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僕が歌う君の歌  作者: 岬ツカサ
三章 失ったものと取り戻したもの
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告白をするっていう事

 幼稚園の時の事を響も覚えていて、それでいつか私に聴かせようとして練習していたのかな。いつからだろう、きっとずっと前からだ。練習して、上手になって、きっと聴かせようとしてくれた事もあったはずだ。

 でも、自信が持てなくて、また練習。

 そんな不器用な響の姿は、容易に想像できた。

「うわ――!」

 想像して、声が出た。

 なんだろうそれ、嬉しすぎる。ジタバタと足をもがかせる。

 響の性格も、その歌を褒めたのがどれほど昔の事かも、全て知っている。

 自分の好きな歌を歌う人が、自分の為だけに歌う練習をしていた。そんな幸せがあっていいのだろうか。

 布団に潜りこみ、響の事を考えた。

 いつから練習していたんだろう。

 練習して、満足したらどうするんだろう。

 聴かせてくれるのかな。

 私の為に歌ってくれるのかな。

 そんな事を考えて、自然とにやけている自分に気が付いた。

「あぁ、駄目だ、こんなの」

 翌日から、私の中で確かに響と圭介との間に線引きがされていた。

 圭介は大切な親友。

 響は――好きな人。

 これが私の初恋の始まりだった。


 響の事を好きだと自覚してからは三人で遊ぶ時にも、自然と響をよく見るようになっていて何をするにも響を意識するようになっていた。圭介は私の様子が『響を成長させる為』のものに見えたらしく、圭介も響に何かをする時には響を中心に置くようになっていた。

 そんな関係がしばらく続いて、圭介がタイムカプセルの提案をした。

 タイムカプセルは響への気持ちを形にする絶好の機会だと思った。

 私の気持ちを響に伝えたい。

 気持ちを伝えるなら歌だ。そう思って、いつものやり方じゃ駄目だと思った。

 だって私の歌には歌詞がない。喜怒哀楽はいくらでも表現できるけど、響への繊細な感情を完璧に伝えるのは難しい。でも、どうやって歌詞を作ったらいいかなんて分からなかった。

 私は迷わずに圭介に相談した。

 困った時にはいつもそうしていたから。

『タイムカプセルに響への気持ちを歌にして残したい。でも歌詞の作り方が分からないから手伝って欲しい』

 圭介にそう伝えると快く協力してくれた。

 そして圭介と二人で曲を作ることになった。溢れ出てくる旋律をまとめて、それに合わせて歌詞を作る。歌詞を作っておいてそこから曲を作るやり方もあるみたいだったけど、私には前者のやり方の方があっていた。

 歌詞を作るのには凄く時間がかかった。

 でも、時間に見合った出来になったと思う。

 圭介も満足そうにしていて、完成した歌を聴いてくれた時には「歌音の歌は聞いてて心地良いよ」と言ってくれた。

 圭介が歌を褒めてくれるのは初めての事で嬉しくなったのを覚えている。そのせいか、タイムカプセルにカセットを入れるだけのつもりだったんだけど、違う気持ちが浮かんできた。


 ――響に直接この歌を聴いてほしい。


 それはつまり、告白をするっていう事だった。


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