第1話 ⑨
俺はエリザの部屋で荷物整理を手伝っている。
理由は特に無いが、家に居てもやることがないので自ら名乗り出たのだ。
「エリザ、これはなんだ?」
手伝ってみると、これが意外と面白い。
こちらの世界には無いような物がたくさん出てくる。
「それは鉱脈で取れる星雲石だな。
星雲のように綺麗だろう?」
「……確かに綺麗だ」
……綺麗なのだが、こちらの世界に持ってきていいのだろうか?
ていうかこっちの世界で何に使うんだ?
「これは?」
「雷獣の毛皮で作った外套だな。
放電するモンスターを討伐する際によく身に付けていた物だ」
俺の世界で言うデンキウナギみたいなモンスターだろうか?
…………いや、あちら側はこっちの常識が通用しない世界だ。
竜やさっきエリザが言った雷獣のような、
想像が付きもしない生き物がウロウロしているのだろう。
そう考えると、あちら側の世界も少しは羨ましく感じてしまう。
「狩るのに苦労をしたな……チクデンウナギ」
「…………」
「巻きつかれた時は醜態を晒してしまったが、
雷獣の外套のおかげで被害を最小限に抑えることが出来たのだ」
……さっきのは訂正、これっぽっちも羨ましく無い。
荷物を袋から出してはエリザに聞き、
どこに置いたり飾ったりしたらいいのか教えてもらう。
これを何度も何度も繰り返した。
「すまない……色々と荷物を詰め込みすぎてしまったようだな」
「…ああ、そんな事は気にしなくていいのに。
知らない物がたくさん出てきて結構面白いよ」
「本当か?それならいいのだが…」
さっきと同じ要領で袋から荷物を取り出すと、
奇妙な箱のようなものが出てきた。それもカラフル。
「これは……?」
蓋を開けてみるとそこには……………。
大事な部分がハート型で隠れる紐の下着があった。
「だぁぁぁあああああ!!!!それはっ!!!!」
エリザが勢い良く俺の手にある箱を奪い取った。
「こ、これは……姉上から誕生日プレゼントとして貰ったものだ!!!」
「決っっっっして!!!私が買ったものでは無い!!!」
「わ、わかった!わかったから落ち着いて!」
顔を林檎のように真っ赤にしながらあたふたと話す。
「そ、その…貰い物だし、捨てるわけにもいかないだろう……?」
……まずい、何かフォローしなくては!
脳みそをフル回転させて、俺の口から出た言葉は……。
「エ、エリザなら似合うと思うけど……?」
……………。
……。
互いに沈黙が続く。どうやらフォロー失敗のようだ。
「くっ…殺せ!!!」
「殺さないから!勝手に開けた俺が悪かった!!」
そんなこんなで荷物整理は続き、
辺り一面が真っ暗になるまでこの作業は続いた。