アーセナル:予告版
フユルトさんの創造力は休みを与えてくれない…誰か、私に休みを…ガクm(_ _)m
約10年前、私達は勇者様の手によって魔王からの脅威から救われた…ここだけ聞けば良い話であったかもしれない、みんなが幸せになれたかもしれない…だけど、現実は違う。
勿論、勇者様には感謝してるし、魔王を倒してくれたことは本当に嬉しかった。
…だけど、勇者様が元の世界に帰る際に「また魔王が現れても良いように」と残された5つの国にそれぞれ渡した人型兵器である【神姫】が問題だった。
初めの内は魔王という脅威が居なくなったことで特に問題は起きなかったのだが、次第に国々の間に険悪な空気が漂い始める。
それもその筈、何魔王を倒せる程の力を持った兵器が他の国も持っているのだ、とても穏やかに過ごせるはずもない。
いつ自分の国が攻められるか分からない…そんな衝動に駆られ、それぞれの国で【神姫】を元にした兵器の開発競争が始まった。
ただ、【神姫】を解体する事はリスクが高いし言わば国の最終兵器だ、解体中に他の【神姫】で来られたら困る。
その為、何度も【神姫】の起動実験を行い、そのエネルギー源が魔力である事を突き止め、僅か3年で次々と量産型が完成され、遂に2つの国が戦争へと足を踏み入れた。
しかし、準備が万全だったアルカイム帝国に対して、ロンドメル王国は何故か【神姫】が起動しないという不足の事態により、アルカイム帝国が勝利を収めた。
…そしてここは、その併合されて出来たアルカイナム帝国の奴隷闘技場。
ここでは1ヶ月に2〜3回程の期間で奴隷対貴族による殺し合いが行われている。
しかし、闘技場が設立されて約5年程経つが、1度たりとも奴隷が貴族に勝った試しはないという。
…よく考えなくても、そんな事は当たり前だ。
向こうは【神姫】の量産型ではあるものの、戦いのスペシャリストだ。負ける事はまずない。仮に奴隷が勝ちそうになったら、首輪に仕込まれている術式が発動して殺されるだけ。
そんな茶番に、私は参加する事になった。
私はアルカナイム帝国の第1王女、ヴィクトリア。
今、私は国に反逆しようとしている所だ。
何故そんな事をするのか分からないだろうが、簡潔に言うとロンドメル王国が敗北した原因である【神姫】の起動不能の事だが、それは内部による裏切りだった。
勿論、それが他の国による介入がないのであればここまでしなかっただろう…だが、もしそれがあったとしたら?
そして、介入したのがこの腐った国であるアルカナイム帝国だった。
私の父である国王は国民の前で「正々堂々と戦った、奴等が弱すぎた」などと宣っているが、私からしてみればあれはただの一方的な虐殺だ。
その時、ロンドメル王国は確かに降伏していたのだ。しかし、帝国はそれを無視した挙げ句、宣戦布告だと捏造して各国に流した。
私は、この国のやり方には本当に吐き気がする。
降伏している敵の村々を焼き、街を潰し、首都を滅ぼした事が正々堂々だと?笑わせるな、【神姫】の起動に必要なキーを奪っておいて何を言ってるんだ。
そして、私がこの事を知ったのは5年程前の私が10歳となった誕生日パーティーだった。
その時、国王である父とある男との会話が耳に入った。
「おい、ロンドメルの王家の血筋は全て排除したか?」
「はい、あとは5歳になる王女だけですよ」
「そうか、もしあいつ等が生き残っていて、キーを手にしたら不味いからな」
「あいつ等の血とキーが揃わなければ永遠に起動することはありませんから」
その言葉を聞いて私はこの国に心底失望したのと同時に、その5歳になる王女をどうにか手の届く範囲に置かなければと考えた。
「では、儂がその王女を処刑しよう」
「ほぉ、また何故そんな?」
「あの国との最後の縁を切るのは国王である儂が相応しいじゃろう?」
「ハハハ!そうでありますな!!」
そう言って席を外してどこかへ行く二人を追うように跡をつけた。
しばらくすると、二人はとある一室に入った。
そこには、私が使用しているのと同じようなとても綺麗な部屋で、ベットの上にスヤスヤと寝息を立てている女の子がいた。
その少女は、艷やかな黒いを肩までおろし、綺麗な赤い瞳をしていた。
おそらく、彼女が王女なのだろう。
そう考えていると、父は懐から短剣を取り出して王女の首めがけて振り下ろそうとしていた。
「何をしているのですか!?父上!!」
私の声に、慌ててナイフを背中に隠す父。
「こ、これは違うのだ!?」
今は私がここに来たことに困惑しているが、ナイフの事に言及すると、開き直る可能性が高い。
なので、私は…
「父上…まさか、こんな幼い子に欲情して襲おうとしていたのですか!!」
その言葉に、一瞬だけナイフを見られていない事に安心したが
自身にロリコンの容疑が掛けられているを理解すると、慌てて誤魔化し始めた。
「ち、違う!?儂はそんな…」
「そんなつもりが無いのなら、わざわざ就寝している女性の一室にコソコソと忍び込む必要が何処にあるのですか!!」
「国王様…まさかそんなご趣味が」
「何故お前がヴィクトリアに味方しているのじゃ!?」
冷ややかな目を向ける男に国王はツッコミを入れる。
『いや、ここは王女を殺害しようとした事を悟らせないようにしようかと…』
『いや、娘に変態の容疑を掛けられるのも嫌なのじゃが…』
ヒソヒソと父上達がそんな話をしていると、ベットにいた女の子であるロンドメル最後の王女が目を覚ました。
王女は国王である父を見ると、まるで変質者を見るような白い目で見てから私の所へ歩み寄り、後ろに隠れてしまった。
「ほら、父上の事を嫌っているのが何よりの証拠です」
「ぐ!?」
チャンスと思った私は、一気に畳み掛けることにした。
「この子は私の従者として育てます。もしこの子に何かあったら、父上が就寝している幼子を襲おうとした変態ロリコンだと触れて周りますのでッ!!」
私の言葉に顔を青ざめた父とその様子を笑ってみている男を残して私は自分の部屋に少女を連れて行った。
「…何で助けたの?」
「…気づいていたのか、殺されそうだったと」
どうやら少女はただ寝たフリをしていただけのようだ。
「私は…この腐った国を潰すには、どうしても君が必要だと思ったからだ」
「…貴方がこの帝国の【神姫】を使えばいいんじゃない?」
「あぁ、それもいいがこの計画はつい先程考えたばかりでな…それに、非常事態でもない限り【神姫】には国王でも近づけない」
「ん…それなら」
こうして、私と従者…名前はスティラと言う彼女によるこの国へ引導を渡す計画を進めていった。
そして、5年程経った今に至り、ようやくこの計画を実行出来る段階まで事を運ぶ事が出来た。
そして、私はというと闘技場には行かず帝国の【神姫】が保管している倉庫の近くに息を潜めていた。
だが、闘技場にはスティラとは別の…私に扮した共犯者が参加している。
私と同じで瞳が赤く、髪の長さも殆ど同じだ。違いと言ったら後ろ髪をポニーテールにしているぐらいで、それをを解いたらほぼ私の完成だ。
身長は多少違うが厚底のブーツでカバーできる範囲だし、機体に乗り込んでいればバレる心配はない。カメラに映る事だけに気を付ければそれでいい。
…さて、まさか私が国王に反逆をするなどあの腐った奴等は思っても見ないだろう。
わざとロンドメル王国を蔑むような発言をすれば簡単にボロを出した。しかも、それが国の重鎮全員が知っていたのだから怒りを通り越して呆れてしまった。
その時、闘技場の方で「ドゴーンッ!!」という大爆発と同時に大量の煙が発生した。
闘技場にはもしもの時の為に非常用の転移門がある…まぁ、もう一人の共犯者が破壊工作を行っている頃だろうが。
「さて、そろそろ私も動くか…おい、今の爆発音を聞いたな?先程転移門を使ってここに【神姫】を…」
まずは計画の第一歩として帝国とロンドメルの2つの【神姫】を奪取する。
そこから先は…お尋ね者になるだろうが、ゆっくりと世界でも旅をしよう。
まぁ、気が向いたら他の国の【神姫】を奪取してもいいかもしれないな。また同じ様な国を生み出さないためにも…
さぁ、私の掌で踊っていてくれよ…馬鹿な父上?
連載する時はスティラちゃんの視点で物語を進めたいと思ってますけど…どうでしょうか、ヴィクトリアちゃんの視点の方も連載版に出そうか迷ってます(。ŏ﹏ŏ)
「さぁ、私の掌で踊っていてくれよ…馬鹿な父上?」
??&??『『死亡フラグ!?』』
…ヴィクトリアちゃん達は基本的に死にません。