第1話 ⑥
「ここがユーシャの家……!」
普通の一軒家だから。
だからそんなに目を輝かせないで。
「さあ、上がってくれ」
「し、失礼する」
エリザが我が家の玄関から中に入り、靴を脱いで中に入った。
「靴を脱げばいいのだろう?私は知っているぞ」
日本では普通の事をエリザは得意気に俺に話す。
なぜ得意気なのかはわからない……。
「こっち来て、リビングに案内するよ」
そしてリビングに向かい、
扉を開けて中に入ると母親が雑誌を読んでいた。
「あ、おかえり…や~ん!初めましてエリザちゃ~ん!!」
「初めまして、エリザ・ワスポールです!」
「よくここまで来れたわね~、ユーシャは役に立った?」
「わ、私の為に道案内をしてくれました」
おい、顔を赤くするな。
「母さん……どうしてエリザの事、何も言ってくれなかったの?」
「ごめんね~お母さんドジだからうっかり忘れちゃってて☆」
うっかり忘れちゃってて☆じゃ済まないよ。
エリザ一人で帰ってたら今頃途方に暮れてる所だったじゃないか。
「いえ、どうかお気になさらずに……あとこれを」
「お手紙…あら?ハナコ婆様からじゃない」
母さんが封筒のようなものに入っていた手紙を読み始めた。
「はあ……母さん、ちゃんと説明してくれるよね?」
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俺とエリザで母さんから話を聞き、
結果から言わせて貰うと……
あまりにも非現実すぎて自分はまったく受け入れられなかった。
まず母さんはエリザと同じあちら側の世界のアンアハンという国の出身だ。
しかし母さんには魔法の才能も剣を振るう力も無かったので、
雑貨屋として毎日働いていた。
誰でもなれる村人ですらなれず、職業としての才能は皆無だったとの事。
ある日の事、ハナコ婆様から異世界…此方側に繋がる門について話を聞き
こっそり目を盗んではこちらの世界にやってきて遊んでいたとか。
…………おい、もっと厳重に警備しておけよ。
エリザと同じくハナコ婆様から、
奇妙な国の伝統や言葉はよく聞かされていたので本人曰く、
あまり苦労はしなかったらしい。
そしてこちらの世界で偶然出会って恋に落ちたのがうちの父親で、
2人はお付き合いを始め、めでたく結婚をした。
その子供が俺と妹である。
「グズッ……いい話だなぁ……」
……エリザは泣いていた。
「母さん……そんな大事な話をなんで今まで黙ってたの!?」
「だって言う必要ないでしょ?わたし冒険者とか1回もやったことないしー」
「あ!そんなことよりユーシャ」
とても重大な事を"そんなこと"で片付けられた……。
「今日からエリザちゃんここに住むから、
エリザちゃんのお部屋を一緒に見て来なさい」