第2話 ②
遅刻しそうになりながらも、俺とエリザは学校へ向かっていた。
理由はエリザが半寝坊をしたせい。
「さっきは本当にすまない……」
「だから気にしないでいいって、
今日の帰りにエリザ用の目覚まし時計でも買いに行こうか」
「ユーシャ……恩に着る!」
少し早歩きをして歩いていると、後ろから大きな声がした。
「ユウウウウウウシャアアアアアア!!!」
「敵か!?」
違う。この声は明宏だ。
後ろからすごい形相で俺達に走り迫って来る。
「お前……、お前がどうしてエリザさんと登校を……!?」
厄介な奴が出てきたな。
ここではぐらかしたら後々面倒なので必死に考える……。
「えっと、話すと長くなるんだが」
「一緒に住んでいるからに決まっているだろう?」
…………。
空気が凍り、明宏が口を開けたまま観葉植物のように静止する。
「エリザ……少しだけ黙っててくれ」
「ん?私はなにか間違えたか?」
エリザからしたら同居は普通の事なのだろう。
「おおおおおお、お前!!エリザさんと住んでいるのか!?」
「ああ、少し事情があって…」
「どんな事情があればこんな美少女と一緒に住めるんだよ!?」
御尤もである。
「あー……俺の母さんがエリザのお婆さんと親戚なんだよ。
だから愛高を卒業するまでうちに世話になるんだってさ」
……嘘は付いてないよな。
ハナコ婆様という人と母さんは知り合いと言っていたし。
「クラスは一緒、席も隣で家も一緒だなんて……」
明宏が現を抜かしていると、エリザが話しかけてきた。
「ユーシャ、これは一体なんだ?」
誰では無くなにと来たか。
「ああ、まだ紹介してなかったっけ……
小学校から友達の"湯田 明宏"だ」
「私はエリザ・ワスポール、よろしく頼む」
「湯田 明宏っす……よろしく……」
明宏がほぼ放心状態でエリザと握手を交わす。
「ほら明宏、しっかりしろって」
「チクショー!!
どうして俺の所にエリザさんが来なかったんだああああ!!」
そう言うと明宏はどこかへ走り去って行ってしまった。
「……私が何か失礼な事をしてしまったのだろうか?」
「どうせ昼休みには忘れて俺達の所に来るよ」
「ほう、ユーシャは明宏という男を随分と熟知しているな」
「まあな……さっきも言ったけど昔からの付き合いだし」
「昔からの付き合い、か……
そういえばメルフィーヌは元気にしているだろうか」
メルフィーヌ……
エリザから聞いたことのない名前が出てきた。
「メルフィーヌ?」
「アンアハンに居る私の親友だ。女騎士をやっている」
女騎士……新しい職業が出てきたな。
「騎士と戦士はどう違うんだ?」
「私のような戦士の場合、
大半は剣や鎚を持つのだが騎士は槍の扱いに長けている職業だ」
「へえー、エリザは槍を使えないのか?」
「指導をしてもらっていないからな。
見よう見まねで突くことは可能だが……」
……冒険者じゃない俺にはあまり関係ないか。
色々な事をエリザと話して歩いているうちに愛郷高校の校門が見え始める。
時間はギリギリだったが、なんとか遅刻は避けれそうだ。