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ゾンビ・パウダー  作者: 木原ゆう
倫理崩壊のファーストインフェクション
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Ethics collapse 2

 東京都豊島区池袋駅から徒歩二十分ほどの場所にある蓮常寺学園。

 そこに在学する僕こと楠木正一くすのきしょういちは今年の春で高校二年に進学した。

 父、母、妹と四人で小さな一軒家に住む僕には友達がいない。

 でも特になにかに不自由したこともなければ、いじめに遭っているわけでもなく、日々平穏な暮らしを送っていた。


 隣に住む岸村家とは長い付き合いがあり、そこの一人娘である岸村優衣きしむらゆいとは幼馴染だ。

 僕より歳は二つ上の、都内にある大学に通う一年生の彼女は今日も元気に僕に挨拶をしてくる。


「おはよう、正一君。昨日は随分遅くまで部屋の電気が点いてたけど、また夜更し?」


 家の玄関先で出会ったが早々、大欠伸をした僕を気にかけてくれる優衣。

 しかしお互いの部屋が二階同士だからとはいえ、他人の生活リズムにまで口出しをしてくるのはあまり気持ちの良いものではない。


「……放っておいてよ、優衣さん。僕だってやることが色々とあるんだから」


 ふと昨日のウイルスの件を相談しようかと頭をよぎったが、彼女はあまりパソコンの知識がない。

 普段からネットをしない彼女は、日々の情報のそのほとんどをテレビや新聞から得ているらしい。

 今時パソコンを持っていないことも珍しいのだが、アイフォンを持っているにも関わらず電話やLINE以外は使用しないということも僕には信じられないことだった。


「ふーん、やること……ねぇ。どうせ夜遅くまでゲームでもやっていたんでしょう? 正一君も来年はもう受験なんだから、あまり遊んでばっかりいたら駄目だよ?」


 腰に手を当て、溜息ついでにそう言う優衣を適当にやり過ごし、僕は学校に向かう。

 僕を心配して言ってくれているのだろうが、それは大きなお世話だ。

 小さい頃は妹と三人でよく一緒に遊んだものだが、最近はほぼ疎遠になってしまった。

 こうやって朝の挨拶をする以外に会話は無く、でもそれが却って僕には気が楽というものだった。


 ――僕には友人も、幼馴染も、恋人すらも必要ない。


 優衣に恋人がいるかどうかも知らないし、特に興味があるわけでもない。

 ただの腐れ縁の幼馴染。それ以上でもそれ以下でもなかった。


 雲の隙間から零れる太陽の光に目を細め、僕は時計を確認し急ぎ足で学校へと向かった。




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