【実質0円】非効率だと追放された『ポイ活』師、多重連結還元ルートで無双する ~今さら戻ってこいと言われても、もうダイヤモンド会員(国家級)なんで無理です~
「異世界でポイ活?」と思われた方も多いかもしれません。 ですが、考えてみてください。最強の魔法を放つために必要な魔力が、もし「お買い物」で貯まるポイントだったとしたら……。
誰よりも地道に、誰よりもセコく、そして誰よりも熱く。 1円の無駄を削ぎ落とした先に待つ、最強の「節約無双」をお楽しみください!
※この物語はフィクションですが、作中の還元ルートを真似しても異世界ポイントは貯まりませんのでご注意ください。
「カズマ、お前はクビだ。今すぐこのパーティから出て行け」
勇者シグルドの冷酷な宣告が、迷宮15層のキャンプ地に響き渡った。
世界ランキング1位、人類の希望と謳われるパーティ『天穹の剣』。
その荷物持ち兼会計担当として尽くしてきた俺に対し、投げられたのは底の知れない蔑みだった。
「理由を、聞かせてもらえますか」
「決まっている。お前の『ポイ活』だ。我らエリートに必要なのはタイムパフォーマンス(時間効率)だ。
魔物を倒す1秒を惜しむべき時に、お前は1ゴールドでも安く備品を買うために店をはしごし、落ちている証票を拾い集める。
挙句の果てには『還元率が高い日だから』と遠征日をずらそうとした。そんな時間の無駄を愛する無能、我がパーティには必要ない」
シグルドの背後で、聖女や魔導師たちがクスクスと嘲笑を浮かべる。
彼らにとって、数ゴールドのポイントをコツコツ貯める行為は、理解しがたい卑しい悪癖に過ぎなかった。
「お前のユニークスキル【神の台帳】も、ただの家計簿管理だと思っていたが……。
失せろ、この低能還元野郎。お前が節約した端金など、俺たちが魔物を一匹倒せば済む話だ」
シグルドの蹴りによって、俺の魔導端末(スマートフォン型)が地面に転がった。
俺はたった一人で、神塊迷宮を歩き始めた。
彼らは分かっていない。
現代の王国において、ポイントはもはや通貨を超えた力――「魔力素」の所有権そのものであることを。
かつて神々が管理していた魔力は、今や巨大な『経済圏』を持つ企業連合が独占管理している。
『星天』、『閃光』……。
彼らの決済サービスを利用することで、天界のサーバーから魔力が「ポイント」として還元される仕組みだ。
「タイパ重視、か。……だが、還元率を無視した力任せの攻略こそ、一番の『無駄』だってことに、あいつらは気づいていない」
◇
辿り着いたのは、15層最深部の安全地帯。
黄金色に輝く看板『ポイント・サンクチュアリ』の店内で、俺は店員のミナから、今夜の目玉商品の説明を受けていた。
「いい、カズマ。今夜解放されるのは『万象帝国重 2910kcal』。……通称、肉重(2910)よ」
その禍々しいまでの肉のピラミッドが描かれたチラシを見て、俺は唾を飲み込んだ。
「ミナさん……これ、還元ポイントが『29,100,000ポイント』ってなってますが、表示ミスじゃないんですか?
弁当一つに数千万ゴールド相当の還元なんて、経済が崩壊する」
「いいえ。これには『経済圏の覇権戦争』が絡んでいるの」
ミナは冷徹な瞳で端末を操作した。
「今、最大手の『星天経済圏』と、新興の『閃光経済圏』が血みどろのシェア争いをしているわ。
彼らにとって、高ランク探索者の『決済データ』は喉から手が出るほど欲しい魔力資源。
だから彼らは、数千億の広告宣伝費をこの一つの商品に全投入したのよ」
「宣伝費を、還元ポイントとしてユーザーにバラ撒いているのか……!」
「そう。この弁当を買ったという『実績』を刻んだ決済アプリは、その瞬間、経済圏の神から莫大な魔力を直接授けられる。
つまり、これは食べ物じゃない。『経済圏の神々が撒いた、最も効率のいい魔力鉱山』なのよ」
ただし、その恩恵を受けられるのは、最も早く、最もスマートに「正しいルート」で決済した者だけ。
俺は【神の台帳】を起動した。
複雑に絡み合うクレジットカード、電子マネー、クーポン、そして期間限定のキャンペーン。
それらをパズルのように組み合わせた先にだけ、その「2910万還元」というバグじみたルートが存在していた。
◇
「どけぇ! その魔力(還元枠)は俺たちのものだ!」
時刻は20時59分。ポイント解放の直前。
シグルドたちが、強引にレジへと割り込んできた。
彼は「ダイヤモンド特権カード」を掲げ、不遜に笑う。
「俺は勇者だぞ? このエリアの還元枠はすべて俺が独占する。
……無能なカズマ、お似合いだ。1ゴールドのために必死になる姿がな。
俺は特権を使って、この『肉重』の還元をすべて根こそぎ奪わせてもらう!」
シグルドは自慢のエリート攻略AIを起動させ、無理やり多重決済を試みようとした。
だが、その時、俺の【神の台帳】が真っ赤な警告を発した。
「シグルド、やめろ! お前のAIは『お得』しか見ていない。
今、その高還元ルートには、星天経済圏が仕掛けた『不正検知トラップ』が張られている!
強引な多重決済(二重取り)は規約違反でBANされるぞ!」
「黙れ! 規約だと? 俺が規約だ!」
シグルドがクリスタルへ手を伸ばした。
だが、その動作には焦りによる魔力の漏れがあった。
俺はミナから叩き込まれた「2秒間に5発」の極意を解き放つ。
魔法を使わず、物理的な打撃でシグルドの腕を弾き、俺はコンマ数秒の間に端末を操作した。
三神ゴールドを経由し、飛翼ペイを介して天空ペイへ流し込む。
さらにショップ独自の「半値シール(50%OFF)」を魔導演算で同期させ、決済額を最小に、還元率を最大へと跳ね上げる。
「多重連結還元ルート(スタック・リワード)――確立!」
ドォォォォン!
俺の端末が黄金に輝き、シグルドの端末は赤く点滅した。
『警告:不正な決済試行を確認。勇者シグルドのアカウントを永久凍結(BAN)します』
「な……なんだと!? 俺のゴールドアカウントが……ポイントが、消えていく……っ!?」
シグルドが絶叫する中、俺の画面には夢のような数字が表示された。
『決済完了。獲得:29,100,000ポイント(実質:マイナス2900万ゴールド)』
「支払った金額より、戻ってきたポイントの方が多い……。これが、真の最適解だ」
◇
「決済ありがとうございます、カズマさん。……良い『勝利の同期』を」
ミナが微かに微笑んだ。
俺は獲得したポイントを使い、通常なら数億ゴールドする『神殺しの聖剣』を注文した。
もちろん、全額ポイント払いだ。
かつて俺を「非効率な無能」と笑った男は、今や1ポイントの還元すら受けられない、真の経済的弱者となった。
「カズマ……満足したか?」
「ああ。最高だ。……ミナさん、俺、分かったんだ。
俺が求めていたのは特権じゃない。誰よりも賢く、この世界のルールを乗りこなして掴み取る『1ゴールドの重み』だったんだ」
「ふん、少しは狼らしい顔つきになったな。……だが、勘違いするなよ?
明日はさらに予約倍率が跳ね上がる『国産竜うなぎ(ブランド竜の希少部位)』の予約開始日だ。
これこそ、各経済圏が社運を賭けてポイントを積み増している、今期最大の激戦区よ」
「望むところだ。明日もこの場所で、誰よりも誇り高くスイッチが押されるのを待つさ」
こうして、非効率だと追放された俺の無能な日々は終わった。
代わりに始まったのは、世界中の還元ルートを喰らい、その力を血肉に変えながら、1ポイントの自由のために戦う――最高に贅沢で、泥臭い『節約無双』だった。
「あ、そうだ。カズマさん。忘れていました」
立ち去ろうとするミナが、いたずらっぽく振り返った。
「年間の獲得ポイントが一定を超えると、来年は『国庫監視報告(確定申告)』という名の、回避不能な税金徴収デバフが降りかかります。……覚悟しておきなさい」
「……嘘だろ、税務署(管理局)の監視魔法からは、俺のスキルでも逃げられないのか!?」
俺の絶叫が、神塊迷宮の15層に響き渡った。
黄金色に輝く看板の下で、今夜もまた、狼たちの咆哮(決済音)が響き渡るのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
カズマ、ついにやりました! 勇者シグルドの「タイパ(時間効率)」を、圧倒的な「コスパ(費用対効果)」で叩き潰すシーンは、書いていて非常にスッキリしました。
「2910kcal(肉重)」の争奪戦、いかがだったでしょうか。 現実でも期間限定のキャンペーンや、深夜の先着順予約はまさに戦場ですよね。あのヒリつく感覚をファンタジーの格闘戦に落とし込んでみました。
しかし、ラストの「20万ポイントの壁(確定申告)」。 こればかりは異世界の英雄でも抗えない最強のデバフかもしれません……(笑)。
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