしまったところでこの建物に近寄れなくなるだけだ。すぐさまその場を離れればそれほどの危険ではない。回復職のスキルには広域浄化魔法なんてのがあるらしいし、ギルドに頼めば回復職を派遣してくれるかも






そう考えると気が楽になってきた。私は早速科学者ギルドで手に入れた調合セット一式をテーブルの上に広げ、その中から必要な物を選んでいく






今回作成する毒薬に使用するのはにありふれた野草、トレントの枝と鉄液にオークの内臓だ






まずは野草とトレントの枝を燃やし、灰に変える。調合セットの中には魔力を燃料にしたアルコールランプのような器具が入っていた為、わざわざ火を貰いに行く必要はない






植物を燃やし、得た灰を水に浸し、固形物を取り除いて水を蒸発させると、そこには僅かばかりの結晶が残っている






今回作成する毒薬の材料の一つが完成した。この結晶の正体は炭酸カリウムである






あとはオークの内蔵と鉄液に加え、先程生成した炭酸カリウムを強熱する事によって黄色の結晶が完成した。賢者の石の原材料として有名な黄血塩だ





あとは黄血塩を別の容器に移し、蓋をした後に二十五分程強熱すると、徐々に黄血塩が変化を始める。表面に浮かび上がる不純物を取り除き、冷ますと白い粉末状の青酸カリウムが得られる





あとは青酸カリウムを密閉容器に移し変え、ギルドに提出するだけだ






「さてと、こんな所かな」






現実世界での時刻はそろそろ十一時半をまわる頃





私は生成した青酸カリウムの効果を鑑定した後、ギルドの職員にに手渡し、適当な宿借りてログアウトした










▲▽▲▽▲





青酸カリウム(粗悪品) 

異常状態 混乱 目眩 

付随効果 頭痛 嘔吐 呼吸困難


とある異邦人の科学者が産み出した旧世代の毒薬。粗悪品である為、効果は薄い。この薬品を吸うと二日間程度の間魔力が回復しなくなる。





▲▽▲▽▲







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