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~戦が始まった!~

「全員陣の築き急げ!敵がいつ動くか分らないんだからな!!」

杏里さんの声が響く。

これが戦か・・・。何というか熱気がすごい。俺はびびらずに本当にやっていけるのか?

俺は思わず身震いしていると後ろから勇ましい声が上がった。

「翔、安心せい。この戦必ず勝つ。」

 そう、俺に不敵な笑みをかけてきたのは、今俺が使えている藍様だ。

「だと良いんですけどね・・・。」

 この人は何かと俺を試そうとしてくる。今回だってそうだ。俺を急に軍師として置き、急に策をねろって、どんな無茶ぶりですか。

 俺がぶつぶつしているのが面白いのか、藍様が笑いながら話しかけてきた。

「翔、お主漏らすなよ?」

「漏らしませんよ!!」

「ほう・・・。私にたてつくとは良い根性を持っておる。」

 やべ・・・。

 瞬間的に言葉がでちった。

「いや、そのようなことはござりません!誠に申し訳ありません!」

「よいよい。さてそろそろかな。」

「ん?何がですか?」

「まぁ、見ておれ。」

「はぁ。」

そういうと藍様は立ち上がり、味方の軍勢が広がる陣を見据えると、先ほどの俺を品定めするような不敵さは無くなり、一国を束ねる顔になった。

そうなんだよな。この人戦国大名なんだよな。何というか・・・。威厳があるな。

すると、側に杏里さんと阿部さん?のような人が近くまで来た。

「殿!」

「おお。阿部か。どうだ、陣は組めたか?」

「はは!割れたとおり速やかに行いましたが・・・。誠に本陣の数を少なさって良いのですか?」

 阿部さんはそう言いながら俺の方をチラチラと見てきた。

 気に何だろうな・・・。いや、どちらかというと疑いの目か?

 ま、そうなるか。だって得体も知れない小僧の戯言だと普通は思うもんな。

「あ、ども。」

 俺が軽く会釈すると、

「・・・ちっ・・・。」

 舌打ち!?

 確かに気にくわないだろうけど自分の殿の前でする?

「阿部、確かにお主は我が城の中でも私のちちのだいからつかえている故、戦場の数も多い。そのため翔の意見に賛同できぬのも分る。だがな、此奴の意見は私の意見だ。それを肝に銘じておけ。」

「ですが、御身に何かが起きるとも限らぬのでは。」

「くどい!そのような物。等に覚悟できとるは!阿部、お主も覚悟せい!!」

「ははぁ!殿が其処までの覚悟有るならばこの阿部もはや何も言いませぬ。しかし、これだけは言わせてくだされ。」

「よかろう。話せ。」

 藍様が許可をすると阿部さんは俺の方にきりっと向いた。

「小僧。」

「はい・・・。」

「殿の身に何か有れば分っておるな。」

「・・・はい!」

 俺は力強く答えた。

 元々其れがあっての作戦だ。それくらいの覚悟は出来てる。

 本音言えば今すぐにでも逃げ出したいんですけどね。

「そなたの覚悟つたわった。では殿を任せだぞ。」

 そして又藍様の方に向きなおすと、

「これにて我が部隊に戻ります!では!」

「うむ。杏里」

「は!」

 藍様は阿部さんが去ったと思ったら、杏里さんを呼びつけ何かこしょこしょ話を始めた。

 何を話してるんだ?

 あ、こっち見た。何その二人の相反する顔。一人は不敵な笑みを浮かべてもう一人はえー。みたいな顔してるんだけど・・・。もちろんえー。の方は杏里さん。

 嫌な予感が・・・。

「分りました・・・。藍様のお考えとあらば。」

「杏里辛いことを頼むかもしれんが任せたぞ。」

「はい。」

「さて、では戦を始めるとしようかなの。」

 いよいよか・・・。

「皆聞け!!此度の戦皆思うところがあるだろう!!だがこの戦を我らが勝利の二文字で迎えた暁には我らは又新たないっぽを踏む!!これは生半可な覚悟では踏めない一歩だ!!だが我らは必ず踏み出す!!其れを私は考えていた!!さぁ今こそ新たな世の幕開けよ!!皆の者新たな時代の味をかみしめろ!!ホラ貝をならせ!!戦の幕開けだ!!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 俺が今立っている地面が揺れるほどの雄叫びが響く。まるでその雄叫びは龍が威嚇するように、はたまた揺れは大ナマズが動いたように。

 すげえ。これが戦かぁ。

 うっしゃ!!俺も覚悟決めるぜ!!

 俺の心までもがさっきの藍様の一言で鼓舞された。そして俺がホラ貝の音を聞きながら戦場を見ていると隣から手を引っ張られた。

「来い。お前はこっちだ。」

 ひっぱていたのは杏里さんだった。

「いや、俺はこっちなんですけど。」

「駄目だ。一緒に来い。」

「だから、俺は藍様を守らないと。」

「ふっ。たかが小童が守るとか抜かすな。笑われるぞ。」

 いや、今笑っただろ。

「だから今動くと戦犯に。」

「ならない。なぜなら藍様がお前を私と行動をと見させろと命じられたからだ。」

「俺はそんなの聞いてない。」

「だって言ってないからな。私も先ほどきかされたし。」

「あ!」

 あのときか・・・。

「ほら行くぞ!」

「あ・・・ちょ・・・。」

 俺の事を杏里さんは自分の馬に乗せて自分の別働隊に合流させた。



「白井様!遅いじゃないですかい。」

「すまない。この男が無駄に粘るものだから手こずってな。」

「その前にちゃんと聞かせてくださいよ。何で俺は此所につれてこられたのですか?」

 俺は自分の不満を杏里さんに漏らした。すると帰ってきた言葉を聞いた俺はいかに自分が無力なのか思い知らされた。

「藍様はお前のことを思って、口にしたのだ。藍様はお前を試すような事をしていたが心の中ではお前の事を少しばかり考えていたのだ。だから察しろ。何故お前が此所にいるのか、何故藍様は一人でいるのか。」

 もう察してる。

 藍様はもしこの戦が負け策を出した俺がいつでも逃げられるようにここに置いたんだろう。それに俺がもし本陣まで攻められ戦うことになったら・・・。

 絶対に死んでいた。

 俺が無力だから・・・まだ藍様を守る責任。命をかけても良いほどの力を持っていないからだ。

 俺は・・・。

 どうすべきかは決まっていた。

「杏里さん。俺も部隊に加えてください。」

「な!?何を言うのだ!駄目に決まっている!」

 杏里さんは驚きながら言った。

「其処をどうにか!」

「駄目だ!そもそも此所の部隊はお前が言ったとおり全員馬に乗れる者で構成されている。お前は馬に乗れないだろう。」

「だから杏里さんにお願いしてるんです。」

「は?」

 まだ杏里さんは俺の意図が分らないようだ。驚いた顔をしている。

「杏里さんの馬の後ろに乗せて欲しいのです。」

「は!?何を言っている!其れこそ不可能だ!」

「お願いです!俺は無力だから、馬にも乗れないし、槍だって、弓矢も触れない。だから俺に出来る事を全力でするために力を貸して欲しいんです!この戦に勝つために!!」

「いや・・・。そうは言ってもな・・・。」

 もう一押し。

「脅す開けでは無いですが・・・。俺、ここにいても一人で敵陣乗り込むつもりなので乗せていただけなかったら確実に死にますよ?」

「それは駄目だ!藍様にはお前を死なせるなとここに置いているからな!」

「なら、お願いします。」

「うむ・・・。」

 杏里さんには酷な話だろう。

 だって残ったら死。乗せてもほぼ死。

 そんなの考えても考えきれない苦しい選択だろうな。

 悪いことをしたなとは思う。でも俺は此所でやらなきゃいけない気がするんだ。何か駄目な気がするんだ。

「ああもう!分った!てい!」

「いた!何するんですか!」

「乗れ。それはお前が死んだらわがままを言ったことを怒れないからな。其れの前払いだ。分っているな。この馬に乗った以上お前も武士だ。きちんと一人の男として命を掛けて働くんだぞ?」

「はい!」

 俺が喜んでいると、平野の方から男達の叫び声が聞こえた。

 いよいよだな。

 俺は前もって考えていた作戦を心にしまいながら覚悟を持った。

「もうすぐ私たちもでる。早く乗れ!」

「分りました。」

 二発の銃声が連続で音響いた。

 俺がやるはずだった杏里さんの部隊の突撃合図だ。

 せかす杏里さんの言うとおりに俺は杏里さんの馬に乗ると、馬は走り始め杏里さんは森を抜けると自ら名乗りを上げた。

「我が名は白井杏里!有馬家の一番槍だ!!貴様らの大将の首!もらい受ける!!者どもかかれ!!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 怒号が響き渡る。

 杏里さんの部隊の人たちが士気を上げ武勲を上げようと大声を出したんだ。

 俺は森を出て敵衆に入る寸前、敵の陣営を見たが俺の思惑通り今突撃している右側は開けていて、敵部隊は競って俺らの方に急いで向き直った。だが、馬のスピードに人が追いつけるはずも無く俺達は敵の本陣めがけて突っ込んだ。

 何とか策が成功して良かったぁ。

 そう安堵する俺の目に血が飛び散ることでまだ戦のさなかだと言うことを思い知った。

 そんな俺の胸中を知ったのか杏里さんは前で槍を振るいながら後ろにいる俺に声を掛ける。

「翔!!まだ落ち着くには早いぞ!!さぁ、お前も後ろで刀を振れ!!」

「は・・・はい!!」

 人を俺は切るのか・・・。

 心のこもっていない俺の刀は敵を着ること無く空振りを連発する。杏里さんは前で槍で無想してる。

 本当にこの人は強いんだな。でも俺は・・・。人を切れるのか・・・?

 その頃周りの味方は

「さすが、白井様だ・・・。」

「おい、続くぞ!」

「おお!!」

 そんなやりとりが聞こえる。

 このまま順調にいってくれたら良いんだけどな・・・。

 「ぐふあ!」

  俺達は順調に本陣まで迫った。だが其処では親衛隊と思わしき人物が自慢の大槍を振るって先に前にいた味方を馬ごとかっさばいている。

 何だよあの力。チートじゃねえか!?

「杏里さん!!」

「分っている!捕まっていろ!!」

 俺は本能的に杏里さんの名前を呼んだ。なぜなら今対抗出来る人物は杏里さんしかいないと思ったからだ。

 杏里さんも同じ考えらしく、槍の人に突っ込んでいく。

「我が名は白井 杏里!!いざ、刃状に勝負!!」

「相手が有馬家切手の槍使いであらば文句なし!!今井 元の助受けて立つ!!はぁああああああああああああああああ!!」

「はぁああああああああああああああああああああああ!!」

 二人の武士がそれぞれの気を発しながらその一太刀に全てを掛けて掛けだした。

 カキーン!!

 一筋の鋭い音が鳴り今井と声を上げた者の首が吹っ飛んだ。

 杏里さんが勝ったんだ。でも、

 うぐ・・・。

「おえええええ。」

 俺は初めて見る生首死体をみてはいてしまった。

 こんなのがそこら中で。

 そんな俺を心配してるのか、

「大丈夫か翔?」

「がはっ。・・・はい。もう大丈夫です。」

「そうか。もう少しで敵の大将の首だ。覚悟を決めろ!!」

「はい!」

 覚悟なんてそう簡単には決まらないがこのときの俺は心のどこかでこの状況を懐かしんでいるようにも思えた。

「杏里様!あそこにいるのが大将です!」

「分った!!」

 そうしているうちに敵の陣に俺と杏里さん、他二名がたどり着き目の前には刀を構える俺くらいの女の子と、大将がいた。

「良くここまで来たな。」

 そう発言する男こそが敵の大将、兵藤 玄内だ。

 でけえ。こんなの倒せるのかよ。

 そんな風に思うほどの大男な感じなんだ。

「我は白井杏里!貴様の首をもらい受ける!!」

 杏里さんは俺みたいに臆すること無く目の前の人に槍を向けそう口にした。

 すると男は、

「くくく・・・。あははははは!!」

 笑い始めた。

「っ・・・!」

 俺含めて杏里さんや側の女の子もびくりとしていた。

「落ち着けお前ら。儂はおかしくなったわけでは無い。やっと死ねると思い嬉しく思い笑ったのだ。」

 何を言ってるんだ?

「儂はこの戦乱の世になる前から生き、そして疲れたのだ。だからこうして死ねることは本望。さぁこの首喜んで差し出す。さぁ殺せ!!」

 この男は、本当に何を言ってるんだ?

「ならば、その命もらい受ける!ごめん!」

 そう言いながら杏里さんは槍を振りかぶる。

 だがその時女のこが飛び出した。主君を守るために。そしてもう一人、

「待て!!」

「っ・・・!?」

 俺だ。でも俺はそのことは違う意味で飛び出した。だって怒ってるから。

「じじい!!」

「ほう、儂のことをじじい呼ばわりとは。」

「余裕ぶってんじゃねえ!!まぁそんなことはどうでも良い。其れよりも何だ死にたいって。其れは本当にお前の本心か?!」

「うむ。」

「なぜだ!!」

「先ほど答えたとおりだ。」

「ぐっ!」

 クソ野郎が!

「翔!どけ!!」

 杏里さんが言ってきたがどかない。

「駄目だ!」

「しょ・・・!・・・。」

 俺の名を呼ぼうとして言葉が止まった。何故止まったかは今考えている余裕は俺には無い。

「じじい!お前に聞きたい!!お前にとって部下は何だ!!」

「何故聞く?」

「いいから答えろ!!」

「・・・守るべき者達だ。」

「そうか。其処の女!」

「・・・!」

 女の子はびくっとして俺を見上げる。

「お前にとってこの人は何だ!?」

「・・・・。守るべき者・・・です。」

 女の子は迷いながらでも覚悟を持って言った。

「じじい!聞いたか!?お前の部下はお前の中に死にたっていう願望があるとは知らずにお前を守ろうとして死んでるんだよ!!愛する者が帰りを待っている者達を悲しませても、死にたくなくてもあんたのために死んでるんだよ!!なのに何だ!あんたは死にたいって、あんたの命はあんただけの者じゃ無い!!部下も国も民も全部がお前の命なんだよ!!なのにあんたは勝手に死にたいとか言いながら他の命を巻き込むな!!本当に死にたいならかって死んでろ!!」

 俺は頭にきていた。だってさっきの死んだ人もこの人のために死んだのにこんなのはあんまりだ。

「さっきから聞いておれば調子に乗るなよ小僧!!儂と手死にたくは無いわ!」

「なら何で勝手に諦める!!」

「この世がそうさせるのだ!弱気者が強き者に虐げられる!儂はその理なくすために戦った。だが気づいてしまったのだ。優しさでは変えられぬ。変えられる者は魔王のような残忍な者で無い限りとな!!だからもう儂は終わりなのだ!心が死んでおるからな!だがお主達はまだ見たところ若い。きっとお主らならこの世を生き延びられる。だったら儂の首をかてにせい!!」

 この男もこの戦国時代の被害者なんだ。守りたいけど力が無い。だから諦めた。藍様は諦めなかったがこの男はこころでもう負けていたんだ。でも、

「だまれ!!後は藍様の前でいえ!杏里さん捕まえましょう!」

「お前は何を言ってるんだ!?」

「捕まえるんですよ。この人はきっと藍様にとっても惜しい人になる。だって民のことを考えているから怯えている其処の女の子をかばうように立っているんですから。」

「だが、」

 渋る杏里さん。だが今は戦中時間は待ってはくれない。

「杏里様!敵がこちらに来ます!!早くご決断を!」

「どうするか・・・。」

「杏里さん!!」

「杏里様!」

「あああんもう!!どうなっても知らんからな!」

 そう言うと杏里さんは行動に動いた。


「聞け!!兵藤の者よ!!ここにいるのは兵藤そのものだ!!兵藤殿は引っ捕らえた!!さぁ武器を下ろせ!!私たち有馬家の勝利だ!!」

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 と遠くの方から雄叫びが聞こえてくる。やっと終わったか・・・。

 その後女の子と兵藤は藍様の前に連れて行かれるために先につれていかれる去り際に、

「小僧。死ぬなよ。例え何があっても。」

俺にいってきた。そして俺は聞こえるか分らないが、言った。

「ああ。俺ははなっから死ぬ気なんて無い。それと守りたい者は必ず守ってみせる。」

 そう俺は言った。

 するとすこし笑った声が聞こえたのは気のせいなのかな。

 さて、こうして俺の初めての戦は終わった。でももうひとつ小さな鬼との戦い。

「翔!!家に帰ったら覚えていろよ!!さっきは勝手にして!!家に帰ったら説教だ!説教!!」

「はい・・・。」

 はぁ憂鬱だ。戦に勝ったのに説教とやだな。

「さぁ帰るぞ!!」

「はい。」

 そうして俺達は藍様の元に、家に帰った。



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