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巡る時 3

「オーケー、ラジャー、ラジャー、まっかせなさーい」

 いきなり何かを思いついたように、飯山が怪しい発音の英語で喋りだした。

「へっ?」

「実は俺、ゆかりとお付き合いしているんだ」

 ちょっと照れくさそうに飯山が白状した。


 確かに姉属性体質の彼には、見た目通りお姉さんに見える彼女は、ストライクかもしれない。

 対して僕は……どちらかというと妹属性体質なのか?

 とは言うものの、彼女たちは同じ年の同学年な訳だから、あくまでも見た目的な要素であって、本質的な意味ではない……と思う。


 僕自身に限って言えば、「お兄ちゃんなんか、好きじゃないんだから……だって……だから……だっ、大好き……なの」なんて言われたいと思った事は無い……と言えば無いし、有ると言えば有るし……

 どっちにしても、男兄弟しかいない僕にとっては、そんな事を言ってくれる可愛い妹が存在していないので、実際、それが嬉しい事なのかどうかはよくわからない話です。


(ちょっ、例え妹が実在したとしても実妹にそんな事言わせちゃ、世間的、倫理的に駄目だろう!

 と言うご意見はごもっともです)


 唯一そんな事を言っても、世間が許してくれそうな、妹的幼馴染みも存在していないですし。


(……ってか、何か思い出しちゃったぞ。

 正月とか親戚が集まると「お兄ちゃん、お兄ちゃん……」って、べったりの従姉妹がいたけど、あれって、なんだか嬉しいような恥ずかしいような……っと、もしかしてあれが妹属性体質になった原因だったのか?)


 とりあえず、個人的な属性が外見的か本質的かはさておいて……。


 まあ、男も違う趣味を持っていても親友と呼べる付き合いが出来るみたいだ。

 もっとも男の場合、好きな女性のタイプは違う方が良いかもしれない。


「やるもんだね。なかなか手が早いじゃん」

「馬鹿、お前ほどじゃないよ」

 飯山は何か思いついたように続けて話し出した。

「俺、これからゆかりと遊ぶ事になってるけど、お前はこれから時間あるか?」

「ああ、大丈夫だよ」

「じゃあ、お前も今回は真面目っぽいから、ゆかりに真菜ちゃんを誘えるか聞いてみるよ。

 オーケーならお前も来るよな」

「ありがたいね。断る理由も無いし、そうさせてもらうよ」


 着替え終わった僕たちはロッカールームを出た。

「聞いてくるから、ちょっと待っててくれよ」

 そう言うと、飯山は女子更衣室の方に行って、ゆかりを呼び出した。


 着替え終わって出てきた彼女と飯山の話が終わり、一度更衣室内に戻った彼女がしばらくすると真菜と二人で出てきた。

 先ほど感じた印象通り、バイト中にしていた髪留めより、ひと回りいや、ふた回りほど大きなリボンで飾られた髪留めを付けて、フリルのヒラヒラが何カ所か付いている少女的な服を着ていた。


(うん、うん、『真菜ちゃん』最高だね。

 さすがに局地適応タイプのロリータ系じゃ、こっちも合わせることが出来ないけど、それなら一緒に並んで歩けるよ。

 これは間違いなくストライクだね)


 若さ故か、脳内では既に真菜ちゃんと二人で街中を歩く姿を描いて、つい顔が緩んでしまった。

 そして、出てきたゆかりと話をしていた飯山の二人は揃って、意味ありげな怪しい笑顔でこっちを見た。


(あっ、顔! しまった。

 もしかしてあいつ、属性の話もゆかりちゃんに喋っちゃったか?)


 飯山に手招きされた僕は変な汗を拭い三人と合流し、バイト先から近くの喫茶店に場所を変えて、自己紹介やたわいのない会話を楽しんだ。


 店を出る頃には綺麗な夕焼け空に低く浮かぶ太陽がオレンジ色に街を染めて、翌日も晴天が約束された、でも初めて知り合った高一の僕たちが、もう一遊びするには時間が少し遅い夏の夕暮れ時になっていた。


(あれがきっかけで、真菜と付き合い出してからもう三ヶ月経つのか。我ながら長続きするもんだ。飯山たちを気にかけながらゆっくりとやってきたのが良かったのかな。

 そう言えば高校に入ってからも、あいつにいろいろ世話を焼かせっぱなしだ。

 まあ、あいつが好きでやっているならかまわないけど、いつかお返しをしないとけないな)


「また、何『ぼやー』っとしてるんだよ」

 便所に行くと言って教室から逃げ出した飯山が戻ってきた。

「ああ、ちょっと思い出してた」

「なんだ、Hか、スケベだな」

「馬鹿言ってんじゃないよ」

「まあいいや、また今度四人で遊ぼうぜ」

「オーケー」


 その後、僕と真菜の間で初めてのクリスマス、バレンタイン、ホワイトデーと恋の行事が訪れるたびに深く結びつき、二人の思いを強くしていった。

 ひとつ歩みを進めるたびに心の中に出来た恋という火種は徐々に大きくなり、二人の間に作り出された恋愛という欠片が僕の心の空白を綺麗に埋めるようになっていた。


 学年が一つ上がった僕と真菜は、逢うたびに何度も口づけをかわし、幾度か体を重ね合わせ、甘く優しく熱く、そして幸せな時を過ごした。


 永く永く、永遠に続くと信じて……。

読み進めていただき、ありがとうございました。

ちょっと、遊びすぎた文面になってしまいました。

とりあえず、出会い編は終了です。

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