彼女のことを思うのは当然
つまらない時間に何かを思うことは誰にもあることだ。決して不思議なことではない。だから私が彼女のことを思うのは至極当然のことだ。そう思う高校一年生でした。
「えーであるからして…」先生が教卓に目を落とし、黒板に書かれた先生の解答と教本の正解を見比べる。見比べる。さらに見比べる。そしてしばらくたって先生の口角が上がる。「なのでこうなるわけです」楽しそうに先生が顔を上げた。自身の持っている悩みが全て晴れて、幸せしか残ってませんよみたいな顔をしている。うん、むかつく顔だ。
生徒はというと真剣に理解しよう黒板とにらめっこするもの、諦めてつまらなそうにしているものと大きく二種類の人間がいるが私は後者だった。分からんべ。今は数学の授業であった。しかも、今日最後の授業だ。早く終われ。何かを呪うようにそう思う。先生の声が、チョークの板書の音が私の意識をうやむやにしていく。向いていなかった注意がさらに方向を変え、どこかに流れていった。水のように流れていくそれは、さまざまなモノに輪郭を変えていく。最後にそれは彼女になって私はそれを意識して観察する。
彼女は小さくて柔らかくていい匂いがするクラスメイトだ。目がくりくりしてて顔がぷにぷにしてて温かい女の子だ。髪は短く、きらきらしてる。私は髪が長く、切れ長な目だから彼女とは反対な見た目である。まあ、私の容姿なんかどうでもいい。彼女はかわいい。彼女の姿を確認したいけど、席が離れていてできない。私が後ろの方で、彼女が前の方だ。私はこの席を決めるクジを忌々しく思った。私の授業の楽しみの大半を奪ったやつだ。クジが人間だったら無言で一発ぶん殴っていたと思う。彼女の授業に対する姿勢は私と違い前者だ。席替え以前の時は彼女とは近く、よく観察していたがどの授業に対しても真剣で難しそうに頭を抱えたり、振ったりしていた。かわいいなあ。
彼女を考えていると時間が爆速に流れる。チャイムの音が私の意識を体に戻していく。飛んでいた意識はじわりと染みこんでいく。授業中、彼女を思い続けていた意識は熱くなっていた。それが体に染みたから体も熱くなってきた。よし、彼女のところに行こう。熱を逃がそうと私は早足に歩く。体に当たる空気が勢いよく熱を背後に連れて行った。