第1話 ⑪
エリザがお風呂に入っている間、
俺はリビングでテレビを見ていた。母さんはコンビニに出掛けている。
ボーっとしながらテレビの画面を見ていると、
リビングの扉が開き鞄を持った父さんが入ってきた。
「あ、おかえり父さん」
「……ユーシャか、エリザちゃんは来たか?」
「今はお風呂入ってるよ、ていうか知ってたんだ」
「母さんから連絡があってね」
持っている鞄を降ろし、
晩御飯が置いてある場所へ父さんが向かう。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「ん?珍しいじゃないか、なにを聞きたいんだ?」
晩御飯のおかずを電子レンジに入れて、俺の方を見る。
「母さんがこっちの世界の住人じゃないって事は知ってるんだろ?」
少し間が空いてから、父さんの口が開いた。
「なんだ、母さんから聞いたのか?」
「それもあるけど、
エリザも母さんと同じであちら側の世界の住人なんだってさ」
「ほう……うちに女の子が住み込むと
言われてた時は驚いたが、そういうことだったのか」
ピーという機械音が鳴り、
父さんが電子レンジから晩御飯のおかずを取り出す。
「父さんは母さんにその事を言われた時、最初はどう思ったの?」
ふむ、とおかずとご飯を持ってこたつのテーブルに向かった。
両手に持っていた食べ物を置き、箸を持ってきて座り、喋り始めた。
「最初に聞かされた時は驚いたよ。
でも母さんの言う事を疑いはしなかった」
「どうして?」
「母さんは嘘を言うような人じゃないって、
父さんはちゃんとわかっていたからな」
……この親、息子の前で惚気た。
「話を聞いた後に母さんが潜ってきた門という場所に向かったのだが、
父さんには何も見えなかった」
「でも門があるのはきっと本当なのだろう。
母さんがそこに近付くパッと母さんが消えたんだ」
「すぐに母さんは戻ってきたが、
やはり私の目には門が映っていなかったよ」
「ふーん……」
父さんがご飯を食べながら話を進める。
「何度か父さんをあちら側の世界に連れて行こうと母さんはしたのだが…
結局、私はあちら側の世界に行けなかった」
「父さんは行きたかったの?」
「勿論、でも行けないのは仕方ないしすぐに諦めたよ」
「じゃー今もあっちの世界に興味あるんだ?」
と、聞くと父さんからは意外な返答がきた。
「今はもう無いし、行きたいとも思わないな」
「え?どうして?」
「家族を持てばユーシャにもわかるさ」
……なんだか納得いかないが、
正直者の父さんが興味はないと言っているのだから、もう無いのだろう。
「だから、父さんの代わりにお前が見て来るといい。
母さんの血を引くお前なら、きっと門が見えるはずだ」
「いや、俺は…」
「しかし流石は私の息子だ。
異世界があると知るとそんなにも興味を持つとは……」
「だから…」
「気にするな!お前があちらの世界へ行ってる間は、
家の事は父さんと母さんと遥に任せなさい」
……ダメだこりゃ。