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【02.県立蘭桜高等学校】

二年D組の扉が勢いよく開く。


「おっはょー♪」

「――由姫、寝癖」


元気に挨拶をした由姫に挨拶ではなく静かに突っ込みをした少女は、スラッとした体に小さな顔で長い髪は美少女と言っても過言ではない。

――が、その表情は無感動でどこか恐ろしささえ感じる為、大っぴらに彼女を崇める者はいない。

それが由姫の級友、園原紫乃(ソノハラ シノ)で、由姫の秘密を知る極少ない人の一人である。


「え?あ…忘れてたっ!洗面所行ってくるー!」

「はぃはぃ」


紫乃の突っ込みに由姫は今来た道を女子トイレまで舞い戻る。

短い髪がサラサラと揺れる。

確かにその後頭部には外側に跳ねる毛の束がある。

その光景を見ても紫乃の表情はあまり変わらない。

まぁ、彼女と仲のよいものであれば、彼女の顔が微笑んでいたことに気づいたかもしれないけれど…。



ここは由姫の家から歩いて10分もかからない場所にある、県立蘭桜(ランオウ)高等学校、由姫が通っている高校である。

都市部にある学校には珍しく、とても大きな校舎と学校のある高校で、その学力は県内一と言われるいわゆる進学校だ。

この高校に通えているというだけで、警察や保護者からは絶大な信頼を受けることが出来る、まさに優等生の集まりといった評価の高い高校のひとつだ。

校舎は全部で4つ。

2階建ての建物である1年用棟、2年用棟、3年用棟。

そして12階建ての建物である特別棟の4つである。

こんな話をすると蘭桜高校の敷地がどれだけ広いのかご想像いただけるだろうか?

まさに大学といっても過言ではないほどの広大な敷地を所有しているのだ。

その理由は彼らのその飛びぬけた潜在能力にある。

この高校の名前は近隣住民の他には、学力に秀でかつ運動能力に秀でた者しか高校の名を知っているものはいないからだ。

何故ならあまりに高過ぎる能力の為、甲子園や国体の出場は禁止されているし、全国模試などにも名を連ねる事も許されてはいないのだから。

この蘭桜高校に通う彼らは知られざるエリート中のエリート達なのである。

彼らが表立って登場することなど殆ど存在しない理由は、彼らの多くが大学へは進学をしないと言うことも理由として数えられる。

否、大学に行く必要がないとも言えるが…。

高校と名が付いているが、この蘭桜高校では大学で習う勉強までを一括して教えているのだ。

それもかなりの専門分野を含めて、幅広く、そしてかといって浅いわけではなく、かなり深いレベルまで。


「紫乃~?教授まだ??」

「えぇ。間に合ったわね」

「そうみたぃ♪」

「また起きられなかったの?」

「えへへ…朝には弱くて…さ」

「そう」


一見ただの高校生にしか見えない彼らだが、その質は一般の大人を軽く凌駕する。

どの国家試験でもたいした勉強をせずても、受ければ全て受かるだろうという実力の持ち主達だ。

この学園では学園の中でも上位に位置する15名を、尊敬の意味を込めて≪ラフシス≫と呼ぶ。

その≪ラフシス≫の中の下位5人を≪ルエル≫。

中位5人を≪リフル≫。

そして全生徒の中で上位になった5人を≪ラフエル≫と呼称する。


「起立、礼!」


代表者の号令により壇上に立つその人へと礼を取る。

壇上に立つのは齢60は過ぎたであろう初老の人――ではあるが、まだ生徒全員の記憶に新しい人物――昨年のノーベル科学賞受賞者の姿があった。


「今日は化学分子レベルでのものの転移とその性質変化の話をしようと思う。化学分子の話は前回したな?その続きになるのだが…――」


こうしていつものように講義形式の授業が進んでいくのだった。


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