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僕が歌う君の歌  作者: 岬ツカサ
二章 変わらない二人と譲れないもの
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分からない態度

 次の日、いつもの様に歌音と一緒に登校していた。

 僕と初日が付き合うことになってから数日が経ったけど、歌音の態度はいつもと変わらないように見える。

「歌音、昨日は何をしてたの?」

 自転車を駐輪場に止めてすぐ、歌音に聞いてみた。

〈家でアルバム見てた。最近、ちょくちょく見てる〉

「アルバム? そっか、懐かしいね」

 ふと、圭介の事が頭をよぎった。なぜか気まずくなってしまい、それ以上話を広げられなかった。

 歌音も、僕の事がきっかけで圭介の事を思い出していたのかな。

「響くん、歌音ちゃん、おはよ!」

 そんな事を考えながら昇降口に入ると、下駄箱の前で初日に声をかけられた。

「おはよ」

 歌音も手を振って答える。

「本……読んだ?」

「ごめん、まだ読めてない。ていうか、昨日貰ったんだからまだでしょ」

 初日からの質問に思ったまま答えると、初日は苦笑いを浮かべながら「そっか」と言うだけだった。そんなに早く読んで欲しいのだろうか。でも、初日の様子を見ていると読んで欲しいっていうだけには見えなかった。

 なんていうか、見られてはいけない物を見たか確認するかの様な……初日からプレゼントしてくれたんだからそんなはずないんだけど、初日の様子が気になった。

「早めに読んでみるよ」

「……うん」

 初日の返事はやっぱり短くて、期待と不安が入り混じっている様な感じだった。

 そんな風に会話をしていたら、教室に着いていた。入口近くの席に初日は座って、僕達に小さく手を振った。

 僕と歌音も自分の席に着く。

 僕は歌音が怒っていないか不安だった。初日と話している間、歌音は会話に入れなくなってしまうから。

〈本って、何の話?〉

 席に着いてすぐ、イヤホンからメッセージが読まれた。

「昨日図書館に行ってさ、初日も本が好きだったみたいで――」

 僕が昨日あった事を話すと、歌音は頷きながら聞いてくれた。特に嫉妬をしている様には見えなくて、僕はそれが気になってしまう。

 やっぱり僕は、歌音の事が好きなのだろうか。

 でも、やっぱりそれは分からない。

 胸が締め付けられたり、ドキドキしたり、手を繋ぎたいと思ったり、そういう感情とか欲求が湧いてこない。

 初日と付き合えば何かが変わるかと思っていたけど、何も変わっていない様に感じていた。


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