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僕が歌う君の歌  作者: 岬ツカサ
一章 分からない気持ち、届かない声
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届かない声

 叶ちゃんの登場には戸惑ったけど、幸運だとも思っていた。多分、叶ちゃんが響を好きになったのは中学の時からだ。それでも、私がいたから告白はしないでいた。

 同じ高校になって、私たちの事を一年かけて見ていて、私たちの距離感を感じ取って、やっと告白する決心をしたんだと思う。

 きっと、響の為に告白してくれたはず。


 響がラブレターをもらった時、「そんな手紙破り捨てて。呼び出された場所に行ってほしくない。ずっと私の傍に居て欲しい」


 そう思った。

 それでも私は、ラブレターに書かれた名前を確認して、仕方がないかなと思ってしまっていた。

 叶ちゃんだから許せるってわけじゃないけど、他の人だったら反対していたと思う。

 でも叶ちゃんだったら、響を一途に愛してくれそうだったから。応援は出来なくても、自分の都合で響の選択肢を減らす事は出来ないと思った。

〈行ってきなよ〉

 響にそう言うのは辛かったけど、大丈夫。言葉に出さないでいいんだから。携帯でなら、嘘なんていくらでもつける。

 案の定、響は私の気持ちを疑ったりしなかった。響は戸惑いながらも、自転車を漕ぎ始めた。

 しばらく見送って、不意に景色が歪んだ。

 いつの間にか涙が溢れていて、足はすがる様に響の方へ数歩進んでいた。

 叶ちゃんのもとに向かう背中に、音の出ない声で何度も名前を呼んだ。


 もちろん、響に届くことはなかった。


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