【01.いつもと変わらぬ朝】
初めてそれを自覚したのはまだ私が幼い頃で、それから既に十数年が経つ。
違和感はない。
私にとっては至極当たり前のことだったから。
しかし、周りにとっては異質としか感じられないものらしい。
私は、隠語でいう所の――≪理解者≫――に当たる。
それを知るのは極一部のみ…。
東京近郊のとある住宅地の一室では、いつもと変わらぬ朝を迎えていた。
「遅刻するよ、由姫」
「…もう少しだけ…zZ」
由姫と呼ばれた少女の名は榊由姫。
去年やっと高校に入学した16歳。
まだ4月半ばで夜冷える為なのか、毛布に包まり頭だけ辛うじて見えている状態だ。
朝には弱いのか、起きる気配はない。
そんな時。
「起きろ、バカ」
と、先ほどとは違うぶっきらぼうな声――しかし。
「zzzZZZ」
少女――由姫が起きる気配はない。
「…(怒)」
次の瞬間――。
「起きろゴラーッ」
バフンと良質なベッドに飛び込んだような音と、「――ウギャッ!」っと何かがつぶされたような声が部屋に響き渡る。
「なっ、何すんのよっ!ファラス!」
どうやら短気であろう声の主が由姫の眠るベッドにダイブしたらしく、飛び起きた由姫は自分のベッド上に乗っていたシベリアン・ハスキーの首根っこを掴む。
――そう、犬の。
「起きないお前が悪い」
「もっと普通に起こせないのっ!?」
「普通だろうが」
「何処がょ!?」
少女は捕まえているハスキー犬に詰め寄りながら、頬を膨らます。
一触即発の雰囲気かに見えたが…。
「はぃはぃ、その辺にしとけ、ファラス。由姫、時間ヤバぃぞ」
一番はじめに由姫を起こした声――ベッド脇にいるアイリッシュ・セターの声で時計を見た由姫がベッドから飛び降りる。
そして5分としないうちにもの凄い速さで玄関から出て行った。
その光景を見た二頭は顔を見合わせると深々とため息をついたのだった――。