表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そのお見合いは、危険です。  作者: 藤谷 要
復讐編 始動の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/118

復讐の時 2

 遠目でも分かるほど上質な羽織と袴を着用した元は、下座にいる親族へと手を上げて微笑を浮かべながら、上座へと進んで行った。

 側仕えは上座近くの下座で待機するので、そこで立ち止まると腰を下した。佳子が良く見ると、その側仕えの一人は、真吾だった。

 集まりに当主として初めて参加した佳子だったが、下座の席で毎年母と一緒に出席していた時には、真吾の姿を見かけたことがなかった。

 元は一人そのまま歩き続けて上座へと上がると、自分の指定された席に辿り着くが、すぐに腰を下さず、怒りを含んだ目で佳子を見下した。


「一族の中でも限られた者しか出席できない集まりに、わざわざ他所者を連れてくるとは、どういうつもりだ。私を怒らせたらどうなるか、身をもって知りたいのか!」


 元の叱責の声に広間が一瞬で静まり返った。

 ここに居合わせている皆の視線が、自分に集まっているのを佳子は感じながら、元から視線を決して離さなかった。


「春人さんは私の婚約者ですから、もはや身内と同然です。私と並んでいてもおかしくはないはずです」


「私はその男が一族に加わることを許した覚えはない。これ以上事を荒立てたくなければ、その男を追い出せ」


 元が忌々しげに吐き捨てた台詞に、佳子は怒りを覚える。

 真吾を従えた分家の主であり、佳子の母の実父である元。もし二人が父殺しに関係していたとしても、目の前にいる彼こそが裏で操っていた真犯人に違いない。今朝方、犯人が誰か結論を出すのに悩んでいた佳子は、今この瞬間に心の中で憎しみの矛先を元へと定めた。


「事をわざわざ荒立てているのは、そちらの方でしょう。お爺様を脅した父を車の事故に見せかけて殺したように、目障りな私も消そうとしたくせに」


 佳子は負けじと睨みつけながら、周りにも聞こえるほど大きな声で言い返した。すると、元は意外な事を言われたとばかりに、驚いた表情を浮かべた。


「一体、どういうことだ? 佳子、お前には何か誤解があるようだぞ」


 相手はあくまでも白を切るつもりだ。佳子は苛立つ気持ちを抑えながら、相手を追い詰めるための論法を頭の中で用意する。


「お爺様、私は知っているのです。父が亡くなる直前に、一族の秘密をばらすとお爺様を脅して、真吾の認知の変更と母との離婚を迫ったことを。お爺様は表面上ではそれを渋々父に承諾されましたけど、安心して油断した父を部下に命じて殺させましたよね?」


「違う、私は何も命じていないぞ。一体、お前は誰に何を吹き込まれたのだ!?」


「誰にも吹き込まれていません。過去の真実をこの目で見て来たのです。私が家出したあの空白の期間、それに全てを捧げました」


 会場にいる多くの親族たちも、耳をそばだてて聞いているのを知りながら、佳子は自分が見た父の過去を元に語り聞かせた。

 佳子の覚えている限り、一言一句詳細に言葉にして、佳子の言葉に嘘がないことを知らしめて、相手を追い詰めるために。


 佳子が話を聞かせているうちに、元の表情から余裕というものが消えて行った。

 目の前にいる取るに足らない小娘が、自分を脅威にさらす相手だと、初めて認識してくれたようだった。


「そんな馬鹿な。健一さんが殺されただと……? それで佳子は私の仕業だと思ったのか? 状況的に怪しいのは分かるが、私は断じてそんなことを命じてはいない。それに、本当に殺されたという証拠でもあるのか!?」


 無実だとしつこく言い張る元に、佳子は我慢の限界がきそうだった。


「とぼけるのもいい加減にしてください。お爺様でなければ、誰が犯人だというのです! 一上家は一の掟を破って、暗殺業に手を染めていることを私は知っています。お爺様、貴方がそれを取り仕切り、配下である父を手駒として使っていたではありませんか! 父殺しも同じです。他の配下を使って、父を事故に見せかけるために異能の力を使って、物理的な証拠を残さないようにしたのでしょう! 同じ手口を使って春人さんも事故に見せかけて殺そうとし、今日だって私を殺そうとわざわざ家まで刺客を差し向けて来たじゃないですか!!」


 佳子の悲鳴に近い叫びに、周囲からも動揺の声が上がる。暗殺業とは本当のことなのかと、何も知らない親族から戸惑いの声が漏れていた。その一方で、佳子を嘘つきと罵る声も聞こえて来た。


「証拠もないくせに、でたらめばかり言って、恥ずかしくないのか!」


 一人の親族の男が立ち上がって、佳子を大きな声で責め立てた。佳子はその激怒した男の態度によって、かえって冷や水を浴びたように冷静になった。


「私を襲った刺客は、私に返り討にあって右腕に怪我を負いました。一族の全員の右腕を調べたら、いかがですか? それに、父の殺害現場を目撃した者がいます。今日はその者に証言していただくために来てもらっています」


 会場が再び静まり返る。皆、固唾を飲んで佳子の挙動を見守っていた。佳子は注目される中、袖の袂からきのこの妖怪を取り出して掲げた。


「このきのこの妖怪が父の殺害現場を目撃しました」


 佳子がそう話した途端、嘲るような笑い声がこの場に響き渡った。

 先程、立ち上がって佳子を責めた男が「きのこが証人だと?」と指を差して嗤っている。他にも眉を顰めて、皮肉を口にする者が数多くいた。

 会場は騒然となり、佳子を批判する声で一気に形勢が不利になっていた。佳子はどのように場を静めようかと頭を働かせるが、焦って空回りしてしまい、言葉がうまく出て来なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ