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変態国家シリーズ

行け! 変態騎士団長!

作者: 野井琅世
掲載日:2026/05/20

下ネタ気味です。注意してください。

また、本作品は『婚約破棄の理由が酷すぎる!』という作品の続編です。

この作品だけでも問題ないように書いたつもりですが、気になるようでしたら、シリーズ設定しておきますので、そちらから前作をお読みください。



「何で素っ裸なんだ⁉」


 国王の声が響く。

 その声は、悲しみを含んだ、痛々しいものだった。


「お言葉ですが! 陛下!」


 国王に対し、堂々たる態度で言葉を発したのは、問題の素っ裸の男性だった。

 金髪碧眼の美丈夫で、身体も美しく引き締まっている。

 凛々しい表情を浮かべたその顔は、世の女性を余す事なく(とりこ)にできそうな程に美しい。

 そう、美しいのだ。美しいのだが……、何と言うか、あまりにも惜しい事に……


 何を、とは言わないが、あまりにも堂々とブランブランとさせていた。


「何か言いたい事でもあるのか⁉」


 悲痛な声のまま、国王が叫ぶ。

 その顔は、泣き出しそうな程に歪んでいた。

 だが、主君のそんな表情は御構い無しに、男は堂々と言い放つ。


「ガントレットとブーツは身に着けています!」


 ……確かに、この男、プレートアーマーの手と膝から下にかけては身に着けている。

 本来、最も守らなければならない場所を覆い隠さない『プレートアーマー・変態仕様』だ。

 正直、裸よりも変態性が増している。


「宰相といい! お前といい! 何で、それで裸でないと言い切れるのだ⁉」


 そう言えば、この国、宰相も露出癖があったな……。

 知らない人に向けて説明すると、この国の宰相は、ネクタイ以外を脱ぎ捨て、自宅の庭を散策する変態である。

 そして、その状態を全裸ではないと言い張っている。


「紳士の(よそお)いを否定なさるのですか⁉」

「紳士は局部を(さら)さんのだ!」


 至極(しごく)、もっともな事を国王が叫ぶ。

 こんな事を、一々叫ばされる国王が(あわ)れでならない。


「お前、第十騎士団長に任命される前は服を着ていたであろう⁉ 何故、団長になった途端(とたん)に脱いだのだ⁉」


 国王の言葉に、第十騎士団長らしい男が胸を張って答える。


「宰相閣下に後押しされたのです!」

「宰相ぉぉぉっ!」


 国王、全力の怒号が響く。

 大方、そんな事だろうとは思ってはいたが、宰相の差し金だったらしい。

 国王は、とっとと宰相を更迭(こうてつ)するべきだと思う。


「呼びましたか?」


 国王の怒りなど、どこ吹く風といった呑気(のんき)な様子で宰相が現れる。

 悪びれる様子は一切ない。

 この場の状況から、何故、呼ばれたのか分かっているはずである。


「お前が、第十騎士団長に全裸出勤する様に(そそのか)したのか⁉」


 国王の言葉に、宰相が心外そうな表情を浮かべる。


「紳士の装いをしろと言っただけです」

「お前の言う紳士の装いは裸の事だろう!」


 国王は騙されない。

 迷う事無く宰相を糾弾(きゅうだん)した。


「そもそも! 第十騎士団の結成と、この者の騎士団長就任は、お前と王太子が後押ししていたな!」

「はい。彼の紳士の装いは、王太子殿下の許可も得ています」

「王太子ぃぃぃっ!」


 再び、国王が怒号を響かせる。

 自分の息子まで積極的に関わっていたとなると、キレるのも無理はなかった。

 国王の血圧が心配である。


「お呼びですか?」


 極めて冷静な様子で王太子が現れた。

 自分の父親の怒りなど気にも留めていない。


「お前もグルなのだな⁉」

「何がでしょうか?」

「この者の全裸出勤だ!」

「それが何か?」


 『それが何か?』ではない。

 悪事がバレたのに冷静すぎる。

 いや、もしかしたら、悪事とすら思っていないのかもしれない。


「こんな男を推挙(すいきょ)しておいて、その反応は何だ!」


 国王の言葉に、王太子が心外そうに表情を歪める。

 そして、国王に堂々とした態度で反論の言葉を口にする。


「お言葉ですが、彼は逸材です」

「常識から逸脱しているという意味では、確かに逸材だろうな!」


 国王が吐き捨てる様に言う。

 まあ、国王の前に堂々と裸で現れる様な人物だ。言いたくもなるだろう。


「しかも、部下にまで、この格好をさせているのだぞ!」


 それは酷い。

 変態的服装の騎士団は嫌すぎる。

 巻き込まれた騎士達が可哀そう。と、言う他ない。


「大丈夫です!」


 第十騎士団長が胸を張って言う。

 その態度は自信に満ちており、美しい顔も相まって、見る者を魅了せんばかりだ。

 そう、魅了せんばかりなのだが……


 相変わらず、ブランブランとさせている。


「部下も露出したい者で固めてあります!」

「何一つ大丈夫ではないだろう!」


 可哀そうな騎士などいなかった。

 居るのは変態ばかりである。


「第十騎士団が、(ちまた)で何と言われているのか知っているのか⁉」


 国王の言葉に、第十騎士団長が、どこか(ほこ)らし気な笑みを浮かべる。

 そして、実に堂々とした声音で言い放つ。



「フルテン騎士団です!」



 ………………

 ……酷い。あまりにも酷い呼び名である。

 決して、堂々と言う事ではない。

 国王など、頭を抱えている。


「その名を聞いて、どう思った……?」

「我々を表す『フル〇ン』と、第十騎士団を表す『テン』を掛けた良き名だと思います! きっと、国民から親しまれているのだと思います!」


 親しまれてなどいない。

 蔑称(べっしょう)である。

 (さげす)まれているのである。

 誇らし気に語る意味が分からない。


「親しまれてなどおらん! 皆、お前達を蔑んだ目で見ているぞ!」

「それはそれでゾクゾクします!」


 国王が崩れ落ちる。


「………………」


 もう、言葉も出ない様だ。

 国王の顔は泣き出しそうだった。


「聞きましたか? 父上」


 崩れ落ちた国王に、王太子が嬉しそうな声音で話しかける。

 自分の父親がこんな有様だというのに、どんな神経をしているのであろうか?


「第十騎士団長は、我々と同じ『M』でもあるのです」


 だからどうした?

 お前が、蔑んだ目で見てほしいというだけで婚約破棄騒動を起こしたのは知っているが、国王を巻き込んでやるな。

 国王も『M』であるらしいが、お前と違って、良識ある『M』だ。

 一緒にするのは流石に失礼だろう。


「二属性持ちですよ。二属性」


 宰相も嬉しそうな声で国王に言う。

 心底どうでも良い二属性持ちだ。

 ファンタジー小説なら、魔法適正とかで二属性の凄さを強調する場面なのだろうが、残念ながら、本作品は変態コメディー小説だ。

 変態の二属性は、ただ、変態性の上昇でしかなかった。


「彼と出会った時、天啓(てんけい)だと思いました」

「ええ。彼ほどの逸材は、滅多にいません」


「「彼ならば、『露出願望者』と『M』の友好の懸け橋になってくれるでしょう!」」


 王太子と宰相が声を(そろ)えて言う。

 声を揃えた割に、極めてどうしようもない主張だった。


「そんな懸け橋は叩き壊せ! そして、断交しろ!」


 国王が叫ぶ。

 絶対に必要ない懸け橋なのだから仕方ないだろう。

 それに、両者に手を組まれても(ろく)な未来はない。

 本当に断交してほしいところだった。


「王太子殿下……。宰相閣下……。自分の事を、そこまで買ってくださっていたのですね……」


 第十騎士団長が感動した様に言う。

 そんな第十騎士団長に、王太子と宰相は、優しい微笑みで(うなず)いて見せた。


「妙な連帯感を持つな! 解散しろ!」


 国王が怒鳴るが、三人は聞こえていないかのように手を重ねる。

 そして、示し合わせたかのように声を揃えて言う。


「「「我ら、生まれた時は違えども、同年同月同日に死す事を望む!」」」


「義兄弟の契りを結ぶなぁぁぁっ!」


 三国志ファンにキレられそうな義兄弟の契りだった。

 誰か、この変態共を黙らせてくれ。


「王太子、宰相、第十騎士団長。皆、国の重要人物です。結束が強くなるのは良いではありませんか」

「変態の誓いでなければなっ!」


 王太子の言葉に、もう何度目になるかも分からない怒声を国王が響かせる。


「頼むから! 己の変態性は自己完結させてくれ! それなら文句を言わないから!」


 国王が(なげ)く様に言う。

 まあ、確かに、自己完結してくれるなら文句はない。

 変態性の一つくらい、持っている者は沢山いる。

 此奴(こいつ)らが問題なのは、その変態性を国家運営に持ち込んでくるからだ。


「陛下……」


 第十騎士団長が国王に声を掛ける。

 そして、泣き崩れる様にして床を()う国王に対し、爽やかな微笑みを向けていた。

 その微笑は、見る者を安心させるかのような温かいものだ。

 暖かいものなのだが……


 国王の目の前で、今もブランブランとはさせている。


「陛下は、Mだと御聞きしています」


 何を言い出しているんだ。

 国王の性癖をほじくり返そうとするんじゃない。


「最近は、荒縄で縛り上げられるのがマイブームだとか……」

「何故、知っている⁉」


 国王が驚愕に叫ぶ。

 それは、まあ、自分の性癖のマイブームを部下に知られていたら驚くだろう。


「王太子殿下に御聞きしました」

「何を教えているんだ!」


 教える以前に、王太子が、自分の父親の性癖マイブームを把握しているのが本当に怖い。

 普通、自分の父親の性癖など知りたくもないだろうに、王太子は、どうやって知ったというのか。


「私は、そんな性癖を、誰もが(さら)け出せる世の中を作りたいのです」

「世の中が終わるぞ! そんな野望は捨てろ!」

「王太子殿下も、宰相閣下も、私と同じ気持ちです」

「そんな心を一つにするなっ!」

「私は先駆けを任されたのです」

「向かう先は奈落の底だぞ!」

「仮にそうであっても、私は、全力を尽くします!」

「本当に止めてくれ!」


 叫ぶ国王の前では、第十騎士団長が決意を秘めた瞳で拳を握っている。

 そして、その第十騎士団長の背後では、王太子と宰相が感動に涙を流していた。


「流石は、私達が見込んだ男だ」

「ええ。私達の目に狂いはありませんでした」


 小さく、拍手までしている。

 変態の、変態による、変態の為の決意表明でしかない。

 何を感動する事があるというのか……。


「我ら、変態義兄弟、長兄は彼にしようではないか!」

「ええ! 年齢など些細(ささい)な事です! 彼こそ、長兄に相応(ふさわ)しい器の持ち主です!」


 いや、その器は壊れていると思うぞ。

 もしくは、名状しがたい形状をしているに違いない。

 少なくとも、私には何一つ理解できなかった。


「拝命しましょう! ……長兄として、変態達の先駆けとして道を切り開きます!」

「良く言ってくれた!」

「変態の未来は明るいですぞ!」


 この国の未来は暗い。

 国王の世代交代が怖くて仕方がなかった。


「本当に……、本当に勘弁してくれ。この国をどうするつもりなのだ……」


 国王の声は消え入りそうだ。

 消え入りそうな声で、この国の未来を案じている。

 このままでは、迂闊(うかつ)に退位もできないだろう。

 おそらく、死ぬまで現役で国王を務める羽目になりそうだ。


「御安心ください。我らが居る限り、この国は安泰(あんたい)です」


 王太子が言う。

 だが、国王の言葉をちゃんと聞いてほしい。

 お前らが居るから、国王は先行きを案じているのである。


「………………」


 国王は死んだ目をしている。

 もう、何も話す様子は無かった。

 そんな国王の前では、三人の変態が騒いでいる。

 国の行く先を好き勝手に語っている。

 変態の語る、変態の為の未来。

 変態にとっての希望。常人にとっての絶望。

 そんな語らいだった。

 そして、その語らいを無言で見つめる国王の目の前では……




 何が、とは言わないが、相変わらず、ブランブランと揺れていた。


前書きにも書きましたが、本作品は『婚約破棄の理由が酷すぎる!』という作品の続編になります。

前作も、本作品と同じようなノリの話なので(ここまで酷くありませんがw)、気になったらお読みいただけると幸いです。

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