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前夜に

 結婚を翌日に控えた独身最後の夜、部屋の明かりを落とし飲みほしたコーヒーの空き缶を片手に、それを見つめながら彼女と歩んだ二年間を振り返った。


「あの日、缶コーヒーをご馳走して終わるはずだったのに、その約束を忘れたために結婚することになっちゃったのか」


 ちょっとしたゲーム感覚で行った遊びの結果で、些細なきっかけであった。

 しかし彼女の事が好きだからゲームに誘った訳ではなく、たまたま近くにいたのが彼女だったので声をかけた。

 ただ、それだけのことであった。


「なんで、こんな事になっちゃったのかな」


 彼女に対して申し訳ないと思うが、恋愛という感情は結婚を翌日に控えた今でも抱いていない。

 それはきっと十年ほど前、まだ高校生だった頃の終わっていない、いや「終わらすことが出来なくなってしまった」恋愛が今でも心の中で隠れた小さな火種のように燻り続けて僕を縛っているからだろうか。

 それよりもなにより僕はあの時以来、心の中の何かが抜け落ちてしまったかのように、人を好きになったり、恋をしたり、ましてや愛したいなどという感情が湧いてこなくなってしまった。

 

「はたして、僕自身の決断は正しかったのか?」


 彼女と付き合いだしてからの二年間、「相性が良い」とか「一緒にいて疲れない」などと僕自身、心に言い聞かせながら付き合ってきた。


(何事も無ければ、これから何十年という長い時間を、彼女と過ごさなければならない、はたして今の心のままやっていけるのだろうか。

 出来る事ならここから逃げ出したい。いや、あのときに戻りやり直したい)


「この地方の天気は雨でところにより強く降るでしょう。

 お出かけの際は傘を忘れずお持ちください。

 さて日付も変わりまして最初のニュースです……」

 考え込んだり、思い返したり、そんな事を繰り返していると、照明の代わりにつけていたテレビから日付が変わった事を知らせるニュースキャスターの声が聞こえる。


「雨か……やっぱり雨男だな……でも、変に重たい曇り空よりいいか……」


 一瞬、今は思い出したくない記憶が蘇りそうになったが、慌てて首を振りそれ以上考えないようにした。


「さてと、どのみち考え込んでも今更どうしようもないし、なるようになるか。

 朝が早いからもう寝よう」


 手に持った空き缶をテーブルに置き、ベットに潜り込んで目を閉じてみるが、これから始まる新たな生活の緊張感や不安感、それよりもこんな気持ちの僕と結婚する彼女に対する罪悪感からか、いろいろと思いが巡り中々寝付く事ができないでいた。

はじめまして、

ここまで読み進めていただき、ありがとうございました。


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