表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フリー・シンギュラー・オンライン 悪役志望のロールプレイング  作者: 神代悠夜
第一章 存外、世界は非日常で満ちている
19/52

第19話 ゴブリンの迷宮




迷宮に辿り着くまでの道中は、魔物と遭遇せず、たまにすれ違うのは異邦人くらい。おかしい、と思う。不気味なくらいに危険がなさ過ぎる。強い不信感を抱きながらも、私は迷宮に辿り着いた





迷宮の入り口は、洞窟のようになっており、辺りには見覚えのある緑の人型モンスター、ゴブリンが周囲を警戒しているようだ。数は外部に居る者だけでも四十体以上、ゴブリン達は防具や武器を装備しており、前に落とした集落のように簡単には落とせなさそうだ





一度撤退....しようと思ったが、その場に居たゴブリン達の半数以上、さらに迷宮内からぞろぞろと大量のゴブリン達が現れ、私が転移させられた初期地点。岩石の散乱した荒野の方に向かって行くではないか





これはチャンスだ。大量のゴブリン達が迷宮から出て行った今なら、制圧までは行かなくとも、探索ぐらいは出来るかもしれない





私は【隠密】を発動し、こっそりと素早くゴブリンに近付き、喉笛をメスで切り付けて回る。しばらくするとその場は喉を押さえ地面に転がり痛みに耐えるゴブリンの集団が出来上がった





何体かには反撃を受けたりと抵抗されたが、臨機応変に腕の血管を切り裂いたり、【体術+1】スキルで十分対応できた





後は転がってるゴブリン達を殺し終わってから迷宮の中を探索しようと思い。私は早速、死に損ないのゴブリン達を殺して回り、ストレージに収納して迷宮へと立ち入った





迷宮の内部は想像していたよりは汚れておらず、定期的に何者かが清掃を行っているようにきれいだった。壁際には照明が設置されており、暗闇に紛れることは難しそうだ





すごく残念だ。これでは考えていた方法、潜伏して背後から暗殺が使えない。格好いいと思ったのに





気持ちを切り換えよう。私はなるべくゴブリンに出会わないように、最新の注意を払いながら奥へ奥へと進んで行く





途中、巡回中と思われるゴブリン数体に遭遇したが、曲がり角や、物陰など隠れる場所が都合良くあったため、なんとかやり過ごす事が出来た





そうして迷宮の中を歩き回った。迷宮の中のゴブリンは、想像していたよりも数が少なかった。そして、スケルトンナイトのように威圧感を放つ、ボスと思われる魔物も居ない





この迷宮の戦力は、先程のゴブリンの集団に集中し、守護に着いているゴブリンは少ない。つまりは今、攻め入れば私一人でも簡単にとはいかないが、なんとか制圧出来そうだ





迷宮の大体の構造を把握したので、地形によるアドバンテージは多少減らす事が出来る。この迷宮は主に五つの開けたエリアを中心に形成されていた





簡略に称すと、ゴブリン達が多く集まるロビーのようなエリアに、食事をする為の場所と思われるエリア




不要な人間等を処刑する赤く汚れたエリア。私が見た時には絶賛処刑中だったが、ゴブリン達の歓声がアホらしくてすぐに立ち去った





ゴブリン達が肉欲を発散しているエリア。どうやら人間が捕らえられているようだったが、非効率的な、見ていて吐き気のする光景だった、気分を少し悪くしつつも、その場を後にする




ゴブリン達の王の居たと思われるエリア。中にはゴブリンの王の姿は無く、積み上げられた錆びた武器。原型を留めていない、腐敗した肉塊と、今にも死にそうな片腕の無い男。壊れた女が身を寄せ合っていた。私は二人に近づき、【支配】を発動し、二人を傀儡とする





「手駒は二人で充分かな。[命令]。あとは頼むよ? 」





私は、迷宮内部の魔物達を挑発して、ある地点まで誘導しろ。と[命令]をした。さて、後はゴブリン達が戻ってくる前にここから脱出するだけだ





私は迷宮のゴブリン達を出来るだけ殺し、目立つようにしながら迷宮を脱出を目指す。しかし出口まであと少しの所で異邦人とバッタリ出くわしてしまった





猫を被って良い子ちゃんぶれば良いかと思い、表情筋を動かし、とびきりの笑顔を作り出す。脅かさぬように、怯えられぬように、危険だと思われないように。細心の注意を払いながら、声帯を震わせ声を出す





『こんにちは! 今から』





「死ね! 」





わざわざ明るく陽気な雰囲気を作って話しかけたと言うのに、相手はいきなり襲いかかってきた。私は何故、攻撃されたのかを推察し、これからの行動予定に多少の軌道修正を加える





『君達は...確か異邦人って言うんだっけ? 開幕早々死ね! だなんて、礼儀がなってないなぁ? 流石は違法入国者、そこら辺のゴブリンと一緒で知能が低いのか? 』





口では場にそぐわない軽口を叩きつつも、頭の中ではいくつかのキーワードを擦り込むように、染み付けるように反復する






演じろ。私は科学者、ただの科学者じゃあ無い。非人道的で残虐性の濃い、効率的で非効率的な実験を好む狂科学者だ





幾度となく人体実験を繰り返し、犠牲者を多く出しつつも実験を続ける非生産的な、自己の興味を、知的好奇心を満たすためだけに命を消費する悪





現在、迷宮に居る理由はフィールドワーク。実験に使用する材料を回収しに来た所をバッタリと異邦人と遭遇






バックストーリーは構成出来た。ならば演じろ。快楽的に実験を繰り返す狂科学者を






『しかし異邦人か...君たちは素材として、どんな特性も持つのかな? それとも従来の在来種と同一の個体なのか、違うのか。非常に興味深いね』





ニタリと嫌らしい、嫌悪感を覚える笑みを浮かべ、白衣からメスを引き抜き、指揮棒を握るようにして構える





「よっしゃ、人型モンスターを討伐したなんて話、そもそも目撃情報すら聞いたことがねぇ。つまりこいつはレアモンスター! 最高だぜ! 」





「お、おい。ドロップアイテムはちゃんと公平に山分けしろよな」





「いや、待て。こいつ...何処かで......」





相手方がこちらに警戒せず、私の目の前で私を殺した後の話をしている内に状況の確認を行っておこう





目標は異邦人六人の殺害。剣使いが四人に、魔法使いが一人、大斧使いが一人と偏った編成のパーティーだ





前回は私が異邦人であると大っぴらに話していたが、今回は現地人のフリをしてみる事にする。せっかく勘違いしてくれているようだし、その認識を利用させてもらおう





『今はこんな物しかないけど、口に合うと嬉しいよ』





私は異邦人達の目の前で【隠密】を発動し、一時的に私の存在を認識できなくする。さらに【身体強化魔法】でAGI(アジリティ)を2倍に上昇させ、大型の斧を装備した異邦人との間合いを詰め、メスを垂直に突き刺すようにして口に押し込む





異邦人の肉体はゴブリン達とは肉質が異なるようで、異邦人の方が肉質が硬く、メスを入れる時に少々力が必要だったが問題は無い





もう、大型の斧を装備した異邦人は、口元から赤い液体を垂らしながら、死亡しているからだ。異邦人の死体はシステム側で、プレイヤーが死亡処理を行えば死体は消滅する





わざわざ自分の死体を無意味に放置する者など、居る訳もなく、予想通り異邦人の死体は消え去った。それと同時に喉もとに深く突き刺さっていたメスは、本来なら引き抜くのに僅かばかりの時間必要だった筈が、ほんの一時で自由となる





死体と言う障害物が取り除かれたメスは、突然仲間を殺され、呆然と棒立ちしている杖を装備した異邦人の腕の裏側、脈を切り裂いた。ドクドクと血が流れて、異邦人は血を止めようと必死で腕を押さえる。しかし出血は止まらない





止まらない、止まらない。いくら押さえても止まらない。流れる血液は足下に血溜まりを形成して、多量の出血は異邦人の意識を奪って行く





残りは剣を装備した異邦人四人だが...先ほどから剣を引き抜き、こちらに向けてはいるのだが、どうにも攻撃しようと言う意思を感じない





多分、多少なりとも怒りを抱いていると思う。しかし怯え、恐怖、警戒の方が勝っているらしい





「ヒッ、な、なんなんだよお前! 」





私が一歩、異邦人達に近づくと、うわずった声がこちらに響いてくる。もう一歩、もう一歩と近づいてみると、異邦人は面白いぐらい大袈裟に反応し、感情を表している。何コレすげぇ面白い





面白い。面白いのだが、もう飽きた。反応が単一性のモノなのだ。色が一色しか存在しない絵と一緒だ、それではただの色紙に過ぎない。それでは背景にすらなれない





興味を失った私は、手早く残りの異邦人を処分し、ゴブリンの溜まり場となっていた迷宮を後にした






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ