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気練討堕  作者: 葉山 歩
第五章 行きつくところ
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第五章 行きつくところ

気練討堕 第五章 行きつくところ

 1


 死刑囚に、その逃亡を手助けした者。久しぶりに「気練師」という共通の悪を手に入れた仮面の騎士団は、キズナの新作発表会を予定通り開催することで意見を一致させた。死刑囚逃亡という非常事態ではあったが、むしろそんな非常事態だからこそ、民衆の結束を深める為、という名目だった。

 キズナ新作発表会会場となっているのは、例の宮殿前広場だ。その日はキズナの新作を見に来た群衆でごった返していた。

 ワカバとコウヨウ、フレアは、広場から少し離れた建物の屋根の上に潜み、見つからないように広場の様子を伺っていた。

 宮殿二階の正面は広いバルコニーとなっている。二階といっても、一階がかなりの高さを持っているので、必然的にそのバルコニーも高い位置にあり、広場を一望することができた。今そこにはブルーとイエロー、レッドの三将軍が揃い踏みし、通常の騎士団員も大勢後ろに控えている。

 広場の方には、大勢の民衆。そして広場の周囲には、その群衆を取り囲むように、仮面の騎士団が何人も配置されている。その傍らには、騎士一人につき一つずつ、大きな布で覆われた、人の腰ほどの高さの物が置かれていた。

 大きな拡声器を用い、レッドが話をし出す。

「先日の、死刑囚が気練師の補助で逃走するという事件! 皆さん恐ろしい思いをされていると思います! 我々騎士団が全力で追っておりますので、どうか皆さんご安心ください!

 あの恐ろしい気練師という存在に抗う為にも、今日、今一度皆の絆を再認識し、皆で、一致団結しましょう!」

「おーおー好き勝手言ってやがるぜ」

 コウヨウとフレアはその話をまるで意に返さないどころか、ヘラヘラと笑って聞いていた。その様子にワカバは苦笑する。どうやら自分もだいぶこの人達の感性に近づいているようだ。ワカバにしても、今の話に、怒りや不快感といった感情はまるで浮かばなかったのだ。ただ何となく、哀れみのこもった半笑いが浮かんだ。

 次はブルーが話し出す。

「新しいキズナはミストタイプ! もう体に傷を付ける必要もありません! 定期的にサッと一吹きするだけで、ずっとキズナの効果を得られます!」

 おぉ~、と群衆から歓声が上がる。

 何がそんなに凄いのやら、と三人は冷ややかにそれを聞いていた。

 色々な人の長々しい挨拶が終了すると、いよいよ、新作のキズナがお披露目される時間となった。仰々しい音楽と共に、広場周囲の仮面の騎士団が、傍の物を覆っている布を取っていく。

 それは、噴霧器であった。おそらくキズナが入っているであろう円筒形の容器は、人の膝の上くらいの高さがある。容器の上はレバーとなっていて、押し込むと、中身が噴射されるようだ。

 三将軍によるカウントダウンが始まった。

「3! 2! 1! 0!!」

 仮面の騎士達が、レバーを一斉に押す。すると、霧状のキズナが、勢いよく音を立てながら噴霧器から放出される。広場はたちまち、キズナの霧に包まれた。


「……クッサ!!」

 キズナの臭いが、ワカバ達がいる場所まで届く。その異様な臭いに、ワカバは思わず鼻を抑えた。コウヨウとフレアも手で口元を覆っている。

 しかし……

「良い匂~い」

「心地良いな」

 群衆からは好評だ。どうやら気が澱んでいる人間と、そうでない人間とでは、感じ方が違うようだった。

「麻薬みたいなもんかもな……お前ら、あまり吸い込まないようにしとけ」

「ふぁい……」

 コウヨウがフレアとワカバに向けて言ったが、それを言われずとも、ワカバはなるべく呼吸したくなかった。

 会場はキズナで盛り上がっている。キズナに包み込まれた群衆が、そのキズナについてあれこれ語り、会場はしばらくガヤガヤとしていた。

「ん……?」

「おい、どうした?」

「ん!? なんだこれ、おい!」

 しかし、その盛り上がりの種類が、段々と変化していく。

「ほぅ、始まったかな……」

 コウヨウはニヤリと笑みを浮かべ、冷たく呟く。

「皆さん、落ち着いて下さい。キズナはまだまだ、た~っぷりありますから」

 ブルーは群衆へと呼びかける。レッドやイエロー、他の騎士団員も、まだ異変には気づいていない。

「キャー!!」

「お、おい、なんだこれ!!」

「た、助けてくれ!! 誰か!!」

 広場の中央にいた人達から、雪崩れ込むように、引き寄せあっていく。

 キズナによって、ただでさえ澱んでいた群衆の気が、さらに急激に活動を低下させる。

 十年前よりはるかに低まった臨界点も限界を迎え、ついに堕人化が始まった。

 会場はパニックだ。

 始めは笑顔を浮かべて対応していたブルーや他の騎士団員も、その異様さに気づき出す。

「さ、面白いものが見れるぞ、ワカバ」

 コウヨウが言う。

「『極大堕人』。共振も度合いが高まると、気が本来の状態より高まったり低まったりする、っていうのはシュターソンの爺さんから習ったよな? だがその状態で澱んだ気は、臨界点が異様に低まるんだよ。つまり、普通なら堕人に成るような気の状態でも、堕人に成りにくくなるんだ」

『キズナが普及し始めて、堕人の発生数はぐっと減った』

 仮面の騎士団の見解の理屈を、ワカバは理解した。当人らはその理由を都合よく解釈し、潜在する問題に気づかなかったのだ。

「するとどうなるか。共振によって似たような性質の奴らがどんどん増えていき、気の臨界点はさらに下がる。するとまた共振の度合いが高まり気が澱み、臨界点は下がる……この繰り返しだ。これでこの街みたいに気の澱んだ奴がどんどん増えていく」

 コウヨウが話す間も、人間の収束は止まらない。

「しかし当然それにも限界がある。臨界点が無くなる訳じゃない。気の澱みが酷くなりすぎると、当然堕人が出来上がる。馬鹿みたいな数の人間が寄せ集まって出来た、AだのBだのSだのじゃ括れない、とびきり、超特大の堕人、それが極大堕人だ」

 広場の中心に重力の中心があるかのように、人間が吸い寄せられていく。広場の中心に、人間の塊が出来上がっていく。

 その塊は、ボコボコと脈打つように波立っていたが、しばらくすると、その波が中央に集まり、コブのように盛り上がってきた。そのコブは次第に高さを増していく。そのままコブが上がっていくと、今度は逆にくびれてきた。

 頭だ……!

 ワカバは直感した。

 くびれた部分も上がっていくと、次は幅広い部分が現れる。……肩だ。その状態で上昇が止まると、今度はその脇から、二つの小さな塊がせり上がる。その塊は、頭を超えるほど、高く、長く伸びていく。……腕。腕は地面を押し、体全体を押し上げていく。

 まるでその下の地面から這い出てくるかのように、超特大の堕人が、次第にその姿を現していく。

 コウヨウはその様子を見ながら、楽しそうにワカバに話していた。

「僕が十年前に殺したのは、大体百人ほどの人間が融合していた」

「百!? それって、百人が何匹かの堕人に成ったってことじゃなくて、一匹で百人が融合した堕人に成った、ってことだったんですか!?」

「コイツらはそんなもんじゃないぞ……! 三百、いや四百……

 キズナ新作発表会とかいう時点で、こんな想像はついたさ。ただでさえ、相当な数の人間の気が澱んでいたのに、さらにここに来て別のキズナだ。下がりに下がった臨界点も、ついに限界を越えたようだな!

 おぉ、まだ人が吸い寄せられていくな。五百……」

 ワカバ達の視線は、段々と上がっていく。

「堕人のあの石仮面のような無表情は見たか!? ククク……仮面。それに大勢になってしまえば、暴力的にも強い! 自分の顔も見えづらくなるし、責任も問われない! 愚か者が行き着く先は、本能レベルで同じところなのかもな!」

 もはや広場周囲の人間だけではない。街全体の人間が、堕人に吸い寄せられていく。家の中にいても関係無い。窓や壁を突き破って、広場中央に集まっていく。街中の気の澱んだ人間は、もれなく引き寄せられていった。

 気の澱んだ人間にだけ適応される重力。気の澱んだ者同士で、引かれ合っていく。

 そうして次第に、極大堕人としての姿形が作られていく。

「何が起きてる……!!」

「おい、どこかに気練師がいるはずだ!! ……うわぁ!!」

 ブルーとイエロー、レッドも堕人に取り込まれていった。

 腰から上が姿を現すと、次第に脚も昇ってくる。極大堕人はその全貌を現した。

「八百? いや九百? ……千!? 千人くらいは取り込まれたんじゃねぇか!? ……ハハハッ! いいね、僕もここまでのは見たことないな!」

 フレアでさえも驚愕の表情で極大堕人を見つめている。だがコウヨウは興奮しているようだった。

「傲慢、無知、恥知らず、つけ上がった愚か者の極致! それがこの化け物だ!! ハハハハハッ……! 救いようのない、脳腐れの末路だ!! ハハハハハッ!!」

 コウヨウはワカバの肩を抱き、興奮しながら言う。

 狂気。

 この状況、そしてこの状況にも関わらず興奮する、笑顔とも怒りともつかない表情を浮かべたコウヨウに狂気を感じ、ワカバはゾクリとした。

「さぁ、よく見ておけ! ワカバ! これだ……これこそが堕人なんだよ……! これが、堕落した生物の成れの果て……堕人だ!!」 

 仮面を着けた者、キズナを付けた者、ありとあらゆる人間がごちゃ混ぜに融合し、巨人が出来上がる。

 ワカバがあれだけ大きいと感じていた宮殿も、極大堕人の側では遥か下、その膝くらいの高さしかなかった。

 極大堕人は大きく振りかぶると、その宮殿を力任せにぶん殴る。すると、宮殿は一撃で粉々に破壊された。

 コウヨウは満足したように深くため息をつくと、落ち着きを取り戻し、言った。

「さて、どうする? 僕としてはこのままこの化け物が暴れるのを見物して、あとはスタコラサッサでも別にいいんだがね」

 ワカバは呆然としていた。答えは何となく分かっていたが、一応聞いてみた。

「コイツ、放っとくとどうなるんですか……?」

「ただただ、暴れ回る。本能のまま、気が済むまで。その命、尽きるまでな。この規模なら被害はこの街だけじゃ済むまい。周りの国にも及ぶだろうな」

 ワカバの予想通りの答えが返ってきた。

 その次にワカバが思い浮かべたのは、まだ堕人に成っていない人。

 シュターソンさんもカルミンもまだ街にいる。そういえば、あのイダという女性は? ピンカラという少年はどうだろう。きっと堕人に取り込まれていない人も、大勢いるはずだ。

「オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ォ゙゙ォォォォーーーーー!!」

 極大堕人の凄まじい咆哮。あまりの声量にワカバは思わず耳を塞ぐ。だがコウヨウ達に伝わるように、負けじと声を張り上げた。

「これだけ大きい声で叫ばれたら、それだけが全てと思ってしまうけど、そんなことはないはず!! ……なら、助けたい!! 堕人に成らない人達は……まだ、助けられる人達は……!!」

 僅かの間。顔を見合わせるフレアとコウヨウ。

「そうこなくっちゃな」

 フレアがすらりと剣を抜く。

「やれやれお人好しだぜ」

 コウヨウはそんなことを言いつつも、どこか嬉しそうだ。

 意見は一致した。

 三人は極大堕人に向かって行った。


 ワカバ達三人は、極大堕人に向かって走った。自分から言い出したはいいものの、こんな化け物をどう倒すのか、ワカバには皆目見当もつかず、ただコウヨウとフレアについて行っていた。

「さてワカバ君。少し復習しようか。気の主な三つの用方は何だったかな?」

 コウヨウが走りながらワカバに問う。こんな時に何なのだろう。ワカバは戸惑いつつも答えた。

「は、はい。自分に合う属性の気を操る『気操法』、対象の気を感知する『巡気感法』、身体に気を流し強化する『身気剛法』の三つです」

「そうだね。では気操法の基本の五属性は、何だったかな?」

 もう極大堕人のすぐそばまで来ていたが、コウヨウは質問を続けた。

「火、水、風、雷、土です」

「そう」

 答えるやいなや、コウヨウは飛び上がった。身体の周りに風を纏わせ、浮かび上がっている。はるか高く、極大堕人の後頭部の前まで飛ぶと、言った。

「気操法で操れる属性は何も一人につき一つだけじゃない。主要三用法全てを極め、さらに基本五属性も全て整えていくと、こんなことができるようになる」

「師匠ぉ!」

 近づこうとしたワカバを、フレアが手で制す。

「巻き込まれるぞ。……それに、しっかり見てろ。あれが君の、辿り着くべき場所だ」

光気操法(こうきそうほう)

 コウヨウが胸の前で、両の掌をかざし合わせる。すると、その中心に真っ白な光の粒子が出現した。光は集まり球体となり、その大きさを増していく。まずはコウヨウの手を包み込み、それから腕を、そして体全体を、包み込んでいく。それでも拡大は止まず、とうとう、極大堕人の頭部全体をも包み込んだ。コウヨウと極大堕人の頭部は、スッポリと光の球体の中に収まった。

 極大堕人はコウヨウに気づくと、眩しそうに振り向く。そしてコウヨウに向かい、荒々しく腕を振りかざす。しかし、それが届く直前だった。

(ひらめき)

 途端に球体が大爆発を引き起こした。まばゆい白光(はっこう)の波が四方八方に広がっていく。その勢いは凄まじく、遥か下、ワカバとフレアがいる場所でも猛烈な爆風が届いた。ワカバは立っているのがやっとなほどだった。

 強烈な光と爆風が収まったら、ワカバはコウヨウのいる方を見上げた。

 すると、極大堕人の胸から上が、消滅していた。肩という繋がりを失った堕人の腕は、そのまま地面に落下する。腕だけでも相当な大きさなので、その衝撃は大きい。

 コウヨウは極大堕人の、かつて頭があった場所、胸の辺りに着地すると、ワカバとフレアに向かって叫んだ。

「腕が落ちた! コイツは分裂しても、融合した人間の命がある限り、また暴れ出す! お前ら左右の腕の相手を頼むぞ!!」

「さぁ、行くぞ! 開戦だ!!」

 それまでワカバを制していたフレアが、その肩をポンと叩き、腕の方に駆け出して行った。慌ててワカバも逆の腕の方へ駆け出す。


 巨大な腕は探すまでもない。ワカバが相対しているのは、右腕だった。巨大な腕がビクビクとのたうち回っている。

 こんなもん、どうすりゃいいんだ……

 ワカバは呆気に取られていた。すると、腕とも脚ともつかない触手のような突起が、巨大な腕のあちこちから、突き出てきた。その突起を脚にして、巨大な腕は体勢を立て直す。そして、蜘蛛かムカデかのような動きで、ワカバに向かって猛然と突き進んで来る。これではもはや、堕「人」と呼べるかも怪しい。巨大な腕の姿をした、怪物だ。

 ワカバは逃げ出したい衝動に駆られたが、そんな訳にはいかない。自分で言い出した戦いであるし、何より、人を守らねばならない。

「風気操法 衝空波!」

 迫り来る右腕堕人に向かって、両手でしっかり構え、今自分が出せる最大の力を込めた、衝空波を撃つ。

 ワカバに向かって突進していた右腕堕人の、手のひら部分が四散した。その衝撃で何とか、右腕堕人の猛進は止めることができた。しかしまだ腕の大部分は形を保っている。そして、四散した手のひらの一部が、さらに細かい堕人となって蠢き出した。

 分裂しても、また動き出す。

 ワカバはコウヨウの言っていたことを理解した。焦ったが、とにかく矢継ぎ早に攻撃していくしかない。


 フレアと相対した左腕も、同様に触手を生やし、のたうち回っていた。

「ふーむ、厄介な頼みごとをしてくれたね、あの子は……」

 フレアはワカバの訴えを思い出し、苦笑いを浮かべる。

 分裂を抑える為に、なるべく全体的に、細かい攻撃を加える必要がありそうだ。

 フレアは炎を纏った剣を構える。

「炎気操法 桜花散燼(おうかさんじん)!!」

 大きく円弧を描くように剣を振るうと、桜吹雪のような細かい炎の斬撃が、左腕の堕人を襲う。


「よし、俺も始めるか……!」

 極大堕人の胸の上に立っていたコウヨウは、二人の様子を見届けて、自分も戦いに入ろうとした。

 しかしその時、極大堕人がバランスを失い、倒れ始めた。このまま倒れたら、街に直撃し、甚大な被害をもたらす。

「こりゃいかん!」

 コウヨウは急いで地面に向かい飛び出し、倒れる堕人に先回りする。そして振り向きざまに技を放った。

「風気操法 颪壁甲(おろしへきこう)!!」

 馬鹿でかい風圧の壁に、倒れる極大堕人が直撃する。倒れる速度は緩和され、そのままゆっくりと、極大堕人は街に倒れ落ちた。しかし、直撃の衝撃は和らげたものの、それでも建物を破壊するには充分だった。その上、風圧の壁と街に倒れた衝撃で、極大堕人はまたバラバラと何体かに分裂してしまった。

「ちっ、面倒くせぇな……!」

 コウヨウは悪態をつきながらも、手前にいる堕人から、急いで攻撃を始めた。


 その頃ワカバは、急いで堕人達を倒さなければならないにも関わらず、戸惑いが先に立って動けないでいた。

 ワカバの目の前にいたのは、堕人と化した生みの親、ステヤとアーマだった。


 2


 極大堕人は今非常に不安定な状態だ。堕人と成って間もなく、しかもこの巨体故に、堕人としての意識とそれぞれの人間の意識が混在している。

 ステヤとアーマ、二人の体は完全に堕人として融合していた。しかし頭だけが少し外側に飛び出て、向き合っている。

「何であんな奴また引き取ろうとしたのよ!!」

「そうしないとお前がまたグズグズ文句を言うと思ったからだ!!」

「いっつも外ヅラだけはイイわね!! ブルーにもヘコヘコ媚びへつらって、善人ヅラして!!」

「お前はいっつも文句ばかりだな!! いつもいつも、私のやることなすこと反対して!!」

「アンタがやっていることと一体何が違うっていうのよ!! 弱者ぶって責任を他人(ひと)に押し付けて!!」

 二人は罵り合っていた。

 彼らは堕人になっている。生みの親だが思い出もないし、むしろ嫌いな存在だ。それでも、自分を産んだ両親を殺すということには、ワカバには抵抗があった。しかしその思いは、次第に大きくなる別の感情に上書きされていった。

 彼らが、あまりに情けない。

 この期に及んでまだ、責任のなすりつけ合いをしている。きっと今までずっと、こうやって生きてきたのだろう。嫌われたくないし、責任を取りたくもないから、いつも誰かの言う通りにする。いつも誰かに決めてもらう。そんな自分達を、か弱い善人だと思っている。

 哀れみ。それも、その精神の軟弱さに対する哀れみ。およそ両親という存在には、あまり抱きたくないこの感情が、ワカバが彼らに抱く最も大きな感情となった。

 どのみちこうなってしまっては、もう選択の余地は無い。

 二人がワカバに気づいた。

「お前……! 助けて貰って何だこれは!! これが生んだ親にすることか!!」

「ちょっとやめなさいよ!! ……ね、ワカバ、良い子でしょ? 私達、親子なのよ? こんなことしなくてもいいじゃない、ね?」

 ワカバは冷たく呟く。

「もう遅いよ」

「いやぁ……! ちょっとやめてよ……助けてよ……!」

「そうだ、安心して。俺はあんた達を親だとは思ってないし、そう人に言うこともないから。あんた達に育てられていたら、死刑で楽しむような、しょうもない人間に成っていたんだと思う」

 ワカバには、絶対に譲れない思いがあった。二人に力強く言い放つ。


「俺の名前は、キサラギ・ワカバ!! オージャスとアサナの息子だ!!」


 そして歩み寄り、静かに言った。

「捨ててくれて、ありがとう」

「……! それが生んだ親に対する――」

 一閃。

 ワカバはその手で、両親の首を切り裂いた。


 その直後、ワカバは首元で何かが弾けるのを感じた。

 そしてその瞬間、世界が変わった。

 倒壊した建物、散らばる瓦礫、あちこちから立ち上る煙、堕人。あらゆる情報が、その鮮明さや緻密さを格段に向上させ、ワカバの中に一気に流れ込んでくる。

 圧倒的な情報量が一度に大量に流れ込んできて、ワカバは混乱しかけた。一瞬、本当に世界が変わったのかと錯覚した。

 周囲の情報だけではない。心臓の鼓動、血液の流れ、筋肉の動き、気の流れ。自身の内部の情報も、今までより明確に把握できる。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、確かめられないがおそらく味覚もだろう、感覚の全てが、今までと全く異なっていた。

 最も大きく変化したのが、気の流れ。圧倒的に変化した気の流れが、心身の機能全てを、今までワカバが感じたことがないほどにまで、上昇させていた。

 喉元は見えないものの、呪いが解けたこと、生みの親の死がそれに繋がったこと、ワカバは感覚で理解した。キズナが抑え込んでいたワカバの気が、ようやくその本来の力を発揮し始めたのだ。

 閉じていた襟を開け、喉元に手をやってみる。手に触れる度に憂鬱になっていた、あの塊が無い。ただそこに直接触れる空気が、やたら涼しく感じられた。

 呪いが、解けた。

 ワカバは自らのその手で、呪われた絆を断ち切ったのだ。

 あまりにも変化した世界は、とても心地良かった。呪いが解けた喜びと共に、まだ味わっていたい。だが、今はそれどころではない。まだ助けを求めている人がいる。戦わねば。ワカバは気合を入れなおす。

 目の前には、たった今自分が殺した両親の死体。しかしそれはもう眼中に無い。

 ワカバは別の堕人に向かって、飛ぶように駆け出した。


 極大堕人は、もう原型を留めていない。あちこちに分裂した堕人達が蠢いている。どの堕人がどの部位であったかも、判別がつかなくなってきた。これでは人間が寄せ集まってできた、蠢く肉塊だ。

 それでも、ただ堕人を倒すだけであれば、コウヨウやフレアが揃えば時間はかかるが問題はない。しかし問題は、周囲にいる堕人に成っていない人。

 この戦いは、堕人からそんな人達を守る戦いである。大量の、しかも一匹一匹がかなり大な堕人から、彼らを守らなければならない。その為、戦いはどうしても後手に回らざるを得なかった。

 フレアが堕人と対している時、その後ろにはシュターソンとカルミンがいた。

「爺さん! カルミン! 早く逃げな!」

「は、はひいぃぃぃ~~~!!」

「わ、分かっておるわい!」

 二人が慌てて逃げ出す。

 助けたい人があまりに多い。次にフレアの目に入ったのは、おそらく親子であろう、大人の女性と小さな女の子。そして今まさに別の堕人が彼女らに襲い掛かろうとしている。駆け出すフレア。だが今相対していた堕人の腕が伸びてきて、フレアの脚を掴んだ。

「しまっ……!」

 急いで堕人の手を切り、親子の元へ全力で走る。しかし、このままでは間に合わない。

 途端、突風が吹き荒れた。

 師匠か……?

 フレアは思った。しかし、そこに立っていたのは、ワカバだった。母と娘を、両手に抱えている。

「ワカバ!?」

「姉さん! こっちは大丈夫! 堕人に集中して!」

 そう言うとワカバは、親子を離れた場所に置いて、飛ぶようにまた別の堕人の元に向かっていった。

 フレアはしばらく唖然としていたが、おかしくなってしまった。

「ハッハッハッ! 弟弟子に助けられるとは、私もまだまだだね! さぁ、気合いを入れろ! フレア!」

 フレアは自分の頬を、両手でピシャリと叩く。


「イダさぁん……!」

「待っててね。みんな必ず助けてあげるから……!」

 イダが瓦礫の下敷きになった子供をなだめている。頭はショールのような布で覆っていた。イダの口ぶりからすると、瓦礫の下にまだ何人か子供がいそうだ。

 しかし、彼らに堕人が迫る。イダは両手を広げ、必死に子供達を守ろうとした。

 するとイダもろとも、子供達が暴風に吹き飛ばされた。イダは何が起きたか理解できなかった。攻撃されたとも思ったが、違った。彼女らを吹き飛ばしたのは、コウヨウだった。

 イダと子供達は空中で一か所に集まると、コウヨウの手の上に積み重なっていく。コウヨウは彼女らを地面に下ろすと、イダに向かって言った。

「逃げな」

「はい……!」

 イダは子供達を促し、足早にそこから去って行った。

 コウヨウが堕人と向き合おうとすると、既にその堕人に猛烈に攻撃を浴びせている者がいる。ワカバだ。ワカバはその堕人を倒すと、また次の堕人の方へ飛んで行った。

 コウヨウの知っているワカバの動きではない。目を凝らしてワカバを見ると、首元のあの塊が無かった。

「解けたのか……! 呪いが!」

 コウヨウはワカバの呪いが解けたことに気づいた。

 コウヨウは、今までとあまりに違うワカバの動きに、笑いながら舌を巻く。

「アイツ……とんでもねぇ才能(モン)持ってやがった……!」


 当初ブルーがワカバに示した予測は、半分は当たっていて、半分は外れていた。

 確かにワカバのキズナは、堕人に襲われるまで、肉体の中に埋まっていた。両親の気を澱ませない生活によって、キズナは次第に小さく変化した為、ワカバが物心つく前には、肉体の中に埋もれていたのだ。それが堕人襲撃や両親の死というショックで大きさを取り戻し、また傷のせいもあって、ワカバの表面に再び姿を現したのだった。

 キズナを付けていても気練師に成っていたことに関しては、ブルーはキズナの効果が弱まっている、との考えを示した。しかし、効果が弱まった時には、キズナは小さくなる。したがって、ワカバがこの街に連れてこられた時点で、キズナは確かにその効果を発揮していたのだ。それでいてなお、ある程度気練師として戦えるほどの能力を、ワカバは有していた。

 そして今、キズナが外れたことによって、ワカバ本人も知らない、ワカバ本来の気の力が発揮されていた。

 コウヨウは才能と解釈したが、より正確に表現するなら、才能というより、無意識の努力という方が近い。

 生まれてすぐ、自分でも知らないうちに呪いを受けて生きていくということは、どういうことか。それは、生まれた時から重りを背負わされて生きていくようなもの。何も知らないと、それは肉体を歪ませ、行動範囲を狭める枷でしかない。しかし、正しく導いてくれる人の元であれば、重りを背負っていても問題なく行動できるようになり、いつかその枷が外れた時、凄まじい力を発揮する。

 両親との生活にコウヨウとの修行。正しい導きは、皮肉にも、気を抑制させるキズナに、ワカバの気を高める一助をさせていた。


 ピンカラは街の中で立ち尽くしていた。皆が突然引き寄せあって巨大な怪物が出現したと思ったら、爆発が起き、そいつが倒れてバラバラに崩れて、その崩れたのも、動き出し街を襲っている。そして今目の前に、その訳の分からない化け物がいた。近くで見るとよく分かる。人が寄せ集まった、化け物。何本かの触手のような肉塊を脚にして、ピンカラの方にのそのそと近づいてくる。

「う、うあぁ、あぁ……!」

 逃げようとするが、足か上手く動かない。腰が抜け尻餅をつき、何とか後ずさるのが精一杯だった。

 そんなピンカラに化け物の腕が伸びてくる。その時、誰かがピンカラを掴み、空中へ高く飛び上がった。

「ふぅ、危なかった」

「あ、あんた……」

 ワカバだ。ピンカラは唖然としていたが、ワカバと分かると、じたばたともがきだした。

「うっ、離せよ! 気練師!」

「じっとしてろ」

 ワカバは着地してピンカラを降ろすと、すぐさま堕人の方に向かった。


 ブルーは堕人として取り込まれてから、尋常ならざる屈辱感に襲われていた。

 堕人として融合すると、感覚も共有するようで、何処かの誰かの視点が乱雑に視界に入ってきて、今自分が何を見ているかも、分からなかった。

 ただ苛立ち、どこにあるか、自分のものなのかも分からない腕をがむしゃらに振るっていた。目につくもの全てが憎たらしくてしょうがない。入り乱れる視界の一つに、子供が映った。

 どうしてこいつは堕人に成っていないんだ。何だその怯えた目は。そんな化け物を見るような目で俺を見るな。

 子供が憎たらしくて、腕を伸ばした。しかし誰かがその子供を抱えて逃した。

 おい、ふざけるな。今俺が殺そうとしていた子供だ。誰だこいつは。

 その男は子供を降ろすと、こちらに向かってくる。……ワカバだ。しかも、首元のキズナが無い。

「アイツ、キズナを外したのか! どうやって……そうか、親が死んだな? アイツ自ら、親を殺したな……?」

 外面が良く何でもヘコヘコと付き従う人間をうまく取り込み利用して、キズナ試作第一号をその赤子に取り付けた。赤子を利用したのは気の流れの癖がついておらず、コントロールがしやすかったからだ。

 キズナとは、気の活動を無理やり抑え込み、抽出、結晶化したもの。それを肉体に埋め込むことで、全身の気の抑制を促す。

 しかし当時のブルーの技術では、本人の気から直接キズナを作り埋め込むことはできなかった。その為、当時ワカバに付けたキズナは、両親の気を利用。キズナが無くなったということは、両親の死を意味する。


 ワカバは、今自分が向かっている堕人の中にブルーがいることに気づいた。しかしだからといって、どうということもない。そのままその堕人に向かい突進する。

 今ならできる……!

 ワカバは走って充分に加速すると、コウヨウがしたように、自身の周囲に風を纏わせ、飛んだ。

「風気操法 颯鎌羽衣(そうれんはごろも)

 そしてその纏った風を練りあげ、鋭い鎌風に変える。今までは手刀や蹴りに沿わせていた颯鎌斬を、全身に纏う。そのまま堕人に体当たりし、切り裂きながら、突き抜けた。


 つんざく痛みをブルーは感じた。屈辱感は更に増した。だが猛烈な痛みで思うように動けず、更に苛立ちはつのった。意識が遠のいていき、自分の命が尽きようとしているのが分かった。

 ブルーは何とかやり返そうと、ワカバに向かって罵りの言葉を浴びせた。

「ワカバ……お前、自分の親を殺したな!? ハハハハハ! クレーシャ・ワカバ! お前、自分の親を殺したな!? この親殺し! 親殺し!! お前結局一人じゃ何もできなかったなぁ! 自分より強い奴らに助けて貰わないと、お前は首を括られ死んでいた! お前は結局、強い奴に助けてもらわないと自分じゃ何もできない、雑魚気練師だ!!」

 ワカバはその言葉に少し考えると、淡々と一言だけ返した。

「絆ってやつだよ」

「……!」

 ブルーは何も返せなかった。

 ワカバはそれだけ返すと、すぐに別の堕人の元へ飛んでいく。

 相手に、されてない。

 この事実が、余計にブルーを苛立たせた。

「ハハハハハ! 親殺し! 親殺し!! 雑草の露啜ってそうだなお前! 雑魚気練師が! キィーキキキキキキ……! ……」

 ブルーは必死にワカバを嗤った。それしかできなかった。どうにかして、相手より上に立ちたかった。勝ったことにしたかった。だから、必死にワカバを侮辱した。相手に嫌な思いをさせないといけなかった。今からできることなんて、それしかブルーには分からなかった。とうにワカバが居なくなっても、それでも嗤い続けた。息絶えるまで、泣きながら嗤い続けた。


「たすけて……たすけて……」

「ふざけんなよ……俺が何したってんだよ……うわあ!!」

「お、俺は分かってたし……! こうなるって……! なぁ、どうすんの? どうすんの!? いぃっ!?」

 堕人と化した人間の口から様々な言葉が溢れているが、フレアは無心で、容赦なく切り捨てていく。

 それに、しても……

 フレアはだんだんとイライラしてきた。気にしないようにしていた騒音でも、あまりに多いとさすがに耳障りになってくる。

 そしてその内容が、あまりにもずれている。

 こいつらはいつまで、自分達を罪なき弱者だと思っているのか。

 まぁ、それもしょうがないのかも知れない。彼ら自身に原因があると、彼らは全く気づいていないのだから。彼らは本当に、自分を被害者だと思っているのだから。

「ちょっと! 気練師! 相変わらず暴力的ね! 弱い者いじめして楽しい!? ねぇ!?」

 ひときわ甲高い声が聞こえる。イエローだ。イエローはフレアに向かって喚き散らしていたが、フレアがイエローの方を向くと、途端に怯え出した。

「ヒッ! な、なによ……可愛いお友達に酷いことされて、怒った? ハ、ハハ……何本気になってるのよ……! あんなの、ちょっとしたジョークじゃない……! 私だって、彼の為を思って……」

「ちょっとふざけてただけで」「あんな大事になるとは」

 並べ立てられる、この手の人間の常套句。

 人に嫌な思いをさせるのを、娯楽のように楽しんでいる。そして少しでもやり返そうものなら、ここぞとばかりに被害者ヅラをして、相手を悪者にする。だからこいつらに目を付けられたら、素直にいじめられるしかない訳だ。

 弱者の化けの皮を被った、ただの卑怯者。いつだって、誰かに何かをされる側。

 自分の行動が世界に及ぼす影響を、こいつらは何故こうも考えられないのか。

「アンタ、こんなに可哀想な目にあってる人に向かって剣を振るうの!?」

 まだ喚いているイエローに、フレアはため息をつきながら近づいていく。

「そうじゃない。もう、そういう段階じゃないんだ。ただ……」

「弱い者いじめよ! 最低! 人殺し! 暴力反対! 暴力反た――ギャア!!」

 フレアはイエローの顔面に深々と剣を突き立て、そのまま切り裂いた。

「あんた達から守る為に、戦うんだ!!」

 フレアは大きく息を吐く。

「ま、情けないって意味じゃ、ある意味弱者か……」


「〜♪〜~♪♪」

 鼻歌混じりに堕人を殺していくコウヨウ。

 そんな彼に、堕人に融合した一人が話しかけていた。

「卑しき気練師め……お前ら、罪なきネマクの民衆に、何をした……!」

 一際目立つ赤い仮面。レッドだ。

「ん? もしかして僕に喋っているのかな? ホントならキミ達みたいな人からの言葉は無視するんだけど……今は気分が良いからか特別に返事をしてあげるよ。何?」

「クッ……お前らは、どこまでも傲慢だな……目上の人を敬えと、学校で教わらなかったのか……? 私達は、この世界を作り上げた、お前達よりも先に生まれた、先人で……」

「あーもう、これだから馬鹿と話すのは嫌なんだよ。すぐ論点をずらしやがる……。大体それ自分から言ってて恥ずかしくなんねぇのか? 敬うような人間なら、こっちから勝手に敬ってんだよ。ほら、お前らが麻薬漬けにした馬鹿達が街をぶっ壊してるぜ。どうすんの?」

「ち、違う……お前らだ……! お前らが、また堕人を生み出して……人を殺して……街を破壊して……!」

 こいつらはまだ誰かに何かされたと思っているのか……

 コウヨウは呆れ、わざとらしく大きなため息をついた。

「……はーぁー、無責任は楽で良いね。ギャーギャービービー文句喚き散らして怒ってますアピールすれば、自分がホントに正義の側だと勘違いしてやがる」

 顔も出ない名前も出ない、人の行動に目くじら立ててるだけの奴は、何故こうも傲慢になれるのか。

「そんなむさ苦しい仮面(モン)通してしか世界を見てねぇから、こんなことになるんだよ。仮面(それ)、取ってやろうか?」

 コウヨウはレッドの仮面に手をかける。

「や、やめろ、やめろぉぉ!! うわあぁぁぁぁ!!」

 レッドの異様な悲鳴に、思ったより強い抵抗。コウヨウは気になったが、そのまま力を入れ続けると、バリバリと音を立てて仮面が剥がれた。

「うわああぁぁぁぁ!! ああ! ああぁあぁ~!!」

 すると現れたのは、皮膚が剥がれ、剥き出しになったレッドの顔面。皮膚は仮面の裏に張り付いて、そのまま一緒に剥がれてしまっていた。

「……うわ、引っ付いてやがったのか……」

 仮面よりも生々しい赤になったレッドの顔面。もはや閉じることのできない両目から、ボロボロと涙がこぼれる。堕人として癒着した手では、それを拭うことも叶わない。剥き出しになった顔面には、流れる涙すら痛い。

「あ、あぁ……俺は、ネマクを守るんだ……! 俺達は、正義なんだ……お前達が、悪いんだ……! あぁ、うぁあ、ああ……」

 嗚咽を交えながら、うわごとのように繰り返すレッド。

 コウヨウはその後頭部付近を掴み、周囲の肉塊ごと無理やり持ち上げた。

「お前らまだ自分が正義と思ってんのか!? ……よく見ろ! これが、お前らがこの街にしでかしてきたことだ!」

 レッドの閉じられなくなった両目に飛び込んできたのは、何匹もの堕人達が蠢き、瓦礫の散乱する、崩壊したネマクの街並み。目を背けたくなるような、惨状。目を背けられない、現実。

「違う! 違う! お前らだ……! お前らなんだ、悪いのは! そもそも、お前らが……! あぁ……! あぁ……!」

 コウヨウはレッドを放り、ポツリと呟く。

「……可哀想にな」

 本心だった。

「馬鹿に世界は救えねぇんだよ。お前達が人の為にできる唯一のことを教えてやる。……とっとと死にな、偽正義」

 既にレッドと、彼が融合した堕人の命はほぼ尽きていた。放っておいても、すぐに死ぬだろう。コウヨウはとどめを刺さずにその場を去った。

 後にはレッドの嗚咽だけが響き、やがてそれも消えた。


 3


 規模の大きな堕人は、だいぶその数を減らしてきた。しかし、細かい堕人は未だ数多く残っている。規模の大きな堕人との戦いのさなか、その衝撃で分裂していった、細かい端切れのような堕人だ。等級にしてほぼC級、大きくてもB級程度の堕人がほとんどだが、大きさが小さい分、その数は増えてしまった。そして時間も経ち、堕人として完成している。もう理性も知性も無い、ワカバもよく知ってる堕人となってきた。

 そしてそれだけ、行動を把握するのも難しい。行動範囲も広がり、今や街全体に堕人が散らばっていた。ここまでくれば、一体一体を倒すのにはさほど苦労しない。だがあまりに数が多すぎる。

 街は壊滅的な被害を受けている。多くの建物は壊れ、瓦礫が散乱、煙が上っている所もあちこちある。しかしその分、見晴らしがよくなったのは怪我の功名だった。倒壊した建物の上に登って周囲を見渡し、堕人を見つけては倒し、人を見つけては避難させ、それをワカバは繰り返していた。

 杖をついて歩く老人に襲いかかろうとしている堕人がいた。ワカバは急いで駆け寄り堕人を倒す。

「お爺さん! 逃げて!」

「……はぁ?」

 老人は聞こえなかったようで、耳に手を当て、聞き直す。

「……お爺ちゃん! に・げ・てー!!」

 ワカバも耳元で叫ぶ。

「……あぁ、頑張れよ、頑張れよ、少年」

「うん、うん、分かったから、早く逃げて……!」

 老人はワカバの肩をポンポン叩いてから、ゆっくりゆっくり、歩いていく。

「……大丈夫かなぁ?」

 だが、彼一人に構っているわけにもいかない。まだどこかに襲われている人がいるかもしれない。辺りを素早く見まわし、人と堕人を探す。

 二、三匹の堕人を倒してから再び辺りを見渡すと、またあの老人に堕人が襲い掛かろうとしていた。

「あぁもう! やっぱり!」

 ……

「そこのお姉さん! 今後ろから堕人が来てる!! 早く走って!!」

 どこかで誰かの叫び声が聞こえる。その誰かも街の人を避難させてくれているようだ。ありがたい。

「そっちじゃない! 右だ! 右に行って!! そこならまだ堕人がいない!!」

 だがワカバはその声に、どこか聞き覚えがある気がした。

 あれ、この声って……

 ワカバはまた壊れた建物の上に登り、その声の主を探した。

 その声が、ワカバを呼ぶ。

「ワカバーー!!  ワカバーーー!!」

 やっぱり……!

 遠く離れていたが、同じように壊れた建物の上に登り、その人はワカバに呼びかけていた。

 ワカバと同じくらいの背丈の、黄みがかった長めの髪。だがその表情は、以前会った時よりも、はるかに精悍なものに変わっている。それはかつて、ワカバに救われた少年。

「アスト……?」

「……アストか!? どうしてここに!?」

 離れた場所で、コウヨウも気づく。

「話は後だ! 僕は堕人とは戦えないけど、その気配を感じることはできる! 生きてる人を逃がすことはできる! ワカバは堕人を倒してくれ! 住民は任せろ!

 ……ワカバ! 僕達今、主人公だ!! 勝って最後に笑うぞ!!」

 ワカバが返事をせずとも、頷き合うだけで二人の意思は通じた。お互いがやるべきことに向け、動き出す。

「お爺ちゃん! あそこにみんながいるから! あっちに行くんだ!!」

 大声を出すのにも勇気がいって、今まではほとんど出したことがなかった。だが今は自然とできていた。

 壊れた家の傍らに、輪ゴムが一個落ちていた。アストはそれを拾い、目や耳を覆っている長い髪をくくる。不格好なちょんまげが頭の上にできたが、今そんなことはどうでもいい。思えばこの長い髪も、目を、耳を、なるべく覆っておきたかった、というのもある気がする。だが今は、全てを感じ取りたかった。

 堕人がこちらに来る気配がする。アストは慌てて別の場所に向かった。

「ようやく最近生きたいと思えるようになったんだ……! まだ、死ねるかよ!」


 ワカバが今しがた倒した堕人。その融合した人間の一人は、キズナを付けていた。この街でキズナは広く普及しているので、キズナが付いた堕人も珍しくない。ワカバはそれを見て自分のキズナが取れたことを安堵したが、今はホッとしている場合ではないと、切り替えて再び堕人を倒しに行こうとする。その時、ワカバの頭の中に一つの閃きが生まれた。

 そうだ……アレがまだ残っていれば……!

 コウヨウもフレアもいるし、アストが街人を避難させてくれてもいる。ワカバは一旦堕人を無視して、広場の中央まで急いだ。広場の中央は極大堕人が出現した、まさにその場所だ。その荒れ方は一帯で最も酷く、土埃は立ち込め、瓦礫の散乱で足の踏み場も無い。

 その広場の正面、極大堕人の一撃で壊れ果てた宮殿で、ワカバはある物を探した。キズナを見て思い出した物。呪いが解け、敏感になった嗅覚で嗅いだ、僅かに残ったあの臭い。

「……あった! なんだ、まだ沢山あるじゃないか!」

 ワカバが探していた物。それは、新型のキズナだ。宮殿の一角に、噴霧器に入れられた新型キズナが、まだ沢山残っていた。そして先刻仮面の騎士団がしたように、ワカバはそれを噴射させる。

「う……! くっさぃ……!」

 間近で嗅ぐと更に臭い。だがそれでも、それをなるべく吸わないようにしながら、片っ端から噴出させていった。

 シューシューと鋭い音を立てながら、キズナが辺りに立ち込めていく。宮殿は既に倒壊しているので、壁もなく、キズナはたちまち広がっていった。

 すると、暴れ回っていた堕人達がその手を止め、クンクンと辺りを嗅ぎ回す。そしてしばらくしたら、のそのそとキズナの方に向かって歩き出した。ワカバの狙いが的中した。

「良し! アイツらキズナに群がってきた!」

 コウヨウとフレアが戦っていた場所でも同様だった。堕人達は手を止め、広場の中央に向かい出す。

 一瞬面食らったコウヨウとフレアだったが、広場中央から来るキズナの臭いと煙、そしてその場にワカバがいたことで、二人はワカバの策に気づいた。

「そういうことか!」

「ワカバ、やるじゃないか!」

 二人とも広場の中央に急いだ。


 ワカバのいる広場中央に、四方八方から堕人が押し寄せてくる。ワカバはキズナをだいぶ吸い込んでしまったが、気は集中して流し続けることで、何とか問題なく扱えている。

 ワカバは向かってきた堕人を倒し始めた。襲い来るのはほとんどがC級、大きくてもB級程度の堕人。今のワカバにとっては、さほど問題ではない。

 しかし、その数が多すぎた。街中に散らばっていた堕人達が一気に押し寄せてくる。それにワカバは一人で対応を迫られた。

 正面からは堕人が三匹。そして左右にも、後ろからも迫り来る。しかしワカバは、それが来るのが分かっていても、正面の対応で手が離せなかった。後ろから来た堕人がワカバに迫る。

 避けきれない……!

 だがその時、その堕人を、炎が切り裂いた。

「ワカバ!!」

「姉さん!!」

 フレアが間一髪間に合った。

 そして正面の堕人も、グチャリと音がして、その頭部が砕け散る。

 コウヨウの拳が、堕人の頭部を砕き、地面にめり込んでいた。

「揃ったな……! 合わせるぞぉ!! お前ら!!」

「「応!!」」

 三人は互いに背中を預ける。そして次々に襲いかかる堕人を倒し始めた。ワカバに襲いかかる堕人が増え過ぎたら、フレアがその堕人を斬った。その隙にフレアに近づく堕人を、コウヨウが倒した。コウヨウが群がる堕人の相手をしている時、後ろから襲おうとしている堕人を、ワカバとフレアが倒した。

 ワカバの旋風が堕人を切り裂き、フレアの炎剣が堕人を焼き切り、コウヨウの閃光が堕人を貫いた。

 際限が無いと思っていた戦いも、いつかは必ず終わるもの。あれだけ多かった堕人も、その数に終わりが見えてきた。

 堕人の相手をするのは、コウヨウとフレアだけでも余裕がでてきた。そう判断したワカバは、地面に手をかざし、残りの堕人に一気に片を付けようと、渾身の気を練りあげていく。

 だが、そんなワカバに一抹の不安がよぎる。

 暗い。

 急に影が差したように、周囲が薄暗くなっていく。ワカバは気になって上を見上げる。

 するとまさにそこに堕人達が引き寄せあい、再び融合しようとしていた。

 ワカバは、堕人が攻撃で上に弾き飛ばされていると思い込んでいた。いや、きっと最初は本当にそうだったのだろう。そんな堕人達がぶつかり合って、再び融合し出したのだ。ワカバはそう予測した。堕人の数がやたら減ってきたと思ったのも、ここに引き寄せられていたからなのだろう。

 その異変にフレアとコウヨウも気づく。

「またひっつくの!?」

「止めるなワカバ! 練りあげ続けろ!」

 現状に戸惑い、気を練りあげ続けるか、それをやめて攻撃に移るか迷っていたワカバに、コウヨウが叫んだ。

 上空に作り上げられていく灰色の肉塊は、手も足も、目も耳も鼻も、何も無い。ただ牙が乱雑に並んだ円形の大口を真下に向けて、蛭のように細長い体を積み上げていく。

 周囲の堕人達はもう全てこの堕人に融合した。そして、ゆっくりと三人に向けて落下していく。牙の並んだ大きな口を開けて。

「風気操法」

 ワカバは練りあげた気を炸裂させた。

(はやて)

 ワカバの練りあげた気が、彼を中心とした、半球状の嵐となる。

 そしてコウヨウとフレアは、その攻撃にそれぞれの気を添える。

 すると、ワカバと、コウヨウと、フレア、三人の気が、共振した。

 それぞれの気が、それぞれの気を高めあう。一人一人では届かない遥かな高みまで、その気は練りあげられていく。煌めく光と燃え上がる炎を帯びたその嵐が、勢いを増していく。そして頂点で堕人とぶつかり、薙ぎ、祓っていく。


 嵐がおさまった時には、三人の息づかいだけが聞こえ、それ以外の物音は止んでいた。

 逃げていた人や隠れていた人が、建物の陰や瓦礫の隙間から、恐る恐る顔を覗かせる。

 堕人はもういなかった。

 三人は、極大堕人を倒し切った。


 4


「あぁ~! わしの可愛い実験道具達が~! 長年の研究が~!」

 嘆いているのはシュターソンだ。彼の家も堕人の攻撃で酷く倒壊していた。

「はいはい爺さん、あんた怪我もなくてピンピンしてんだから、片付け頑張ってよね」

 そっけなく言い放つのはフレアだ。

「分かっておるわい! 冷たいのぉ! ど~れ、まだ使える子はいるかな~」

 シュターソンは倒壊した家に足を踏み入れていく。

「皆さ~ん! 怪我をした人は、こっちへ並んでくださ~い!」

 カルミンがここぞとばかりに救急箱を取り出し、怪我人の治療をしようとしていた。

「カ、カルミンはあっちでほら、瓦礫を運んでくれ……。人には向き不向きがあるから……ね?」

 カルミンの力で包帯でも巻こうものなら、むしろ怪我が悪化しかねない。

 フレアはカルミンにやんわり諭していた。

 ワカバ達は、堕人を倒し終えた後、壊滅した街の復旧作業を手伝っていた。

 キズナ新作発表会があったのは午前中。堕人を倒し終える頃には、夕方となっていた。所々雲の浮かぶ空は、既に橙色だ。

 コウヨウも街を片付けている。風で瓦礫を器用に吹き飛ばし、一箇所に集めていくので、効率は良い。そんなコウヨウに、アストが駆け寄ってきた。

「コウヨウさん!」

「アスト~! 短期間だが、見違えたな! どうやってここに?」

「ネマクの公開処刑の報があって、そこにワカバの名前があって、いてもたってもいられなくなって! ……ワカバは?」

 二人が辺りを見渡していると、声をかける人がもう一人。

「ありがとうございました」

 イダがコウヨウに礼を言う。イダなどの心得のある人らは、怪我人の手当てをしていた。

「何、僕一人なら放っといてもおかしくはなかった。僕の仲間が助けたいって言うからね。礼はそいつに言ってくれ」

「私、あなたのこと知ってます。十年前、堕人からみんなを守ってくれた……私も気になって、こっそり気の勉強をしていたんです。こないだとうとうバレちゃったけど……」

「あぁ、十年前の、ね。あれにしたって、僕は憎しみに駆られて堕人を殺しただけだ。結果的に人を助けたんだとしても、今回のとは違うさ。ワカバってのがいてね。そいつがみんなを助けたいって言うから、戦ったんだが……」

 コウヨウは辺りを見渡す。

「僕達もちょうど今そいつを探してて……ってあれ、アイツどこ行った?」


 ワカバはその頃、鬱々としながら街の片付けをしていた。瓦礫を片付けたり、怪我人を救護所まで運んだり、堕人の死体を片付けたり……そんなことをしながら、今回の一件について考えていた。

 堕人になったとはいえ、沢山の人を殺してしまった。殺すしかなかった。彼らを、救えなかったのだろうか。何とかして、堕人に成るのを防げなかったのだろうか。人間が生きている限り、堕人もいなくならないのだろうか。

 こんなことになるのであれば、ウォーレンのような男がいて、堕人を管理した方が良かったのではないか。いや、ウォーレンでは駄目だ。彼は堕人を戦争に利用する。では、優しいウォーレンのような人を待つ? それも現実的ではない。

 ……いや、もうやめよう。救われるチャンスは、これまできっと何度もあったのだ。彼らは自ら、そのチャンスを放棄したのだ。十年前の事件だけではない。きっと、同じことを、何度も何度も、繰り返してきたのだろう。

 彼らは悲劇を求めているんだ。戦争や、死刑なんかを。表面上ではそれを嫌悪しながら、彼ら自身も気づかない心の奥底では、それを求めている。それにすがって生きている。

 何故なら、それさえあれば、自分の愚かさと向き合う必要がないから。悪を見出し、怒っていればいい。弱者を見出し、かばっていればいい。自分は弱者だと振る舞えばいい。そうしたら、自分は正義の側でいられる。正義の側でいられたら、どんな横暴も許される。

 どんな悲劇も、嘆くだけで向き合った気になって、都合の良い解釈しかしない。適当に見出した悪を責めていれば、それだけで、自分が優れていると勘違いする。それも結局は、侮辱と罵りが上手くなっただけ。だから、キズナのような愚かな解決策を生み出し、また新たな悲劇を生む。そしてまたそれを他人のせいにし、利用する。

 本当に向き合うべきことと向き合えないから、間違っても、間違っても、気づかない。いつまで経っても成長しない。都合の良い事実にだけ群がり、妄信する。少数な真っ当なものは、悪として利用され、否定され、排斥される。だから、同じような人間ばかりが集まっていく。どんなにおかしな価値観も、そうやって広く浸透し、常識になる。

 優しい人は皆、本当は誰だって救いたいんだ。十年前のテスレイドさんだって、師匠だって、姉さんだって。もしかしたら、ウォーレンだってそうだったかも知れない。でも、救えない。救う側がどれだけ頑張っても、救えない。文字通り、救いようがない。

 自分の意思で立ち上がらない限り、人は誰も、救われることすらできないんだ。


 ふと見ると、呆然と立ち尽くす少年がいる。ピンカラだ。もしかしたら、彼の両親も自分が殺したのかも知れない。

「大丈夫か?」

 ワカバは迷いつつも声をかけた。震える声でピンカラが言う。

「あれ、何なの……みんなは、どうなったの……?」

「あれが堕人だ。人間、気が澱むとああ成る」

「何で僕のことは助けたの……!?」

「君はまだ、助けられたからだ」

「僕も殺せば良かったじゃんかよ!! みんなみたいに……! 石だって、投げたし……」

「あのくらい何でもないよ。それに俺達は、別にムカつく奴を殺したかったわけじゃない。あの堕人に殺される人を助けたかった。それだけだ」

 ピンカラは声を詰まらせながら、絞り出した。

「お兄さん……僕、どうすればいいの……? 分からないよ……今まで信じてきたことが、いきなり全部嘘だって言われても……分からないよ……どうしたらいいのか……」

 ワカバは、自分が同じように打ちひしがれていた時のことを思い出していた。こんな時に、どんな言葉をかけろというのだ。

 すると、ピンカラに近づく人がいた。

「生きましょう。私達は、助かったんだから」

 その人は膝を曲げ、ピンカラと同じ目線で喋りかける。

「間違い、失敗、理不尽、悔しいこと、恥ずかしいこと、誰かを傷つけてしまうこと……嫌な思いは人生で沢山あるわ。でも、そういうことと向き合って、人は成長していくの。私達はそれができるから、助かったのよ。だから、一歩ずつ、進んでいきましょう。最初は苦しいけど、大丈夫。そうやって、生きていきましょう」

 イダだった。

「うん……うん……」

 ピンカラが泣きながら頷く。

 イダは向きなおり、ワカバに礼を言った。

「ありがとうございました。今日のことだけじゃなくて、この間のことも……。あなただったんですね。戦おうとしてくれたのは」

「……大丈夫ですか?」

「私は大丈夫です。髪ならまた生えてくるし」

 イダが自分の頭に触れ、おかしそうに言う。

 強い人だ。

 仮面の騎士団や、ネマクの民の強さではない。本当の人の強さを、ワカバはイダに見てとった。

 ピンカラがボソリと呟く。

「お兄さん……ありがとう、助けてくれて」

 ワカバはようやく、少しだけホッとすることができた。

「あぁ。よく生きよう、お互い。俺も、君も、世界の一部なんだから」

 かつてコウヨウに言われたこと。今ではワカバはその意味を、良い意味でも悪い意味でも、よく理解していた。


 今回の一件、堕人となり死亡した者は1024名。堕人の攻撃に巻き込まれ負傷した者は数知れず。

 しかし、堕人に襲われ死亡した者は、奇跡的に一人も居なかった。

お読みいただきありがとうございました。

「終章 ワカバの答え」へ続きます。

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