【11.言いつけ】
――『絶対にしてはいてないよ』――
それが、物心付いた頃から親に言いつけられてきた唯一の言葉。
カラーコンタクトを外してはいけない…と。
人にカラーコンタクトをしている事を知られてはいけない…と。
例え、それが秘密を漏らすことのない犬だとしても…。
だから知らない。
ファラスも。
シンラも。
だから――彼等の心が離れていく。
彼等の目に、親しみではない別の色が混じっていく…。
身体が震える。
杏にはわかった。
それが由姫の絶望から来るものだと…。
今、表に出ているのは私なのに…。
由姫の中からそれだけ強い感情が溢れている。
誰よりも『一人』が嫌な由姫。
守りたいと唯一思えた由姫。
その由姫が――泣いている――。
(ゴメン、ゴメン…由姫…)
身体が言うことを利かない。
溢れる由姫の感情が身体の制御を難しくする。
『一人は嫌、一人はイヤ、ひとりはいや…』
杏では…由姫を抑えきれない。
身体とより深く結ばれているのは杏ではなく由姫だから…。
「可哀相な由姫――おいで。ここには由姫の居場所があるよ」
そして――男は甘言を吐いた。
身体がゆっくりと男を見る。
暗闇にいる由姫にとっては、どれだけ甘い誘惑になるか知った上での甘言…。
一歩ずつ歩き出す身体――。
けれど、由姫がそれを選ぶなら…杏に止める意思などない。
――タタンッ――
軽い音を発てて近づき、杏の手を握る暖かい感覚。
「俺も…姉さんと行きたい」
置いていかれるとでも思ったのだろう。
とても真剣な瞳で、風司が杏とも由姫ともわからない彼女を見上げる。
彼女は一瞬困惑したような顔をし、問いかけるように目の前の男を見る。
「…≪理解者≫は孤独だからな。一緒に来るといい」
その言葉を聞いて胸を撫で下ろし、彼女と風司は2人で歩いていく。
男の手を取る為に…。
すでに男の手を掴むことが出来る所で、一度だけ彼女は後ろを振り返った。
けれど、ファラスもシンラも何を言おうともせず、それどころか顔を背け、視線を合わせないようにしていた。
その姿に、彼女は彼らだけに通じるように。
『ゴメンね』
と一言謝ると、男の手を取った。
その日から、彼女はプッツリと姿を消した――。
えぇえええええええええ!!!!!!!!!!!!!
って、きっと一番思ったのは作者www
いやぁー考えてもいなかった方向に話が。。。。
で、昔書いたのがここまで。
気が向いたら続きを書くかもだけど…他の作品を見る限りその可能性は低めかも…?