第2話 初めてのVR
今日はFSOのサービス開始日、ついにこの日が来た
サービス開始までの残り時間は5分ほど、今のうちにトイレをしておく。数日前に届いたVRMMOのゲームをするために買ったハードはベッドぐらいの大きさで、カプセルのような丸みのある形状の物だった
説明書によれば、この中に入ってゲームを遊ぶらしい。それと様々な便利機能が内蔵されているらしく、温度調節機能やマッサージ機能などの様々な機能が搭載されている為、長時間のプレイをしても体が痛いくて動けない、なんてことにはあまりならないらしい
「ご飯も食べたしトイレも行った、家の戸締まりも出来てる」
これで準備は万端だ、私はフリー・シンギュラー・オンラインにログインしようとフルダイブ機器の中で操作を行う
直後視界が暗転し、簡素なアニメーションが再生された後、自由が戻った頃には、私は暗く点々と光が見える空間に意識を移されていた
うろうろと歩き回っていると私の目の前に、半透明のウィンドウが現れる。利用規約がどうのと書かれていたのでパパッと目を通して利用規約に同意
こういうのは同意しないと遊べないからだ。もし仮になんらかの規約に違反したとてよほどの事じゃない限り厳重注意か罰金で済む話だし
すると、何処からか楽しげな音楽が流れてきて半透明のウィンドウの文字が変化した
< フリー・シンギュラー・オンラインへようこそ! まずはあなたの事を教えて下さい >
「えーと、今はキャラクタークリエイトの時間って事かな」
まずはゲーム内部での容姿を決めなければならないようだ
現実の姿とゲーム内の姿があまりにも違いすぎると、ゲーム内で体の動きに違和感やズレが生じる事があるらしいので、現実の私の姿をベースに髪の色を白色に目の色を紫へと変更するだけに留めておく
後の選択で多少の変化が起きる事もあるようだが、見た目にそれほど凝るつもりは無いのでスルーだ
ゲーム内での姿を決めると、今度は半透明のウィンドウの表示が変化し、今度は、名前、種族、職業、ステータス、スキル、の欄が出現した
空欄 Lv0 SP300 総合Lv0
(1Lv上昇ごとに10SP~100SP取得)
種族 空欄 Lv0
(1Lv上昇ごとに100SP取得)
職業 空欄 Lv0
(1Lv上昇ごとに10SP取得)
ステータス
HP 50
(体力 0になると死亡する)
MP 100
(魔力 スキルを発動する際に使用する)
STR 50
(力 物理攻撃力を補正する)
ATK 50
(攻撃力 装備品のステータス STRを換算した最終的な攻撃力を補正する)
VIT 50
(生命力 HPとDEFとRESに補正をかける)
DEF 50 (+4)←(( )の中は常時補正される数値 例装備などの数値など)
(防御力 装備品のステータス VITを換算した最終的な防御力を補正する)
IMT 140
(知力 魔法を用いたなどに行動に補正をかける)
RES 50
(抵抗力 状態異常にかかる確率が下がる 魔法攻撃を受けた際の最終的なダメージを減少させる)
DEX 300
(器用さ 操作性の向上や、スキルなどを習得しやすくなる )
AGI 90
(素早さ 速度などに補正をかける)
LUK 100
(運 アイテムドロップ率などを上昇させる)
スキル
【空欄】【空欄】【空欄】【空欄】【空欄】
称号
プレイヤー
装備品
長袖の白Tシャツ DEF+2 【不壊】
黒のジーンズ DEF+2 【不壊】
どうやらこの空欄を埋めて、SPを割り振れば良いようだ。ステータスの初期値が何故か一律では無いことに疑問を抱きつつも、私は順調に空欄を埋め、SPを割り振っていく
「よし、これで完了っと」
〈 申し訳ございません ヴィラン というお名前は既に他のプレイヤーの方が使用されています 他のお名前を入力してください 〉
「同じ名前の使用は不可能なのか、ならシャドウで」
〈 申し訳ございません シャドウ というお名前は既に他のプレイヤーの方が使用されています 他のお名前を入力してください 〉
「....ジェノサイド」
〈 申し訳ございません ジェノサイド というお名前は既に他のプレイヤーの方が使用されています 他のお名前を入力してください 〉
「......アウトレイジ」
〈 申し訳ございません アウトレイジ というお名前は既に他のプレイヤーの方が使用されています 他のお名前を入力してください 〉
定番どころの名前は既に使用されていた。どうやら私は戦争に敗北したらしい。まぁ仕方ないか。しかしこれではいつまで経ってもゲームが始められない
「悪役っぽくて格好いい名前は大体使用されてる....同士が沢山居るのは良いことだけど、私の名前が決まらないな。ユメキリもレイジも駄目だったし......レイムとかはどうだろう」
〈 お名前はレイム様 種族は人間 職業は科学者 ステータスポイントの割り振り スキルの選択は表示の通りでよろしいでしょうか 〉
半透明のウィンドウに確認の表示が現れたので、もう一度間違いがないか見直して完了を押す。苦節50分、私はようやくキャラクタークリエイトを達成した。これでついに、このフリー・シンギュラー・オンラインでの冒険が始まるのだ
〈 それでは、深い体験を皆さまに味わって頂く為に、この世界に関する事前情報の開示を開始します 〉
始まらなかった、初期設定と長ったらしい説明は未だい続くようだ
〈 では初めに この世界では異邦人の皆様と同じようにNPC達が国家という組織を形成して生きています
異邦人の皆様にはこの世界で 宝を求め探検したり 商人としてお金を稼いだり 農民として農業をしたりと 自由に生活していただきます
異邦人の皆様がログアウトする際は安全なエリアでのログアウトをおすすめします
異邦人の皆様の死亡時のデスペナルティーは二十四時間のログイン制限とさせていただきます
BANを実行する基準となる違反行為につきましては
現実世界で異邦人の皆様が別の異邦人の方に害をなす行為を行う事
それ以外には明確な基準は求めておりません
ゲームの中では出来る事なら何をしていただいても結構です
なお違反行為を行った違反者の方には 利用規約に基づき
警察官立ち会いの元 我が社に連行し厳格な処置を行わせて頂きます 〉
説明の初めは世界観の説明と軽い注意点の説明。違反行為の処罰についての警告だった
ゲームの中では何をしてもいい、というのは私にとってはとても魅力的な言葉だ
だがこんな説明だと改造ツールを使ったチートなどが横行するのではと思った。改造できる物なら改造してみろという事なのだろうか? 私はそっちには疎いので期待に応えられないけども
〈 他各種説明や設定は メニュー画面のチュートリアルと設定を選択し確認してください
メニュー画面を開く方法はメニュー画面を開くという意思を込めて声に出してメニュー画面を開くか メニュー画面を開きたいと心の中で念じる事で開くことが出来ます
以上でキャラクタークリエイト、及び事前情報の開示を終了します〉
「もう終わりなんだ。もう少し説明があると思ってたけど、後でチュートリアルと設定を確認しておこう」
〈 最後にレイム様が転移する国と地域を選んでください 〉
ゲームを何処から始めるかを選べるらしい、こういうのは慎重に選ばなければならない
選択を間違ってしまったら、ヒーロー側に引き渡され詰んでしまう、そんなゲームもあるのだから。おそらくこれも選択を間違ってしまったら詰んでしまうかもしれない
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ランダム転移
ヒューマンの国
ヒューマン始まりの街 フォダンの街
ルコン村
サーレ村
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どうやら私はヒューマンの国以外には転移出来ないらしい。ランダム転移を選べばそれ以外の国にも行けるかもしれないが、ゲームを始めたたての序盤で無理に他の国を目指す必要は無いだろう
私はヒューマンの国、ヒューマン始まりの街、フォダンの街を選んだ
〈 それではレイム様 この世界で何を成し 何をするのもレイム様の自由です 思う存分楽しんでください これよりゲームを開始します〉
フォダンの街への転移が始まったらしい。私の視界は再び途切れ、肉体の自由も奪われてしまう。おそらくアバターの転送中なのだろう
しばらくして視界が戻ると、周りには大勢プレイヤーと思われる集団、ずいぶん人の多い場所に転送されてしまったらしい
辺りには剣を看板に掲げた大きな建物や宿屋のような建物が建ち並んでいたが、何処の店もプレイヤーで溢れていた為、私はその場を離れ先に街を散策する事にした
「これで街の構造は大体把握出来たかな」
私は散策中に見つけた入り組んだ路地の先にあった空いてる宿屋に入り、最初に持っていた1000Gの内100Gを支払い宿を借りて、街の様子を思い返していた
街の様子は、凡的に例えるなら正統派中世ファンタジーの街並みをを写し取ってきたような街だった
街には目立つ大きな建物が多く存在していて、今日は冒険者ギルド、図書館、商会、大きな屋敷等を間近で見ることができた
おそらくあの大きな屋敷がこのフォダンの街の領主の屋敷なのだろう
やたら警備が厳重で、現状、屋敷に侵入するのは困難を極める
屋敷を警備していた兵士の剣に対して【鑑定】を行ってみた所、ATKが600と今の私では太刀打ち出来ない程に高く設定されており、一撃でも食らえば御陀仏、ゲームオーバーだ
剣だけが高品質の物である訳がない。きっとその身に着込んでいる鎧も相当の品なのだろう
必ずしも戦わなければならない相手ではないし、出来れば警備兵士達の装備を一式頂きたいが、リスクに対して得る事の出来る報酬が釣り合っていない
私がやりたいのは悪役ロールプレイである。しかし今はまだゲームを始めたばかり、悪役ロールプレイには入念な準備が必要不可欠なのである
決して突発的にことを起こしていれば街に居られなくなってしまう。今回はそのような事にならないよう気を付けなければ
それに別にこの街を乗っ取りたい訳ではないのだから、屋敷については無視しても良いだろうと考えて、私はメニュー画面からチュートリアルを開く
どうやらこのチュートリアルという項目は、私が全く知らない事の確認は出来ないらしく、最低限どういうものなのかを知らないと、チュートリアルの確認が出来ないらしい
新しく増えていた項目を確認したあと、私は設定を開いた
設定で出来る事は案外少なく
他人のアバターの表示設定、これは動きのカクつきを軽くするためのものだろう
私のハードは高性能の物を選んだためカクつきは今のところ起こっていないのでいじる必要はない
未成年のためのフィルタリング設定、これは未成年に不適切な表現や言動や交流を防ぐための設定だ
小学生など、幼い子供達のための機能だろうからこれも必要ない
スキルの発動する際の操作方法の設定、スキルを発動する際の、思念操作か声に出して発音するキーワードを変更する事が出来るらしい。これはまだわからないが、不便を感じたらいじる事にしよう
そして最後に現実性の設定、この設定は特殊で現在現実性は50%だがこれを上げる事で、よりこのゲームをリアルに感じられるらしい
という事は五感や痛覚の初期数値は現実世界の半分というところだろうか
私はもちろん現実性を最大の100%まで上げた
「ッ!......これは凄い」
正直、現実性は痛覚の設定だけだと思っていた
だがこの現実性という項目は私の予想を大きく超える変化をもたらした。
先ほどまでは綺麗だが何処か作り物のそれらしさが残る、チープに見えていた宿の一室が
まるで、今まで掛かっていたフィルターが消え去るように、よりリアルに私の目に映る
壁の色はほんのり薄くなり、ベットは少し硬く、部屋に備え付けられた机や椅子には小さな傷が見える。私が靴を脱がずに部屋に入ったからか床には少し汚れがついていた
この宿は大事にされて来たのだろう。多少年季を感じるにも関わらず、汚れは。私が靴で歩いた辺り以外にはほぼ全くと言って良いほどに綺麗な部屋だった
先ほどまで見えなかった事が見えて、気づくことがこんなにもある
年季の入った窓から外を見ると先ほどまで無表情に街を通っていた人々の表情がハッキリと見える
だが異邦人と現地人を見分ける時に使っていた、頭の上に表示されていたカーソルが消え、誰が異邦人で、誰か現地人なのかが見分けがつかなくなっていた
さすがに死んだらデータロストなんて事は無いようだが、この現実性は真に、この世界をリアルに感じる事ができる
この世界をよりリアルに楽しめる。そんな、夢のような設定だった