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ゾンビ・パウダー  作者: 木原ゆう
欲望転移のキャンサーセル
39/48

Desire transition 5

【注意】キス描写が御座います。規約該当箇所と思われる部分は黒塗りにされておりますのでご注意下さい。


 時刻は夜の21時を指していた。

 自衛隊によるゾンビ掃討作戦まで残り3時間を切ったところで、二階にある美憂の部屋から一旦自宅に戻ることに決めた優衣。

 さすがに飽きてきたのか妹の美優もあちらの家で待機すると言い出し、京子や雪乃までも強制的に優衣の家に引っ張って行ってしまった。

 リビングルームに残ったのは僕と真琴、それに紗栄子の三人だ。

 彼女らはもうすぐ作戦が始まるという緊張感と期待感を背に、テレビのニュースやネット情報を集めることに躍起になっていた。


「日向先生、お湯を沸かしたので先に入りますか?」


 脱衣所から顔を出した僕は、なるべく自然な形で紗栄子に話を振る。

 テレビを見ていた彼女はこちらを振り向き、少し考えた後にこう答えた。


「うーん、でも私、いつも長風呂だから……。最後で良いですよ」


「大丈夫よ、日向先生。どうせあの子達も岸村さんの家で暇つぶしでもして遊んでいるんだろうし、ゆっくり浸かって来たらいいわ。ね? 楠木君?」


 真琴の言葉に僕は首を縦に振り返答する。

 二人に快くそう言われたら後に引けなくなったのか、紗栄子は申し訳なさそうに席を立ち、優衣から借りた着替えを手に持ち僕と入れ替わる形で脱衣所へと向かう。


「……本当に長いから、その、後で文句とか言わないでくださいね?」


「はいはい。ゆーっくりと、どうぞー」


 手をヒラヒラとさせた真琴は苦笑いで紗栄子を見送った。

 リビングルームに残った真琴はソファでゆったりと寛ぎテレビを見ている。

 僕は冷蔵庫を開け、冷やしておいた緑茶のパックを二人分用意して彼女の横に座る。


「はい、どうぞ。真琴さん」


「……あ、ありがと」


 お茶を手渡すと一瞬だけ彼女と目が合い、そして慌てて彼女は僕から目を逸らす。

 昨夜も感じたが、もしかしたら真琴は――。


「そ、そうだ! ニュ、ニュースを変えようかな……!」


 慌ててリモコンを取ろうとして床に落とす真琴。

 それを拾おうとした僕と手が触れてしまい、彼女は小さく悲鳴を上げた。

 ……まさかとは思うが、真琴は男に耐性が無いのだろうか?

 警察という特殊な仕事に就く以上、そんな感情を抱いている暇など無いということなのかもしれない。

 僕は慌てたままの彼女の目を見つめ、そっと彼女の手に自身の手を重ねる。


「へ? あ、ど……どう、したの? ハハ、あれ……? そんなに真剣に見つめて、手を握ったりして……?」


 ――ドクン。

 まただ。心臓の音が高鳴る。

 だが興奮はまだ抑えなければならない。

 彼女をゾンビ化させてしまえば、情報を聞き出すことが出来なくなる――。

 僕は左目を押さえ、そのまま彼女に覆い被さる形で前に倒れ込んだ。

 そして深呼吸をする。

 鼻腔を真琴の髪の匂いで擽られ、次第に僕は落ち着きを取り戻して行く。

 彼女はといえば、心臓の音が僕以上に高鳴っているのが分かるが、覆い被さった僕を突き飛ばすわけでもなく、ただそのまま微動だにしなかった。

 そして震える声で僕の耳元にこう囁くのだ。


「……うん。そう、だよね。君も本当は怖いんだよね。……桐生さんがあんなことになって、それでも雪乃さんや優衣ちゃんを助けようとして……。格好良いよ、楠木君」


「…………」


 僕の頭を優しく撫でてくれる真琴。

 まるで僕を実の弟のように想って扱ってくれているつもりなのだろうが、すぐに僕は気付いて・・・・しまった・・・・

 一瞬だけ半ゾンビ化した影響なのか、五感が鋭く働いている。

 僕の嗅覚の反応――つまり、彼女からはメスの匂い・・・・・がした。

 真琴は男としての僕を求めている。それが手に取るように分かってしまう。

 ――高校生に欲情するとは、警察の風上にも置けない娼婦め。


「あっ……!」


 僕は彼女に抱き締められながら舌を突き出し、彼女の首筋を舐め上げる。

 そして舌先を上に這わせ右耳を甘噛みした。

 彼女は僕の背中を強く掴んだが、思わず爪を立てただけで抵抗する素振りは見せない。

 紗栄子が風呂に入っているのを気にしてか、甘い吐息が漏れないように精一杯唇を噛み締めるだけだ。

 そのまま頬にキスをする。

 そして少しだけ顔を離して、彼女と目を合わせた。

 真琴の潤んだ瞳が僕の姿を映し出す。


「真琴さん……。キス、しても良いですか?」


「…………うん」


 こくりと頷いた真琴は瞳を閉じ、真っ赤に染まった頬はわずかに熱を帯びていた。

 僕は顔を近付け、彼女の唇の感触を味わうようにそっと口づけをする。

 軽く唇同士を擦り上げただけで真琴は肩を大きく揺らし、頬からは一筋の涙が零れ落ちた。


「ん…………」


 僕はゆっくりと舌を突き出し、彼女の唇に侵入していく。

 呼吸を合わせるようにして、真琴も徐々に唇を開いていった。

 おずおずと彼女が伸ばした舌はかなりの熱を持っていて、僕の舌と■■した瞬間にそれが・・・始まった・・・・


「――――! ―――――!!」


 言葉にならない呻き声のようなものを上げそうになる彼女を、唇を塞ぐことでどうにか抑える。

 彼女自身、何が起きたのかまったく理解できていないのであろう。

 全身を包み込む快楽に一瞬だけビクンと身体を仰け反らせ、再び小刻みに震え出した。

 暴れ出す彼女を力で抑え込み、僕は彼女の口内を■■■■■。

 

「ま……さ、か…………! 楠木、君…………!!」


 再び身体を大きく仰け反らせた真琴は、次第に目から生気が抜けていくような表情に変わる。

 同じだ、この目――。

 明日葉と同じ、死人の目――。


 僕は彼女を強制的に立ち上がらせ、一階にある父と母の寝室に連れ込んだ。

 そしてドアに鍵を掛け、彼女をベッドに突き飛ばす。


「――色々と・・・教えてもらいますよ・・・・・・・・・真琴さん・・・・


「……あ…………あ…………う…………」



 ――呻くだけの彼女に、拒否権など存在しなかった。




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