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フリー・シンギュラー・オンライン 悪役志望のロールプレイング  作者: 神代悠夜
第一章 存外、世界は非日常で満ちている
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第16話 幼馴染みとの再開




意識がはっきりしない。頭痛が響いている頭が割れそうだ。痛みや怠さに耐えながら目を薄く見開き、私は周りを確認する。どうやらここは病室らしい。幼い頃はよく病院に通っていたので見覚えがあった





私が眠っていたベッドの他に、5つ、ベッドがあったが同部屋の人間は居ないらしい





外を見るため、朧気な足取りで周りの物を掴みながら窓へと近づく。外はまだ薄暗く、窓から見える広場には人が一人も居な…いや居た





こんな朝早くだというのに、私と同じぐらいの身長の少女が、ベンチに座ってなにやら本を読んでいた





「ん?....なんだか見覚えがあるような....誰だろう」





黒髪で眠そうな顔をした少女の身長は私と同じぐらいに見える。髪の長さは多分腰ぐらい





なんでだろう。凄い既視感がある。もしかして私の知り合いだろうか





まだ完全に起きていない頭を動かし、私の記憶を確認する。あ、こっち見た。私は軽く笑顔を浮かべお辞儀する






すると少女は一瞬固まり、凄く驚いたような表情を見せた後、何処かに行ってしまった





年頃の少女をじーっと見つめるのは、あまり褒められた行為ではない。きっと自身の事をガン見してくる私の事が怖かったのだろう。仕方ない





なにかもう少し手掛かりがあれば思い出せそうなのだが





ベッドに戻り、記憶を漁っていると、コンコンと乾いた音が病室の扉から聞こえてきた。誰だろう。もしかして真央か優がお見舞いに来てくれたのだろうか





「はーい。いま行きます....確かここに....よし。あった」





扉まで行く途中、転んだら大変なので、私はベッドの下から松葉杖を取り出し、一歩一歩慎重に扉に近づく






扉を開いた先に居たのは、先ほどまで下に居たはずの少女だった。私の病室は二階、だとしてもいくら何でも早すぎる。全力疾走でもしてきたのだろうか、少し呼吸が乱れているようだ。しかし何故この少女は私の病室までやってきたのだろうか





「あの....久しぶり....」





私が疑問を抱えていると、少女の方から話しかけてきた。久しぶりと言う事はやはりこの少女は私の知り合いらしい





「あぁ、久しぶり。とりあえず....部屋に入ろうか」





もう少し、あとほんの少しで思い出せそうな気がするので、少女を部屋に招き入れ、話をする事にした





「それにしても久しぶりだねぇ....最近どう? 」





「……そこそこ」


私はこの少女が何者なのか思い出せていないので慎重に、言葉を選びながら。なんとか会話を成立させようと試みる





時間が経つにつれ、この少女の言葉が大体理解出来るようになって来た。そして、この少女は表情を表すのと、人と話すのが苦手なのだろう。という事がわかった





情報量が少なすぎる。だがおそらくこの人ではないか、という人物は浮かんできた。私は何気ない会話を装い、確認してみる





「しかし....こうして話すのはいつ振りだろうね? 」






「....幼稚園の時以来....10年振り」





そう、この少女の正体は私の幼稚園の頃の友人、三日月雪(みかずき ゆき)だった。十年前に少し遊んだ友人というだけの関係性でも案外覚えているものだ





私は雪に、どこか体調が悪いのか聞いてみると、雪は昨日、酷い熱が出たため、念のために病院に入院していたらしい。相手が誰かわかったらもう安心だ





それから私達は、私が引っ越した後の事を互いに語り合った。三日後、精密検査を終え、私は病院を退院した




私は四日間、病院で寝たきりの状態になっていたらしいので、計七日間、この病院に居た事になる。つまり一週間の間、クリンを放置していた事になるのだ





昼間、陽が照り付ける中、体を酷使し、大急ぎで家に帰ると、すぐさまFSOフリー・シンギュラー・オンラインにログインする







宿の硬いベッドの上で私は目覚める。窓から光を取り入れようと、カーテンを開く。けれどもその先に光輝く太陽の姿は無く、薄暗い朝日が、シュルーベルツの街を暗く照らしていた





「あれ? おかしいな....何で朝....? まぁいっか。それより今は....」





私は街の様子に疑問を抱きながら、クリンからのフレンドメッセージを確認する。後で知った事なのだが、私が眠っている間に、第一回公式イベントと|世界の法則に関するアップデート《更新》とやらが行われたらしい






第一回公式イベントは特別モンスターを狩りまくる、みたいなイベントだったらしいが、終わってしまった事なのでこちらはどうでも良い。問題は更新の方だ





更新の内容はゲーム内の時間内加速





現実世界の一日が、この世界での二日となったのだ。どのような原理でそのような現象を引き起こしているのか、説明を読んでも全くわからなかったが、害は全く無いらしい





正直、害が全く無いなんて無茶苦茶怪しいと思うが






クリンから届いていたメッセージは意外にも少なく、準備が出来たら教えて欲しいと記述されただけの、一件のみだった





良かった、それほど焦らなくても良さそうだ。だがなるべく早めに準備は整えておきたい






が、今日はもう疲れた。私はFSOからログアウトし、翌日から自己強化に取り組む事にした





▲▽▲▽▲▽▲▽









次の日。私はFSOにログインしてすぐ、モンスターを狩りレベルを上げる為に街の外へ向かった





何故、私がこんなにも急いでいるのか。その理由の大半は、今日告知された第二回公式イベントにある







第二回公式イベント。特別に用意された、専用のフィールドで、二日間、異邦人同士が殺し合う対人戦闘イベントだ





異邦人は自分以外の生物を殺すと、得点が一ポイント入る。最終的に集めたポイントが高かった上位の異邦人には特別な報酬があると記載されていた。開催日は現実世界での三日後、つまり準備できる期間は六日間





私は、第一回公式イベントには参加できなかったので、第二回公式イベントには必ず参加したいと思い、こうして急ぎ、自己強化に励んでいるのである






モンスターを殺し続ける事、八時間。私は少し休憩しようと思い、シュルーベルツの街に戻る。門番にギルドカードを提示し、街に入ると





突然、後ろから肩をトントンと、ノックをするように叩かれた





私は少し驚きつつも、後ろを振り返り相手を確認する





「あの........夢霧? ....」





「え? 」





私はバカみたいに口をポカンと開き、相手を見つめる。私と同じぐらいの背の高さで、髪の長さは腰ぐらい。黒髪の少女が、いや





三日月雪が、私の肩を叩いたのだ





何故私だとわかったのだろう。何故ここに居るのだろう。何故、何故、何故。様々な疑問を思い浮かべながら私は少女をじっと見つめる





「その…来ちゃった」





少女はどこか気恥ずかしそうに、顔をそらしながら、私にそう告げたのであった










ありがとうございました。

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