第1話 ⑧
お昼をエリザと食べて、午後2時が過ぎようとしていた。
妹は先に食べたようだ。エリザはリビングのテレビをマジマジと見ている。
「あのさ、母さん」
「ん~?なによ?」
雑誌を読んでいる母親に問いかける。
「ちょっと異次元の門について聞きたい事があるんだけど」
「異次元の門……?ああ、あの門の事ね」
「こっちの世界出身の父さんは潜れたの?」
「全然ダメ、潜るどころか見ることさえ出来なかったわね~」
此方側の世界の人間には視認すらできないのか。
「じゃあ母さんがあちら側の世界の人間で、
父さんは此方側の人間なら俺や遥は門を潜れるのか?」
「それは私も気になっていた」
エリザも疑問に思っていたらしい。…………本当だろうか?
話を戻して母さんの昔話が本当だとすると、
俺と遥は2つの世界の人間のハーフだ。
この場合、異次元の門は俺たち兄妹をどうやって処理するのか。
「さあ?見せた事は無いし、行かせた事もないからわからないわよ」
「じゃあ母さんの…
お婆ちゃんやお爺ちゃんにはずっと顔を会わせてないのか?」
「あー、そんなの私に居ないわよ 多分モンスターに殺されちゃったわ」
…………話がえらい重くなってしまった。
エリザでさえ俯き、黙っている。
「でも気にしてなんか無いわね、
ハナコ婆様が私のお母さんみたいなものだったし」
「気になるなら今度エリザちゃんに案内してもらっていってらっしゃ~い」
……軽ッ!
「では、今度帰る時にユーシャを連れて行ってみてもいいだろうか?」
「全然オッケ~☆」
ん?
「ま、待て…行きたいとは一言も」
「安心しろ……私が付いている以上、なにも心配は要らない」
「違…」
「姉上にも会わせたかったし丁度いいな!」
……どうやら俺は、墓穴を掘ってしまったようだ。
行かないという選択肢は諦めて、
飲み物を取りに冷蔵庫に向かうとインターホンが鳴った。
「む、どうやら私の荷物が来たようだな」
喉を潤わせてエリザと共に玄関に向かい扉を開けると……
「こんにちは、オーク引越しセンターです」
「うぉわぁ!?」
オ、オークだ……。
ゲームや漫画のようなオークが作業服を着て立っている。
じゃあ半信半疑だったあちら側の世界は本当に……!?
「わざわざ来て貰って済まないな」
「いえいえ、仕事ですので……。
それより下着が飛び出していたのですが、
これはあなたの下着でしょうか?」
オークが前に出した手…なのかどうかはわからないが、
そこには無地のパンツがあった。
「くっ…殺せ」
「ははは、ご冗談を…とりあえず荷物をお部屋まで運びますね」
そう告げると、オーク達が家の中にのそのそと入っていく。
どうか妹と鉢合わせしませんように……と心の底から願う俺であった。