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短編

ユートピア

作者: oga

 スマホが普及し、一人一台が当たり前になった昨今。

時代は更に進み、一人一台、アンドロイドを所有する時代が訪れた。 

性能は人間と同様で、一台25万。

店で容姿を好きなようにカスタマイズできる。

 現在、大半の人は仕事をアンドロイドに任せ、自分は趣味に勤しむというスタイルの時代がやって来た。







「おはよーう」


「オハヨウゴザイマス」


 返事をしつつ、デスクでカタカタとパソコンを打つのは、山下のアンドロイドだ。


「何だよ、みんなアンドロイドかよ……」


 部長の森田は毒づいた。

新人はみんなアンドロイドで、会社にまともに来ているのは自分だけである。

現に、新人よりも、アンドロイドの方が仕事が出来る。

怒られてまで、出社する必要がないのである。


「俺もそろそろ、自分のアンドロイドを買うか……」


 そんなつぶやきが、虚しく室内に響いた。








 数年後、労働力はすべてアンドロイドとなり、人件費が消滅。

巷で売られているものすべてが、無料の時代となる。

アンドロイドの普及率も100パーセントとなり、世界各国は、理想郷(ユートピア)の到来、とまくし立てた。


「イッテキマス」


「ん」


 ソファの上で、森田は返事をした。

金を稼がなくとも、何不自由なく暮らしていける現在。

森田の生きがいは、スマホアプリのみとなった。

森田がやることと言えば、朝、アンドロイドのメンテナンス(ボタンを押して、モニターを見るだけ)、夜、アンドロイドの充電、の2つのみである。


「俺がこのままソファで死んでも、アンドロイドが勝手に処理してくれる」


 アンドロイドには、老後の世話をしてくれる機能の他にも、持ち主が死んだ場合、処理の手続きをする機能が備わっている。








 更に時代は進み、アンドロイドがアンドロイドを管理する時代がやって来た。

ついに、人間がアンドロイドのメンテナンスをする必要も無くなったのである。

人はただ、家にいて、趣味をして、飯を食べるだけの存在となった。


「俺が、最後の世代か……」


 森田の息子、ケンは部屋で独りごちた。

学校にも行く必要が無くなれば、必然的にずっと引きこもった状態となる。

当然、出会いも無く、異性と関わることもない。

異性と関わる場も、無くは無い。

しかし、大多数の人間が、他者と関わらずに終わる。

子孫を残せなければ、後は滅びるだけ。

こうして、人間にとってのユートピアは、呆気なく終わりを遂げた。





おわり

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― 新着の感想 ―
[一言] その方が、より理想郷に近いのかも知れませんね? 消えてしまった種には何の悩みも無く。 自由なのかも。
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