第1話 ⑦
「こ、ここが私の部屋……」
俺の予感は見事に的中した。
今日からエリザは我が家で、この部屋で寝泊まりをする。
これは健全な男子高校生にとっては……非常にまずい。
ましてやこんな美少女と同じ屋根の下だなんて……。
「とても気に入った!」
エリザは俺の隣の空き部屋に住むことになった。
数日前から母さんが掃除していたのはこういう事だったのか。
ちなみにベッド、タンス、姿見の鏡しかない。
特に変わった所が見られず至って普通の部屋だ。
「気に入ってくれて嬉しいけど、日用品とかは大丈夫なのか?」
「その件については安心してほしい、午後に荷物が届く」
「アンアハンから?」
「そうだ」
…………どうやって?あっちの世界に引越し業者はいるのか?
いや、そもそも異次元の門はそんな簡単に潜っていい場所なのだろうか。
母さんはしょっちゅう此方側の世界に遊びに来てたらしいけど、
あちらの世界だと此方側の世界は結構有名なのだろうか?
……やはり、考えれば考えるほど謎が深まるばかりである。
「ユーシャ…おい、ユーシャ」
「あ、ごめん……少し考え事してた」
「ユーシャの部屋を見てみたいのだが、見に行ってもいいか?」
……俺の部屋か。
一応見られたらまずいものは毎日欠かさず避難させてある。
なぜかというと、母親が俺の部屋を勝手に掃除するからだ。
「面白いものとかは特に無いぞ?」
「構わん、ユーシャの部屋が見たいのだ」
「……わかった、じゃー隣にある俺の部屋へ行こうか」
エリザの部屋から出て廊下に出ると、
誰かがスマートフォンを弄りながら階段を上がってきた。
「…………」
「よう」
「……何?」
波間 遥。俺の妹だ。
髪の色は中学生なのに金髪で、化粧も多少している。
学校で注意されているらしいがまったく直さないらしい。
そんなことで今年の受験は大丈夫なのだろうか。
なぜ俺の名前が勇者で妹が普通の名前なのかは聞いていない。
まあ、聞いた所でどうせくだらないだろうし。
妹は冷めた目でこちらを見てくる。
「今日からここに住むエリザさんだ」
「君がユーシャの妹さんか…初めまして、エリザだ」
エリザが俺より前に出て、妹に握手を求めると
「よろしくお願いします」
と、一言言うと差し出したエリザの右腕をスルーし、
興味なさげに部屋へ入っていった。
「……ごめん、ああいうのがデフォな妹なんだ」
「いや、気にしないでくれ。
妹さんも突然私がやってきて困惑しているのだろう」
……あの無愛想な妹が果たして困惑なんてするのだろうか。
「エリザちゃ~ん!お昼ご飯にパン買ってきたわよ~!」
下の階から母さんの声が聞こえてくる。
「……だそうだ」
「む、仕方ないな…ユーシャの部屋はまた今度に見せてもらおう」
お腹の空いた2人は、階段を降りて行った。