そして……
三年になった僕たちは夏休みが訪れる迄の間、それまでと変わらない時を過ごしていた。
しかし、残念ながら二人の進路が大きく違う事がはっきりわかった頃から、あれほど熱く燃えていた炎は徐々に小さくなり冷めていった。
それでも細々とつないでいた心の絆だったが……
春になり真菜は東京の大学に進学し、そして僕は地方の専門学校に進んだ。
一度離れた二人の心の間に距離という物理的、そして「支えてほしい時に近くにいない」という精神的にも大きな壁が立ちはだかり、再び深く結びつくのを拒んだ。
進学して初めの冬休み、偶然街で会った僕と真菜は、近況そして、お互い新しく出来た心の支えの話をした。
それを最後に僕たちは、二人で紡いだ甘く優しく熱く、そして幸せだった時に終止符を打った。
そして……
結婚を翌日に控えた独身最後の夜、部屋の明かりを落とし、先ほど飲んだコーヒーの空き缶を片手に、それを見つめながら彼女と歩んだ二年間を振り返った。
「あの日、缶コーヒーをご馳走して終わるはずだったのに、その約束を忘れたために結婚することになったんだ」
ちょっとしたゲーム感覚で行った事の結果で、ほんの些細なきっかけであった。
あの時、たまたま近くにいたのが彼女だったからこそ、このゲームできっかけをつかもうと思って声をかけた。
(実際、人生なんてどう転ぶかわかったもんじゃない)
振り返った結果が、この一言でまとまるなんて少々情けなかったのだが……
でも今、幸せかと聞かれれば、当然「幸せです」と笑って答える事が出来る。
それは十年前に終止符を打った大きな恋愛をも凌ぐ恋愛を今しているから。
そして、まだ半分以上残っている僕と彼女の時間を、最後のひと時まで重なり合って紡いでいく事が出来ると信じているから。
最後までのお付き合い、ありがとうございました。