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第四話 うんめいのらすとばとる!

 ノエルさんが俺に意味ありげな視線を送る。

 何か仕掛けるのか。どんな状況でも対応できるように覚悟を決め頷く。


「くっくっく、どうやら、運はわらわに向いているようじゃな」


 そして、運命の第三戦が幕を開ける。




 ノエルさんが何かをしそうだが、何をするかわからないのでドキドキしながらカードを配る。

 カードを配り終えノエルさんが自分の手札を見た瞬間、ノエルさんの表情がストーンゴーレムのように固まる。

 あージョーカーきちゃったかー。

 戦闘の時はあんなに冷静なのに、なぜゲームの時は怪人二十面相になってしまうのか・・・。

 ノエルさんとは悪魔幼女は黙々とペアになったカードを場に捨てていく。

 そしてノエルさんの手元には九枚・・の札が、悪魔幼女の手元には七枚・・の札が残る。

 ・・・なんか違和感がある。だけどその違和感の正体がわからん。

 何気なくノエルさんの手札をチラッと覗く。


「!?」


 俺氏、ノエルさんの手札にジョーカーが二枚・・見え衝撃を受ける。

 そしてやっと違和感の正体に気づく。

 なるほど、ババ抜きで手札が奇数同士ってありえないよな。

 偶数対奇数だから最後にババが残って終了なわけだし。

 ジョーカーが二枚・・・ノエルさん、殺る気マンマンエルフ。

 俺が恐れ戦いていると、ノエルさんが俺にちらっとアイコンタクトを送る。

 汚いなさすがエルフきたない。

 いや、どこぞの死神も審判とグルが一番恐ろしいトラップの一つといっていた。

 つまりこれは真剣勝負の駆け引き! 汚くない! 勝てばよかろうなのだァァァァッ!!


「ふむ、どうやらジョーカーはお主の手に渡ったようじゃな。運が悪いのぉ?」

「クククク・・・その余裕、いつまで持つかな?」


 ノエルさんと悪魔幼女の間にバチバチと火花が散る。

 まぁ悪魔幼女は目を瞑ってるから気のせいなんだけど。

 つーか緊迫の勝負っぽい流れだけど、実際は実年齢168歳の幼女と自称悪魔の幼女がトランプを手ににらみ合ってるほっこりモードなわけだが。

 俺がシスコンではなくロリコンだったら即死していた可能性が高い。和む。

 これで俺の魂がかかってなかったら最高なんだけどな・・・


「では早速・・・審判、右から三番目の札じゃ」


 ノエルさんの手札からカードを抜いて悪魔幼女に渡す。

 もちろんジョーカーではなかった。運良すぎだろこいつ。

 さきねぇといい勝負だなこりゃ。


「・・・なかなかやるな自称悪魔。」


 そう言いつつも『これでも駄目か・・・』と言いたげな苦悶の表情のノエルさん。

 しかし戦いはまだまだ続く。




 その後もカードのやり取りが続くが、とうとう最終鏡局面を迎えた。

 ついに悪魔幼女の手持ちの札が最後の一枚になってしまったのだ。

 このままでは俺の魂がヤバイことになってしまう。

 ・・・実際のとこどうなるんだろう。俺はコインにされてポーカーのチップにされてしまうのだろうか。

 それとも人形に魂を突っ込まれてこの悪魔幼女の話し相手にさせられるのか?

 ノエルさん、どうか勝ってください・・・!


「さて、これで最後と考えると、ちと寂しい物を感じるのぉ」


 悪魔幼女の死刑宣告に等しい言葉を受け、俺が両手を組み祈りを捧げながら下を向くと、なにやらノエルさんが机の下で何かしている。

 あれは・・・机の下で札をシャッフルしてる?

 悪魔幼女は目を瞑っているからわざわざ机の下でこそこそする必要なんてないはずだが・・・

 そしてノエルさんは二枚・・のカードを目の前に差し出す。


「安心しろ、私はかけらも寂しくなどないからな。」

「むははは、その強がりもこれで終まいじゃ! 審判、右じゃ右の札を寄越すのじゃ!」


 ノエルさんがニヤリに笑う。

 まさか・・・!

 俺はドキドキしながらノエルさんの札を取り悪魔幼女に手渡す。

 すると。


「・・・何、ジョーカーじゃと!」


 せぇぇぇぇぇふ! 俺の魂、せぇぇぇぇぇふ!!

 悪魔幼女は絶対にありえないことが起こったかのようにビックリしている。


「何故じゃ、こんな事は確率的にありえんのじゃ!!」

「よく『確率』なんて難しい言葉を知っていたな自称悪魔の幼女め。大人をなめるとこうなるということだ。あっはっはっは!」


 ノエルさんの手元には一枚の札、悪魔幼女の手元には、ジョーカーともう一枚の手札がある。

 ・・・なんだ?

 なにか違和感がある。何がおかしいんだ?

 ・・・・・・おかしくない。

 おかしくないはずなのにおかしいと感じる? どういうことだ?

 ・・・・・・・・・あ、わかった。カードの枚数だ。

 最初はノエルさんの九枚(七枚+ジョーカー二枚という荒業)と悪魔幼女の七枚、計十六枚の偶数だった。

 しかし今はノエルさんのラスト一枚と悪魔幼女の二枚、つまり計三枚の奇数になってる!

 俺がノエルさんを見ると、ノエルさんが俺に向かってウインクをする。

 目を瞑っている悪魔幼女に気付かれないようにノエルさんの手札をそーっと覗くと、そこにはジョーカーが。

 ・・・つまり。

 さっきノエルさんが悪魔幼女に差し出した二枚のカードは両方ともジョーカー!

 多分数字が書かれた正真正銘本物の最後の一枚はどこかにこっそり隠し持っているんだろう。

 これが大陸随一の賢者にして冒険者の頂点<破軍炎剣>の本気、か・・・おそロシア・・・


「さぁ、どちらの運が強いか、勝負といこうじゃないか。かかってこい!」




 ・・・なぜだ。

 あれから十回もカードを引き合っているが決着がつかん。

 ノエルさんが負けないのは当たり前だ。だってイカサマしてるし。

 でも悪魔幼女が負けない理由がわからん。イカサマしてるのか?

 もし悪魔幼女が不審な動きをとったら即座にそのプリティーノーズに二本の指を突っ込む準備はしているが、怪しい雰囲気は感じられないんだよなぁ。

 ノエルさんが俺に視線を向けるも、俺は首を横に振る。

 やはりノエルさんも今の状況に困惑しているようだ。


「勝てないのが、そんなに不思議かのぉ?」

「・・・何?」


 動揺からか、先ほどまであわあわしていた悪魔幼女がふてぶてしい笑顔を見せる。


「くくくっ、・・・時にお主、シュレッダーの猫を知っておるか?」

「・・・当然だ。」

「お、さすがノエルさん。博識ですね!」

「・・・ハハッ。マァナ。」


 なお、ノエル氏、顔を赤くして少しぷるぷる震えている模様。


「ふむ、知っての通り『りょうしりきがく』における、とある猫の話じゃ」


 量子力学・・・ああ、シュレディンガーの猫の事かな?

 じゃあノエルさん知ってるはずないじゃん。ノエルさん、見得張っちゃったのか・・・

 この世界はそこまで学問発達してないから地動説でも唱えようものなら、精霊王信者にBOKUSATUされる可能性もゼロではないから恐ろしい。


「その話の中で、猫はとある部屋の中で巨大なシュレッダーの上に立たされたそうじゃ」


 ごめん、違ったわ。シュレディンガーの猫の話じゃなかったわ。

 聞いたことない世界の聞いたことない話だったわ。


「猫の前には一つのボタンが置かれ、そのボタンが押されると、足下にあるシュレッダーが作動し、猫を挽肉にしようと襲いかかる!」

「・・・ああ、しゅ、しゅっれだーな。肉食の恐ろしい魔物だ。」


 シュッレダーじゃくてシュレッダーですノエルさん。しかも肉食べません。

 やつらの主食は主に紙です。あとホチキスの芯。たまにCD。

 つーか猫をシュレッダーにかけるとか恐ろしすぎるわ。

 それを平然と語る悪魔幼女の自称悪魔っぷりが輝きだした。


「ボタンを押せば猫は挽肉、しかしボタンを押さなければ猫は餓死してしまう。猫がどちらを選ぶか確率は二分の一。」

「・・・あれ、それ部屋から出ればいいだけじゃないか?」

「そんな事を言ったら話が始まらないじゃろう。きっとりょうしりきがく的なアレが働いて、内側からは鍵が掛かってしまっているのじゃ!」

「あ、ああ、そそそういえばそうだったな、りょうしりきがくならそういう事もあり得るな、うん。ははっ、ハハハハ・・・」


 乾いた笑いを上げるノエルさん。

 嘘に嘘を重ねていくと天を衝く嘘タワーが出来上がり、その嘘タワーはいつか倒れて大地をめちゃくちゃにし、その後荒地から真実が芽生えるってお姉ちゃんが言ってた。

 なお、意味はわからない。


「全く、話を戻すのじゃ! しかし、猫の結末がどうなったかは、誰かが部屋を開けるまで分からない。この時、猫は挽肉になっている状態と餓死している状態が、1対1で重なっているのじゃ」


 あーやっぱシュレディンガーの猫の話かこれ? もうわけがわからないよ!

 そしてノエルさんの『いや、こいつ何言ってんの? 頭大丈夫か?』とでも言いたげな痛い子を見る目が辛い。

 まぁ量子力学の話なんて何も知らなければそうなるよね。

 宇宙ひも理論とかスリット理論とか聞いても頭にまるで入ってこないから『なんかかっこいいこと言ってるぞ』としか思わないからな。


「あー・・・ま、まぁ、その、その通り、だな・・・? 私はわかっているが、一応聞いておこうか。き、貴様にはその猫を助ける方法が分かるか? 私はわかっているが。」

「うん? どうじゃろうな・・・結局、誰かが猫の状態を観測するために、部屋を開けねばならぬのじゃから・・・」

「や、やはり、そうなるか・・・も、ももももちろん私もそう思ってたが! しかし、凶悪なしゅっれだーか・・・・・・エド。」


 悲しそうな顔をするノエルさん。

 なぜ今エドさんの名前が?

 まさか、シュッレダーとエドさんには何か関わりが・・・?

 そしてノエルさんが決意の表情で顔を上げる。


「・・・よし、逆転の発想だ。しゅっれだーに襲われるのが猫だからかわいそうなんだ。 部屋に閉じ込められる役を猫からエドに変えよう。これで解決だ。」

「何がどう解決したんですか!?」


 うんうんと一人頷くノエルさん。

 意味がわからないよ・・・


「エドならしゅっれだー相手でもなんとか撃退できるのではないかと思う。ダメだったらその時はその時で仕方ない。冒険者は弱肉強食だ。」

「さっきからエドさんへのあたりキツくありません!? さっきの悲しそうな表情は!?」

「しゅっれだーVSエドの戦いを頭の中で想像していたのだが、十回戦って八回ほどエドが食われていたので、つい。」

「エドさん、戦友なんですよね? 実は嫌いだったとかじゃないですよね?」


『嫌いじゃないけど、あいつはほんと口だけでなー』なんて言いながら、ちょっと嬉しそうな顔をしているノエルさん。

 良かった、いつものツンデレだった。

 昔の戦友さんたちの話になるとなぜかツンデレと化すんだよな、この人。


「ちと話し過ぎたのじゃ・・・ほれ、早く一枚引くが良い」


 ニヤニヤと悪魔的笑みを浮かべながらノエルさんにカードを引くことを強要する悪魔幼女。

 ノエルさんはキリッとした顔に戻るも、一度下を向き深く息をつく。

 そして少し経った後、決心したかのように顔を上げる。

 まさか、相手の懐に斬り込む気か?


「・・・おい自称悪魔。貴様、イカサマしていないだろうな?」

「いいいいイカ、イカ、イカサマじゃと!? なななな何を言っておるのじゃ? あっ、そ、そうじゃ! わ、わらわ子供じゃからそういう事よく分からないのじゃ」


 斬り込んだー! そして悪魔幼女めっちゃ動揺しとるー!

 イカサマしてたのかよ!? 全く気づかなかったぞ!?

 ノエルさんが机の上に置いてある悪魔幼女の手札を引く。

 が、手元の札に加えず、中身も確認しない。


「自称悪魔。貴様がもしイカサマをしていないというなら、今これからする私の提案を受けれるか?」「べ、別に受けるとか受けないとかそういう問題じゃないし~? そもそも何をもってイカサマと呼ぶのか、決まってないし~?」


 効いてる効いてるぅ!

 あの悪魔幼女がボディブローを何発も打たれたかのようにガクガクしている。


「そこにある貴様の手札、ちょっと開いて見せろ。イカサマしてないならできるよなぁ?」


 なるほど、『自分がやってることは相手もやっている理論』で攻めるのか。

 つまりノエルさんは悪魔幼女も何らかの方法でノエルさん同様ジョーカーを二枚隠し持っていると疑っているようだ。

 これでノエルさんが引いたカードではなく悪魔幼女が持っているカードがジョーカーだった場合、自動的にこちらの勝ちといっていいだろう。

 さぁどうだ悪魔!

 聖ムラサキと聖ノエルの名の下に、お前に引導を渡してやるぞ!

 アビスの力を知れ!!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え? そんな事でいいの? いいよ」


 長い間があり、目をパチクリさせながらあっさり手元の札を開く悪魔幼女。

 そこには、しっかりと数字が描かれていた。

 つまり、ジョーカー二枚作戦ではない!?


「バ、バカな!? ありえん!!」


 ノエルさんと俺は引いた手札を確認するが、そこにはジョーカーの札があった。

 ・・・嘘だろ。

 今の状況は残り二枚のうち片方は正解という正真正銘二分の一の確率、フィフティーフィフティーの勝負。

 それが十一回連続ではずれるってあんの?

(注 二分の一を十一回連続で外す確率は約0.05%です)

 ・・・・・・え、待って。つーことは何、こいつ、リアルラックでこれやってんの!?

 こんなん無理ゲーだろ!? どうやって勝つんだよこれ!?

 自称『人類最高のラック値を持つ美少女』、うちのお姉さまでもここまで出来るかどうか・・・

 ノエルさんは驚愕に目を見開きながらも、なんとか机の下で札をシャッフルし二枚のジョーカーを悪魔幼女に差し出す。


「ところでお主、イカサマなんぞはしておらんじゃろうな?」


 !? まずい、ついにやつもその可能性に気付きやがった!

 くそ、幼女のくせに生意気な・・・!

 いや、まだ大丈夫。

 これをノエルさんが華麗にスルーして何事もなかったようにポーカーを続ければ・・・


「バババババッバカモノ! この私が、イ、イカサマ! イカサマ!? ちゃんちゃらおかしいな! あーおかしいおかしい! オホホホホ!」


 無理でした。

 うん、知ってた。

 そしてオホホホホって笑う人初めて見た。


「・・・怪しいのじゃ」

「いやいやいやいや意味わからん。何言ってるか意味わからんし。ヒイロ、あいつ、ついに頭おかしくなったみたいだぞ? もう私の不戦勝じゃないかこれ?」


 めっちゃプルプル震えながらこっちを見るノエルさん。

 当事者でなければ笑える状況なんだけど、俺の命がかかっているので笑えん。

 そしてそんな状態でも自分の不戦勝を告げるノエルさんの負けず嫌いマインドすごい。



増田先生のほうでは今話のはしらちゃん視点でのお話が楽しめます!ぜひ今話と一緒に読んでみてください!

検索ワードは『あくおれ!』風味です!

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増田先生の描くもう一つの続・あくおれ!はこちら→【続・あくおれ!~悪魔な妾(おれ?)の華麗なる異世界生活~】
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