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僕が歌う君の歌  作者: 岬ツカサ
二章 変わらない二人と譲れないもの
16/25

響の真実

――※※※――


 響くんと付き合う事は、想像してたよりも辛くて苦しくて、幸せだった。

 初めてのデート、図書館を選んだのは不安だったけど、喜んでくれたと思う。

 でもなんで、よりにもよって、『初恋』なんて渡してしまったのか。響くんに読んで欲しいという気持ちは確かにあったけど、すぐに後悔に変わってしまった。

 自分がどれだけお人好しなんだと思う。

 でも、あの本は私の為の本でもあるから。だから、読んで欲しいと思ってしまったのかも知れない。私の初恋だって、響くんの初恋と同じく、尊いもののはずだから。

 もしもそれが、響くんの精神疾患が原因だとしても、すがりつきたかった。

 精神疾患だなんて、本当にそうかは分からない。でも、私は医者の娘として少しの知識は持っている。その知識から、響くんと歌音ちゃんの関係について、一つの仮説を立てていた。


 響くんは、歌音ちゃんへの恋愛感情だけが抜け落ちてしまっている。


 誰かへの感情を失くしてしまう事は稀だけど、うちに来院する患者さんの中にも、そういった症状の人はいる。

 例えば、慢性的なDVを受けた女性は、男性に恐怖を覚える事が多い。だけどまれに、相手男性への恐怖心が欠落する場合がある。

 恋愛感情が失われている原因は分からない。でも、そんな状態で私の事を好きになってと言っても無駄な事も分かっていた。感情は、抜け落ちてしまっているだけで、心の中では積もっていくから。

 例えば、その原因がなくなった時、響くんは歌音ちゃんをどれだけ愛しているかに気が付くだろう。そうなってしまえば、私への感情なんて、一瞬で吹き飛んでしまうはずだ。

 それこそ、『なんで初日なんかと付き合っていたんだろう』なんて風に思われてしまってもおかしくない。でも、今更そんな事で悩んでいても仕方がない。そんなのは、告白する前から分かっていた事だから。

 あの本は幼馴染への気持ちに気が付かない男の子が主人公だ。もしかしたら響くんが自分の気持ちに気付くきっかけになってしまうかも知れない。そう考えると不安だけど……気付いた上で私を選んでくれたら、なんて希望を持ってしまっていた。


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