第2話 ④
「エリザさんって、好きな食べ物とかあるんスか?」
だらしなさそうなニヤけ顔で、明宏は質問を投げる。
今は昼休みであり、俺と明宏とエリザの3人で昼食を取っていた。
一緒に食べないか?と大勢の生徒にエリザは誘われていたが、
なんと俺と明宏と一緒に食べるからまた今度に頼む、と全て断ったのだ。
……なので少々周りからの視線が痛い。
「好きな食べ物か……。
やはり私の故郷に生息している斑骨豚だな」
「へえー、聞いたこと無いな~、な?ゆぅーしゃっ!」
コイツの喋り方がいつもより2割増しで気持ち悪いのは置いといて、
明宏が聞いたこと無い、というのは当たり前だ。
なにせエリザは異世界からやってきた住人なのだから……。
「おいしいのか?……そのー、斑骨豚?ていうのは」
「全身が黒く白い骨の斑模様がある中型から大型の豚だ。
白竜芋を食べて育った斑骨豚は、脂が乗っていて非常に美味だぞ」
エリザはうちの母さんが作った弁当を美味しそうに食べる。
ごくん、と食べ物を飲み込みこちらを見た。
「ユーシャが訪れた際には、私にご馳走させてくれ」
「……くぅぅううう!ユーシャが羨ましすぎる……!!」
エリザがおいしいと言うのだから、きっとおいしいのだろう。
しかし斑骨豚に白龍芋……聞いたことの無い単語が次々と出てくるな。
斑骨豚は可愛らしい見た目で想像できるが、白竜芋ってのはなんだ?
空飛ぶ芋なのか、それとも竜のように大きいだけなのか。
…………両方もありえる。
などと考えているとエリザが口を開き喋り始めた。
「アキヒロとユーシャは昔からの友と聞いた。
昔のユーシャはどんな風だったのだ?」
「昔のユーシャっすか?そうっすね~……」
「おい、俺の話は別にしなくていいだろ」
「まあまあユーシャ……教えてやろうぜ……?
俺とユーシャの、壮大な過去って奴をよ……」
明宏が手を頬に当て肘を付き、明後日の方向を見つめる。
これで本人はカッコつけているつもりなのだろうか。
「……浸っている所を悪いが、そんな過去は俺達に無いからな」
「お前!エリザちゃんにかっこいい所を見せるチャンスだろ!?」
無いものはないのだ。自分で作った架空の武勇伝ほど、悲しい物はない。
こんなしょうもない会話をしていると、エリザがこちらを向いて微笑む。
「2人は本当に仲が良いのだな」
そんなエリザの顔を見て、
ちょっとだけ俺の心臓の鼓動が速くなるのを感じた。