第1話【未知との遭遇】
パラレル化した遥か彼方の銀河で・・・
-記録:宇宙開拓期における未知との遭遇-
宇宙開拓時代と言われ、果てしなく膨張している宇宙の彼方まで飛び出す開拓者達が称賛される世紀。
銀河共和国黄金時代が続くと思われたが、宇宙開拓期2万2021年頃、銀河共和国政府勢力圏の外縁部、更に先にある未探査領域において、開拓船の消息が不明になる事例報告が、銀河共和国領域外縁部開拓者拠点から相次いでいた。
同年、銀河共和国政府は、同領域に派遣している宇宙開拓省調査チームに対し、事実確認及び調査を命じた。
翌年である宇宙開拓期2万2022年頃、宇宙開拓省調査チームから未探査領域における複数の知的生命体とのコンタクト及び国家規模の勢力が存在する可能性が報告されるとともに、宇宙外縁部と未探査領域における緩衝地帯設立に関する意見具申に基づく政策立案が開拓省及び軍部から行われ、事態は安定するかに思われた・・・
~未探査領域~
「資源衛星発見、これよりフラグを立てる。」
開拓船フロンティア4649号から資源衛星SS3に対し、所有権を主張するビーコンが設置されようとしていた。
「ようやく見つけたな。これで開拓もますます進むだろう。」開拓船の船長も一段落しそうな作業を見て、感慨深いものを感じていた。
「それにしても、最近、開拓省の奴等はやけに重武装な船団で彷徨いてますね、船長」船員の一人が船長に直近で話題になっていることを聞いてきた。
「何でも、軍部にも根回しして、最新鋭のミリタリーグレードの部隊で船団をエスコートしているという話をチラッと聞いたな。」船長が開拓拠点の会合で聞いたことから答えを出した。
「まぁ、保険はあるに越したことがないですね。」船員はそう納得した。
「一時期、無人探査船とは言え、かなりの船が消息不明になったからな。」船長は険しい顔で言った。
「未探査領域は、磁気嵐や小隕石群が多いので、それなりの投資はしていた筈なんですがね。」船員は、最新グレードの無人探査船のデータを読みこんでいた。
「万一に備え、ちょっとした哨戒艦レベルの自衛機構も搭載していたにも関わらず消失したんで、開拓省も本腰入れてきたんだろ。」船長はそう結論づけた。
ビービービー「何だ?」船員が警告灯がついたモニター表示を見た。「ザ・・ザザザザ・・・退避せよ。」モニターには、周辺に展開してある無人探査船経由で警告が流れている模様だ。
「この感じは、ジャミングされているな。」船長はそう言い、自衛配置警報を船内に流した。
有人開拓船は、単装砲を装備している他、対隕石レーザー4連装銃座があることから、船団を組んだ際は侮れない戦力になり得た。が、今は有人探査船は1隻である。他の船は、無人探査船であり、それも周辺探査で出払っている。警告は、誰が流したかはジャミングされていて判らない状況だ。
「船長!?」船員は、船長に警告の有効性を含め確認をしようとした。未踏査領域の開拓はコストがそれなりに掛かるのだ。しかし・・・
「無人探査船は放棄、直ちに開拓者拠点に帰還する。」船長は、決断を下した。彼は退役軍人であり、危うい状況に対する嗅覚は、かなりのものがあった。現役時代は、このようなグレーゾーン段階であれば生き残れる可能性が高いことを彼は知っていた。
「アイアイサー」船員も、腹を括った。
「ビーコンの出力最大、電文内容は、【我、敵性勢力の攻撃を受けている。未踏査領域SSセクター03においてコンタクト、至急対応されたし。】だ。」船長は、資源衛星に設置したばかりの宙域通信ビーコンから最大出力で至急報を流すとともに、開拓者拠点に向けて開拓船を走らせ始めた。
~開拓省調査チーム~
「所属不明艦隊、銀河共和国外縁部に向けて移動を開始しました。」探査艦から調査船団長に報告されるのと同時に、資源衛星方向に指向性長距離通信を開始し、ギリギリコンタクト可能だった無人開拓船を経由して有人開拓船フロンティア4649号に警告が出された。
たまたま、艦隊レベルのジャミング範囲外に通信艦が居て、たまたま有人開拓船の前方に無人開拓船がいたからこそ、結果的に通信が中継されたのだ。更に、有人開拓船が設置したビーコンから開拓者拠点を経由して銀河共和国政府にも至急報が報告されたことは、歴史的快挙と言って良い。一つでも歯車が狂えば成功しなかっただろう官民連携プレーだったが、他の開拓船に同じことは期待できないだろう。これは、元退役軍人である船長の用心を重ねた卓越した通信を含む艦船運用の賜物であった。
この日、銀河共和国政府は、有人開拓船団一つと無数の無人開拓船団を喪失した。生還したのは、開拓省調査チームの他は、有人開拓船1隻のみであった。
-to be continued-
ちょっとずつ投稿していきます。