第3話 VSスケルトン
レイム Lv1〈Lvが1上昇しました〉 SP137 総合Lv3
種族 人間 Lv1〈Lvが1上昇しました〉
職業 科学者 Lv1〈Lvが1上昇しました〉
ステータス
HP 150
MP 100
STR 50
ATK 50
VIT 100
DEF 100 (+4)
IMT 140
RES 100
DEX 340
AGI 100
LUK 100
スキル
【鑑定】【薬品作成】【体術+1】〈体術が体術+1へと進化しました〉[スラッグ]
【隠密】【身体強化魔法】
称号 異邦人〈プレイヤーが異邦人へと進化しました〉
装備品
長袖の白Tシャツ DEF+2 【不壊】
黒のジーンズ DEF+2 【不壊】
どうやらステータスの変化に関するアナウンス、レベルアップした際によくあるレベルが上がりました等のボップアップウィンドウは存在しないらしく、自身でステータスを確認した時に変化した事が記載されている
もっとも現実性を100%に上昇させた事による仕様変更かもしれないが。一度閉じてまた開くと、その変化した事を知らせる記載は消えるようだ
称号が変化したのはほぼ確実に現実性を100%にしたからだろう
【体術+1】に関しては何故進化しているのかわからないが、薄らとは推測出来る
おそらくこの世界はプレイヤーの現実での経験を反映し、ステータスの情報を決定しているのではないだろうか
支給されたこの初期装備は、現実で今着ている物だ。最初にログインした時に着ていた服装が、最初の装備になっている
それに進化した【体術+1】だって、私が悪の怪人に憧れ、体が弱いながらも、お父様に必死に頼み込み約3年間、護身術教室に体術を学びに行っていた事が理由なのかもしれない
大分こじつけのような推測だが、あながち間違ってないように思える
流石VRだなと感心しつつも、もしこの推測が正しかったら私のステータスは平均よりも低いという事になってしまう為、少し不安になってきた
だがこの世界でもLvを上げれば強くなれるはずだ。人より劣っているなら一般人の倍、努力すればこのぐらいの差どうとでもなると楽観的に考える事にした
「ここで考えてても仕方がない......街の外を少し探索してみようかな」
行動しない事には何も始まらない、私はフィールドワークがてた街の外へと出ることにした
▲▽▲▽
街の中と外を分断する巨大な門を抜けた先には数多の木々や草花が生い茂る森が広がっていた
「街の外は森なのか、空気が美味しい気がする。さてと、何か使えそうな物はあるかなー」
私は森の中をうろうろと歩き回りながら、何か使えそうな物がないか、片っ端から目に見える物を【鑑定】する
無論、MPにも限りが在るため、同じような物を何度も鑑定して、無駄なMP消費が起こらないように気を付けながらだ
さほど長くない時間をかけて見つかった、使えそうなアイテムは、薬草と清らかな水、しびれ草にしおれた毒草の四種
薬草と清らかな水は【薬品作成】で回復薬を作れるが、他のプレイヤー達が採り尽くしてしまったのかあまり量が見つからなかった
しびれ草と毒草は上手く組み合わせれば毒薬を作れそうだ。こちらは大量に見つかったので、見つかった物の半分程度を残し、採集しておく
「よし、一度街に戻って薬品作成を試してみようかな....ッ! 」
かなりの量のアイテムを採集出来たので街に帰ろうと立ち上がった瞬間、後ろから微かにカタカタと何か堅い物がぶつかり合うような音が聞こえた
それも一つや二つじゃ無い。いくつもの音が重なった、重さを感じる音だ。それがすぐ近くまで迫っている
私は驚き即座に右に体重を傾け、倒れ込むようにしてソレの攻撃を避ける
「骨!? スケルトンか! 」
私に攻撃を仕掛けてきた全身骨のモンスターを【鑑定】すると、モンスターの種族はスケルトン
Lvは5。モンスターには種族と職業が存在せず、通常のLvしか存在しないようなので、私の方が実力的には若干上だと思う
Lv差から考えて、相手は私よりも格上の相手だが、レベルというパラメーターの一つ二つの差なんて工夫次第でどうとでもなる筈だ
まずは距離を詰めなければ。不幸な事に、手持ちに使えそうな武器は存在しない
本当であれば刃物や鈍器の一つぐらい欲しいところだが、無い物ねだりをしても仕方がない
私は右手を大きく振りかぶりながら走り、間合いを詰めてグーに握りしめ、スケルトンの頭めがけて拳を振るう
しかし私の拳がスケルトンに当たる事は無かった。前方から新たに現れた、数体のスケルトンを引き連れた別のスケルトンに、弓で左足を射貫かれたからである
スケルトンは目の前の一体では無く、複数存在したのだ。それから少しの時も経たぬ内に、思考を痛みが塗り潰した
「これは……かなり痛むね…」
私は痛みのあまりその場に倒れ込みそうになるが、ここで動きを止めてしまったら、あの弓持ちスケルトンの良い的、そんな状況に陥ればそれこそもう詰みだ
私は痛みに耐えつつ左足を引きずり、近くの木の陰に隠れ、先程採取した薬草を取り出し服用する
「おえっ、不味っ。なんだこれ。不味、うぷっ...」
独特なエグミがあり思わず吐き出しそうになる味の薬草だったが我慢して食べる
使用する方法がわからなかったためとりあえず食べたが、HPは順調に回復しているため多分使い方は合っていたのであろう。僅かながら鎮痛効果もあるようで、スケルトンに射られた脚の痛みも少し引いてきた
私は木と木の間を走り抜けながら、途中弓持ちスケルトンから飛んでくる矢を、近くのスケルトンを盾にしてスケルトンの総数を減らしつつ、弓持ちスケルトンを【鑑定】する
相手の種族はスケルトンアーチャー。Lvは7
厳しい、勝てない訳では無さそうだが、この数だ。正直自信を持って勝てると断言は出来ない
しかし工夫次第では勝てるかもしれない。そんな絶妙なラインであった為、私は戦闘を続行する
「弓を使うなら接近戦は苦手なはずだ....距離を詰める事が出来れば勝機はある」
幸いにも、接近するための弾避けとなる壁は邪魔なくらいに生きている。私はスケルトンアーチャーの攻撃を避けながら全速力で駆け、襲いかかるスケルトンを盾代わりに使い潰し、スケルトンアーチャーの元にたどり着くと、スケルトンアーチャーを押し倒して馬乗りになり、弓を奪いとり、前の方に投げ飛ばす
後は殴って殴って、殴り殺すだけだ。所詮相手は骨、全力で手加減もせずに殴れば、人骨など容易に砕ける。過去に経験済みだ
いや、このスケルトンの骨が人骨だとは限らないし、この世界の人間の強度が現実世界の物と同一な物とは限らないが
数分もかからず、スケルトンアーチャーを殴殺し、満足感に包まれて、さぁ帰ろうかと立ち上がったその時、後方に人形の影を確認した
スケルトンアーチャーの相手に気を取られ、接近に気が付けなかったらしい
カタカタと音を鳴らしながら、こちらにゆっくりと進んでくる、骸骨達の軍勢を。数は視認できるだけでも五十以上
その中心には一体、片手剣と盾を装備した騎士のような姿をしたスケルトンが他のスケルトン達を導くようにして、こちらに向かってきていた
私は急いで片手剣と盾を装備した騎士のような姿をしたスケルトンを【鑑定】する。種族はスケルトンナイト。Lvは25
連戦、それに相手は格上。勝てる相手じゃないと思い、私はほんの一瞬だけ諦めようかと思考する
しかしこの数に圧倒的格上、この戦いに勝てると思う奴は、よほどの馬鹿か主人公気取りの香ばしい奴か。まぁどちらでも良いが
「あぁ、こんなの私らしくない。たとえ勝機が無かろうと、私の尊敬するヒトは諦めなかった....『さぁ、始めようぜ骸骨ども』私が蹴散らしてやる」
私は諦めない、諦めてはならない。なんて、いかにも壮大そうな雰囲気に身体を浸し、思考を改める
私の尊敬する悪役達は、自身が敗北するからといって、諦めて、戦いを放棄するなんてことはしなかった
最後まで戦い、格好よく、散っていったはずだ
敗北するから戦わない? いいや、違うだろ。そんな副次的な結果は二の次だ。私の目的は何だ? 何がしたい。考える必要すら無いほど、何度も何度も願った事だろうが
私は恐怖で震える体を必死で抑えると、私の愛する悪を演じ。勝ち目が無いに等しい戦いへと身を投じた
◆◇◆◇◆◇
スケルトンナイト以外のスケルトンはスケルトンアーチャーが三体と他が通常のスケルトンという編成だったため。スケルトンナイトとスケルトンアーチャーにさえ気をつければ、なんとか勝てる可能性があるかもしれない
私はまずスケルトンアーチャーを倒しに向おうとしたのだが、スケルトンが前に立ち塞がり、スケルトンアーチャーは後方に下がってしまった
どうやらこの集団はスケルトンナイトに統制され、ある程度の戦術を駆使し運用されているらしいが、所々穴が目立つ
そんな戦術など無くても相手は容易に私を殺せるだろうに、もしかして私は遊ばれてるのだろうか? ナメられているのだろうか?
「『おおっと、骸骨にも前衛と後衛の概念があるだなんて以外だなぁ』でも一人ずつ倒していけば、いずれ攻撃は届く! 」
私は被弾を最小限に抑える為、回避を優先してつつ、辺りにいたスケルトンを殴り蹴り飛ばすなどして、蹴散らし、着実にスケルトンの数を減らしていった
【体術+1】の補正のお陰か、かなり楽にスケルトン達を倒せたが消耗もそれなりだ
途中スケルトンアーチャーが弓を放ってきたのだが、辺りにちょうど良い盾が落ちていた為、私にスケルトンアーチャーの攻撃が届くことは無かった
順調にスケルトンの数を減らし、スケルトンナイト以外のスケルトン、スケルトンアーチャー達を全滅させると、戦いの最中何故か動かなかったスケルトンナイトがついに動き出した
総大将かなにかのつもりだろうか? であれば部下が倒される前に、先に手早く私を殺せば良かったものを
しかし油断は出来ない。慎重に慎重を重ね、静かに初撃を見極め、躱し、スケルトンナイトに隙が出来た所でカウンターを叩き込む。その為には、一瞬たりとも気が抜けない。しかし不思議と緊張感は無かった
スケルトンナイトは剣と盾を構え一瞬で距離を詰め、剣を振るい攻撃を仕掛けてくる。スケルトンナイトの攻撃はまるで、お手本のような型通りの攻撃で動きも単調。現実世界なら、体の弱い私でも簡単に防げるはずだった
なんだ、この程度なら余裕を持って回避できると思った矢先、私の身体を剣が切り裂く
だがここはいくら現実性があっても現実世界ではない。世界なのだ
スケルトンナイトの一撃は私の体を斜めに、軽々と切り裂き上半身と下半身を分断した。その瞬間全身に激痛が巡る
切り裂かれた下半身を見ると、切断面はお世辞にも綺麗とは言えない、ガタガタと段のある、力任せに斬っただけの、技術もクソも無い、ただの暴力。しかしそれもまた美しい
「ははっ、ステータスって、偉大だね........また来るよ、次は私が勝つ」
痛かった。痛みはあった。しかし表情には苦痛の色を僅かにも出さず、私は命の尽きるその瞬間まで、余裕を装った笑みを浮かべ続けた
何故か、それは勿論、その方が格好いいからである