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僕が歌う君の歌  作者: 岬ツカサ
一章 分からない気持ち、届かない声
12/25

アルバム

 家に帰ってからの事はあまり覚えていないけど、普通にご飯も食べてお風呂にも入ったと思う。気付いたらベッドの上でアルバムを見ていた。

 写真の中で、私たちは本当にいつも一緒だった。ほとんどの写真が三人一緒に写っていた。

 卒園式、入学式、運動会、合唱コンクール、水泳大会。イベントの時はもちろん、遊んでいたりだとかご飯を食べていたりだとか、日常の写真の中でも三人一緒で写っていた。圭介は一つ年上だから、自分に関係ないイベントもあったと思うのに……。

 そうだ、あの時の写真――三人でタイムカプセルを埋めた時のポラロイドで撮った写真は……。

 探してみたけど、アルバムの中にはなかった。どこにしまったんだっけ、ここにないならタイムカプセルの中かな? その場で一緒に埋めるって話になったんだっけ。

 響は、タイムカプセルの事覚えてるのかな。いや、いまさら覚えてない方がいいのかも。

 そっか、あの写真三人で撮った最後の写真になるのか。響も圭介も、どんな表情をしていたんだろう。見たかったな。

 残念に思いながらページをめくると、圭介がアップで写っていた。

 写真の中の圭介はニカッと、いつもの笑顔で、その笑顔を見ていたら無性に圭介の言葉が欲しくなった。

 いつでも前向きな言葉をくれた圭介。自分のせいで失ったというのに、今さらになって欲しがるのは我がままかな。


 ――ねぇ圭介、いつになったら私の声は出るようになる?


 写真の中の、今となっては随分年下の圭介にそんな事を問いかける。

 もちろん、返事は返ってこない。

 なんで返事をくれないのと怒りたいけど、自分も似たようなものかと思うと怒る気にもなれなかった。

 ページをめくっていくと、ぱったりと圭介がいなくなった。

 写っているのは響と私の二人だけだ。

 中学の入学式の写真、制服を着て校門を背に二人並んで写っている写真があった。二人の距離は少し離れていて、まるでその隙間に圭介が来るのを待っているように見えた。そんな事、まるで考えていなかったのに。

 圭介が写らなくなってから写真の枚数は少なくなり、イベントの時に数枚撮ってあるだけだった。

 アルバムを最後まで見終わって、また最初のページに戻る。


 あの、三人で過ごした日々に戻れたらいいのに。

 少し濡れた枕を抱き締めながら、そんな事をぼんやりと考えていた。


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