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ep.9 不穏な空気


 俺達はアリトスの街を出て、4日かけてナルバック王国領クルトスに到着する所だった。


「もうそろそろクルトスに到着だ! だが、この悪寒が走る様な感覚はなんだ?」


 エドガーは何か良からぬ気配を察知したのか、脂汗をひたいに浮かべていた。


「そうだねぇ、これは嫌な気が充満してるねぇ! まるでクルトスっていう街を覆い囲むかの様に妖気を感じるよ」


 晴明もエドガー同様に良からぬ気配を察知していたが、慣れているのか涼しい顔をしている。


「街に着いたらすぐに宿に入ろう! それから各自で補給を済ませ身体を休めてから後日出発にしよう」


 4日間の野宿と長距離の移動で疲れているだろう、旅は始まったばかりだから休める時には休んでおきたい。


「よっしゃー! クルトス着いたー!」


 小太郎は無邪気にはしゃいで居たが、エドガーと晴明は素直に喜べない様な表情をしていた。


「どうしたんだよ! クルトス着いたんだぜ? でも、なんだ? 人が街に全然居ないな」


 小太郎もやっと異変に気付いた様だった。


「あぁ、この街は少しおかしいな…… 昼なのに商店は閉まっているし、民家はポツポツと人の気配が感じられるが栄えてる街とは思えないほどに気配が薄い」


 俺たちは宿へと急いだ。


----


「すまない、7人分の部屋を用意して頂きたい」


 エドガーは宿の手配をする為にフロントでチェックインを済ませて居た。


「お前さん達、他所から来たのかい? 悪い事は言わないから今すぐこの街から出て行った方がいい! 今のこの街は危険過ぎる」


 年老いた宿の店主はエドガーに街を出て行く事を勧めている。


「私達はこの街で補給をしてから出て行くつもりだ、それで無ければ食料と水が底をついてしまう。私とエドガーは神都に、他の5名は子連れの上にタジキルニア連邦国に向かうのだ。予定は変えられない」


 クレルシュタインは強面の副団長というだけではなく、戦場にでは戦斧ハルバートを振り剛腕を見せつけつつ、作戦参謀として幾ばくの戦に勝って来たクロム鉄騎団の名軍師なのだ。

 彼の読みや頭のキレ、相手に対する交渉術には眼を見張るものがある。


「わかったよ…… そんな怖い顔で言われたら頷くしかないだろ。でも約束しておくれよ! 夜は建物から出ないでくれ! 巻き込まれるのはごめんだ」


 そこに居た全員が老人の言葉に反応したが、せっかく忠告してくれたのだ無下には出来ない。


「わかった! 恩にきる!」


 みんなに部屋が割り振られた。

 部屋は3部屋とれて、俺と小太郎、エドガーとクレルシュタイン、ルクレティアと晴明と小鬼、この部屋割りで決まった。


「やっとベッドで寝れるです! 馬車の荷台は硬てーんです! グッスリ寝れねーんです!」


 小鬼がはしゃいで居たが晴明がその姿に突っ込んだ。


「あんた、来た当初は布団じゃなきゃ寝られないって騒いでたじゃないか! いつからベッドが良くなったんだい? あとお前さんは荷台でもグッスリ寝てたよ」


 小鬼は突っ込まれて恥ずかしくなったのか晴明の胸に飛びついてバタバタしていた。


「とりあえず、みんな一回部屋に入ろう! 鎧を着ていても疲れるし、着替えて食事にしよう」


 俺も疲れが溜まっていた、軽金属とはいえ長時間鎧を居ていたら流石に身体が疲労してしまっていた。

 軽金属装備の俺と小太郎でもそうなのだ、重金属装備のエドガーとクレルシュタインの疲労は計り知れないだろう。


「私も十兵衛に賛成だ! 皆着替えを済ませて食堂に集まろう! 先程クレルが宿の主人に食事の手配も済ませていた」


 俺たちは一度みんな部屋に入った。


----


「うめぇー! 美味いけど質素だな! 下弦亭の飯が食いてぇなー!」


「文句言うなです! そんなに文句言うなら俺が貰うです! でも、俺も鍛冶屋でご主人が作ったご飯が食べてーです!」


 小太郎と小鬼は文句を言いながら飯を食っていた。


「それで、これからどうする?」


 そんな2人を尻目にエドガーは話を進めた。


「そうだねぇ、この街には最低でも2日は滞在するつもりだったからねぇ。この街の現状をまず調べないことにはねぇ」


 さすがの晴明も困り果てた様子だった。

 すると、奥から宿の主人が声をかけて来た。


「この街の現状を知りたいのかい?」


「そうです。やはりここで補給をしないと次の街まで持ちませんので! お爺さん! この街の事お教え下さい!」


 ルクレティアは必死に老人に訴えかけた。


「実はワシもこうなった理由を深くは知らないんじゃよ! すまんな」


 ルクレティアは愕然と肩を落とした。


「だが! あのお方ならもしくは! ハイデリッヒ辺境伯様なら何か知っているはず」


「誰ですか? そのハイデリッヒ辺境伯と言う人は」


 伯とついているから爵位を持っている人物に間違いはないのだが、俺は2年間もここモントデルニックで生活しているが、未だに貴族の身分制度に詳しくない。


「ハイデリッヒ辺境伯様は、ここクルトスの領主様じゃよ。なんでも国王様の血縁だとかで、大層な力を持っている人物という話じゃよ」


 王国での爵位は、王が1番上で次が公爵、その次が辺境伯に値するらしい。


「その人に聞けば何かわかるという事ですね?」


「たぶんじゃがな。お前さん達もこのままじゃ補給もままならないじゃろう。ハイデリッヒ様に掛け合うのも手かもしれないのう」


 とりあえずはこれからの目的が1つ確定された。

 俺とエドガーと晴明と絶鬼でハイデリッヒ辺境伯に会いに行く。

 小太郎とルクレティアとクレルシュタインと小鬼で、街で補給物資の調達と散策。


「とりあえず、二手に分かれましょう! 晴明、絶鬼を頼んだよ」


 晴明は一度頷いて人形の霊符を取り出した。


青龍(せいりゅう)白虎(びゃっこ)朱雀(すざく)玄武(げんぶ)勾陳(こうちん)帝台(ていたい)文王(ぶんおう)三台(さんたい)玉女(ぎょくにょ)、四獣、神人、星神、あんたら(あたし)に力貸しな! 出番だよ絶鬼 急急如律令」


 そう言った直後に人形の札を投げるとそこに大きな五芒星が出現し、その中から見覚えのある爽やかな青年が出てきた。


「お久しぶりです、皆さん」

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