第17話 寄生式自己強化キャンプ
「あ、あぁ。久しぶり。その、どうしてここに? 」
私は様々な疑問を抱きながら、少女に尋ねた
「偶然」
偶然らしい。でもさっき肩を叩いてきたような...
「え? でも「偶然」....」
偶然らしい。でも確か雪はゲームとかやってなかったんじゃ...
「あのさ「偶然」...そうだね。偶然だね」
偶然ってなんだ。(狙い澄ました)偶然ってことなのか。偶然という言葉の定義に、軽く疑問を感じたが、今はそれ所では無い
第二回公式イベントまで準備できる期間は、残り六日間しか無いのだ。それまでに複数人を相手に戦闘を出来る力が必要なのだ、時間が足りない。足りなすぎる
雪....プレイヤーネームはツクヨミと言うらしい。二三度言われたのでバッチリ記憶できた。私はフレンド登録を済ませ、放置していたフェイリアゴブリンを回収するため、街の外の森に向かう
道中、不思議な事に、一度も魔物に遭遇しなかった。あまりにも不自然過ぎる。あぁ、そういえばフェイリアゴブリンが狩りをしているはずだ。これでは私のLv上げが出来ない
少し困りながら、私はゴブリンの集落に到着した。しかし不思議な事に、待機させていたスキル持ちのゴブリンとホブゴブリンが、何処にも見当たらない。おそらくゴブリン同士で殺し合ったのだろう
「ウガガガ! ヒサシブリ! 」
フェイリアゴブリンはホブゴブリンとスキル持ちのゴブリン達を率いて、私の元にやって来た
「久しぶり、元気そうだね」
よかった。道具同士で殺し合いが起きたり、なにかが破損している様子は無さそうだ。数少ない駒が減るのは、今は時間が無いので結構キツい
「ウガ! コレ! アゲル! 」
フェイリアゴブリンは他のスキル持ちゴブリンが運んでいた箱を奪い取り、私に差し出してきた。箱の中身を覗いてみると、中にはそこそこな量の魔石が入れられていた
「ありがとう。それでどれぐらい強くなった? 」
私は魔石をストレージに収納し、どの程度成長出来たのか、聞いてみる
「ウガ? ツヨクナッタ! 」
「どれぐらい強くなった? 」
「タクサン、ツヨク、ナッタ! 」
「そっか、わかった....」
話が通じない。私はフェイリアゴブリンとの会話を諦め、フェイリアゴブリンを【鑑定】する事にした
フェイリアゴブリン(仮) Lv- SP0 総合Lv0
種族 フェイリアゴブリン Lv-
職業 -- Lv-
ステータス
HP 500
MP 500
STR 500
ATK 500 (+5)
VIT 500
DEF 500 (+5)
IMT 500
RES 500
DEX 500
AGI 500
RUK 500
スキル
【大剣術】【悪食】
称号
失敗作
装備品
破損しかけた革の鎧 DEF+5
刃こぼれした大剣 ATK+5
フェイリアゴブリンは新たに、スキルを2つも習得していた。他の支配下のスキル持ちゴブリン達はLvがいくつか上昇していたが、スキルや称号は増えていなかったので、とりあえずSPを適当に割り振る事にする
しかし困った。【支配】をかけた魔物が経験値を得た場合、私にも経験値がいくらか来ると思っていたのだが、私には経験値が少したりとも入っていない。あくまでも【支配】するだけのスキルという事か
どうしようか。一応試してみる価値はありそうな方法はあるけど。まぁ失敗してもデメリットは無いし、早速実行する
「まずは....[命令]」
私が[命令]すると、フェイリアゴブリン以外のゴブリン達は辺りに散らばり、魔物との戦闘に入る
「君には私の事を守っていてもらいたい、信頼しているんだ、頼むよ」
「ウガガ! ワカッタ! マカセロ! 」
フェイリアゴブリンには信頼しているなどと虚言を吐き、耳心地の良い言葉を使って護衛をさせる事にした。フェイリアゴブリン、なんか生け捕りとか出来なさそうだし
少し待っていると、ホブゴブリンがイノシシに似た魔物を鷲掴みにして運んできた。イノシシみたいな魔物は死んでは居ないが、すぐにでも死にそうな、そんなちょうど良い具合だった
弱々しい鳴き声で、イノシシのような魔物は私に擦り寄ってくる。命乞いでもしているのだろうか
「さて、上手く行くといいけど」
腹部を踏み砕く。それだけで衰弱した魔物は死亡した。よかった。経験値も想定どおり獲得できているようだ。後はこれをひたすら続けるだけだ
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イベント当日。私は単純作業から解放され、メニュー画面を開き、第二回公式イベントにエントリーする
「これで良し」
どうやら三時間後、イベントが始まると同時に第二回公式イベントにエントリーした異邦人は、どこに居ても第二回公式イベント用に用意された、専用のフィールドに強制転移させられるらしい
まぁとにかく、時間が来たらとにかく殺しまくれば良いって事だ
ポイントを沢山集めて上位入賞する事が私の目的なので、多分間違って無いと思う
私はフェイリアゴブリン達に別れを告げ、ゴブリンの集落を後にし、シュルーベルツの街へと歩いて向かった
「久し振りに戻ってきたなぁ....」
だらだらと寄り道をしながら歩き、シュルーベルツの街に到着したのはイベント開始5分前
最後にステータスを確認しておく
レイム Lv11 〈Lvが1上昇しました〉 SP0 総合Lv33
種族 人間 Lv10 〈Lvが8上昇しました〉
職業 科学者 Lv12 〈Lvが9上昇しました〉
ステータス
HP 500
MP 450 (+50)
STR 170
ATK 250 (+210)
VIT 170
DEF 150 (+60)
IMT 160 (+80)
RES 170 (+20)
DEX 750 (+810)
AGI 260
LUK 150
スキル
【鑑定】【薬品作成+1】【体術+1】[スラッグ][連発]【隠密】【身体強化魔法】【威圧+1】【竜化+1】【終末を翳す手】【身体改造+1】〈身体改造が身体改造+1へと進化しました〉【支配】[命令]
称号
異邦人 騙す者 終末龍の因子(1)
装備品
鉄のメス(持ち手部分) ATK+10 DEX+20
鉄のメス(刃の部分) ATK+200
薄灰色の麻服 上 DEF+20
薄灰色の麻服 下 DEF+20
科学者の白衣 DEX+20 DEF+20 RES+20
猪の耳飾り MP+50 IMT+80
短期間でかなり強くなれたと思う。新しい装備品もドロップしていので装備しておいた。ただ時間の関係上、技術面を鍛えることが出来なかったためにかなり不安が残る
しかしもう時間も無い。準備はなかなか良く出来た。後は楽しむだけだ
青白く輝く光に包まれて、私は第二回公式イベント用の専用フィールドへと転移した




