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乱世始動

―城の中庭―


「ハッ!!」

ヒュン!ヒュン!


「動きが大きすぎですね。隙だらけです・・よっ!!」

キンッ!キンッ!

ブンッ!


ガギンッ!!


「なっ!!・・・」

ヒュンヒュンヒュン

ドスッ!

大きな青龍偃月刀が回転しながら宙を舞って地面に突き刺さった。


「勝負ありです関羽殿。」

俺は関羽の前に愛用の戟(神楽)を突き付けた。


「あの愛紗ちゃんが負けたの初めて見たよ。すごいなぁ伏犠さん。」


「そういう関羽もすごいじゃないか。」

そう言って少し離れたところから部下の仕合を眺める君主達。


「坊主のお兄ちゃん!次は鈴々と勝負するのだ!!」


「何を言っているのだ鈴々次はこの趙子龍が拳士殿と勝負するのだ!!」


「残念だがお二人さん。俺はこれから仕事があるんだ。勝負はまた今度だ。」


「えぇ~~!?」


「な、なんと!?」


そう言って落ち込む二人。どんだけ俺と勝負したいんだ?


劉備達が仲間に加わって一週間が経った。趙雲は関羽達と真名を交換したらしいが俺は断った。まだ関羽達と信頼関係を築けていないと判断したからだ。


「では私はこれで。関羽殿大丈夫ですかな?」


「あ・・あぁ大丈夫だ。それよりすまない伏犠殿仕事を中断させてしまって。」

「なに、ちょうど一区切り着いたところだったんですよ。私としてもいい鍛錬になりました。では失礼。」

そう言って伏犠は中庭を後にした。「ふむ・・愛紗ほどの武の持ち主でも、拳士殿に勝てぬのか・・・」


「あのお兄ちゃん強いのだ。鈴々も勝てるかどうかわからないのだ」


「ねぇ白蓮ちゃん。「ん?どうした桃香?」伏犠さんって何処から来た人なの?」


劉備が白蓮に尋ねた。


「私も詳しく知らないんだ。あいつは近くの山寺の住職に拾われたらしくてその山寺で読み書きや軍略を学び、修業僧と一緒に修業をして、半年前に私の家臣になったんだ。出身は私も知らないんだ。」


「へぇ~~そうなんだ~。でも、伏犠さんってすごいよねぇ~軍略も内政も出来るし民達からもかなり慕われてるし。」

劉備が羨ましそうに白蓮を見る。


「私の自慢の家臣だからな。」


そう言って白蓮は中庭を後にする伏犠を見ていた。




―執務室―


「・・・・・・」

俺は無言で筆を走らせていた。

机の上にはかなりの数の書簡が積まれていた。

「さすがに多いな。今夜は徹夜だな。」

コンコン


「開いてますよ」


「失礼します」


「おや、北郷殿。いかがなさいました。」


「その・・伏犠さんに話があって」


「話とは?」


薄々話の内容は分かっていたがあえて聞いてみた。


「その・・俺達と一緒に来ませんか?」

やっぱりそう来たか。計画通りだな。


「まぁいずれはそちらにいかせて頂きますよ。」


「えっ?ど・・どういう意味ですか?」

北郷は俺の答えの意味が理解出来ていないようだった。


「北郷殿、ここから私が話すことは内密にお願いします。」


「えっ?・・・ど・・どういうことですか?」


「他の者に知られる訳にはいかない内容なのでね。」


「わ・・わかりました。」


北郷の目付きが変わり真剣に聞く姿勢になった。


「実は俺は元々この時代の人間ではない。「えっ?」君と同じ時代から来た者だ。」


「・・・・」

北郷は唖然としていた。まぁ無理もないか。


「じ・・じゃあ伏犠さんも天の御遣いなんですか?」


「いや、俺は菅輅の占いの前にこの世界に来たから天の御遣いでは無い。」


「あの・・ちなみにこのことを知ってるのは他にいますか?」

北郷はおずおずと尋ねる。


「この世界で俺を拾ってくれた山寺の住職以外は誰も知りません。白蓮もこのことは知りません。」


「どうしてそんな大事なことを俺に?」


「その前に一つ聴いておきたいことがある。」


「何ですか?」


「君は三國志には詳しいか?」「あっはい、それなりに」


よし、これで俺の計画は成った。


「三國志に詳しいのなら、俺の主がこの先どんな運命になるかわかるね。」


そう、もしこの世界が正史通りに進んでいくなら白蓮は袁紹に攻められ自害する。


「・・・はい。」


少し躊躇って北郷は答えた。


「そう、白蓮は袁紹に攻められ自害する。だが、俺はそんなことはさせたくない。」


「俺だってそうです!!珀珪さんやこの幽州の人達には死んで欲しくないです!」


「そこで君達劉備軍の登場だ。おそらくこのあと反董卓連合が組まれ君達劉備軍は徐州の州牧を任されるだろう。」


徐州はここ幽州から南に位置する。


「はい。」


「それと同時に袁紹が我々を攻めるだろう。そこでだ、君達には徐州で白蓮や幽州の者達を迎え入れて欲しい。」


「でも、足止めをしないと民達を護りながら行軍じゃあすぐに追い付かれますよ。」


「足止めは俺が一人で行う。策や罠を使いながら。」


その俺の言葉に北郷は驚きを隠せなかった。


「一人でって無茶です!相手は少なくとも二十万は用意しますよ!」


北郷はそう答えた。確かに自分でも無謀なのは分かっていた。


「だがな北郷君、うちは人手不足なんだ民達を無事に徐州へと送る為には俺に兵はまわせないんだ。それに、うちは君達に客将を取られるからね。」


客将とは子龍殿のことだ。


「うっ・・・」

北郷はばつの悪そうな顔をしていた。


「心配するな北郷君、ある程度の足止めをすればすぐに徐州へ向かう。だから君は白蓮や幽州の者達を迎え入れる準備をしていてくれ。」


「伏犠さん・・・わかりました。でも、必ず徐州に来て下さい。珀珪さんや幽州の者達それに、俺達劉備軍の者達もあなたに死んで欲しくないんです!」


「感謝するよ北郷君。頼りにしてるよ。」


「任せて下さい!!」

北郷は力強く頷いて答えた。


「よし、君に俺の真名を預けるよ。俺の真名は雄だ。ただ二人でいる時にだけ真名で呼んでくれ。あと、このことはくれぐれも内密に頼むよ。」


「わかりました雄さん。俺のことは一刀と呼んで下さい。」

「あぁ一刀君。」


二人はがっちりと握手をし北郷は執務室を出た。

伏犠の計画が今ゆっくりと動き始めた。

それは同時に激しい戦いの始まりでもあった。

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