恋は"ピポパルペロロン"
某SNS日記お題目より作成した短編です。
AI判定100超えたので、調子こいて載せてみました。
"ピポパルペロロン"って知ってる?
無邪気に彼女が言ってたのを思い出した。
とある村の伝統行事らしい。彼女が育ったのは小さな島で。島だと言うのに珍しく、漁港が無いという話だ。
そして、その奇妙な行事は、海側から島を一周し、早さを競うもので。
私は一種のペーロンみたいなものかと思っていた。
「海に入るとね。今までと見違えるくらいに変わるの。」
きらきらとした彼女の瞳がその魅力を物語っていた。
流れ着いた無人島で、私は先住民にもてなされ、村の伝統行事だという"ペパピポプレロン"の競技を鑑賞させられていた。
逞しく海面を叩く尾びれ。 しなやかに力強く曲がる下半身。 高く跳ね上がると同時に、皆から発せられる「セイヤッ」の号音。
海に入った途端、二本足から太い魚体に変化する。 ついでに言うなら、陸地ではもさっとしていた彼らが、海に入った途端凛々しい美形に変化した。
そんな彼らが、エビのように腰を曲げ跳ね、海面を滑り走る。「セイヤッ」の号音が、鋭く煩く耳に突き刺さる。
「いかがですかな、我らが嫁殿。」
隣で何十年、いや何百年生きていたんだろうか…という長老が、私の手を取り訊ねていた。
特等席に座らされて、鑑賞するものの。 その先の展開を訊くのが恐ろし過ぎて、ただ私は笑って誤魔化した。 島は圧倒的に男子が占めており、女性は一人も見当たらない。 そして座らされている玉座はそう、まるで賞品を飾る台のよう。
一際高い歓声と同時に勝利した男性陣が、玉座横の水路に入ってきた。
「さあ、嫁殿。勝者を讃えてくだされ。」
皆が手を私に差し出す。 差し出されるけれど、受け取ったが最後… な気がしてならない。
「ご… ごめんなさいっ!!」
私は頭を下げると。 思い切ってその場から逃げ出した。 幸い陸の上では彼らは早くない。 とはいえ、周りは海。 泳いで逃げるには無謀すぎるし、何よりきっと彼らに追い付かれる。
もしくは私が海へは出ないと皆が見込んでいるのを逆手に、海へ飛び込む… というのもアリかもしれない。
騒然とする島内で騒がしさを避け、岸壁の縁へやってきた私は、そっと崖下を覗き込んだ。ごつごつした岩が海面に剥き出しになっている。目が眩みそうになる高さや、打ち付けてくる強い吹き上がりの風が立ちはだかるけど。
「ヨイショ、と。」
私は後ろ向きに足を崖の外に乗り出した。慎重に足場を捜して、崖を一歩ずつ下っていく。そのまま崖下へとあともう少しの所で思わず、足を踏み外してしまった。
…そんな…
ゆっくりと落下する私は、今までの事を色々と思い返していた。
初めて島に着いた時の事。島の住人と出会った時の事。最初にもてなしを受けた時の事。よく考えたら、困っている私に皆優しくしてくれたのに。
こんなことなら、意地を張らずに手を受け取っておけば良かったかな。
そんな気持ちでゆっくりと、落下していた私は。
「セイヤッ」
思い切って声を張り上げ、彼らのような掛け声を出してみた。
パンッ、と体が跳ね上がる。自動的にくの字でエビみたいに跳ねた私は、そのまま"セイヤッ、セイヤッ、"と叫んで次第に島から遠ざかった。
そして。
「エイヤッ!」
そう叫んで海の中にぼちゃん、と落ちた。
次に気が付いた時には、私は救急搬送される所だった。
「大丈夫ですか。」
声をかけてきた隊員に、私は安心感からニコッと微笑んで、支えてくれた手を強く握り返した。
「大丈夫です。有難うございます。」
彼は、私の言葉にとても嬉しそうに応えてくれた。
「俺の方こそ。夫に選んでくれて光栄です。有難う。」
あれ?
鳥が歌っている気がしたのに。ここは海? そんな匂いが広がっていく。彼は私の好みの容姿だった。私は何か、油断した? はたと私は彼の足元を見た。
そこには立派な尾ひれが。
「一生大事にするよ。俺の嫁。」
彼のその一言はとてもきれいで、それこそ恋する鳥が歌う様に"ピポパルペロロン"と高らかに響いていた。
主人公…の生態、不明です。それも含めて楽しんで頂けたら幸いです。




