開戦
魔法と剣、二つの力が跋扈する世界。今その2つとの間の争いに決着が着こうとしていた。
「ここなら誰もおらん。我らがやり合っても大丈夫だろう。」
「そうか…それじゃあ決着をつけようか」
魔法の王と呼ばれている、魔王マーリン。そして剣の神とまで称される、剣神ルーク。穏やかな平原で二者は対峙する。一瞬一瞬に緊張が走る。息を呑むことすらも憚られるほどだ。その緊張を先に破ったのはルークだった。ルークは腰に携えた剣を抜きマーリンの首を切り落とさんと距離を詰めてくる。その速度たるや音速すらも変える速度。その音速の剣はマーリンの首に当たる寸前で止まった。マーリンの防御魔法により止められたのだ。だが通常の魔法使いでは音速を超える剣を止めることは叶わない。それを実現できたのは魔王と呼ばれるほどの才があってこそだろう。だがルークも才だけで言えばマーリンとも遜色はない。止まったと思われた剣は徐々にマーリンの鉄壁とも思える防御を切り裂こうとしていた。
「ふむ…この程度は切り裂くか。ならばこうしようか」
マーリンの周囲に十以上の魔法陣が展開される。それのどれもが一般人…否、鍛えられた戦士や騎士ですら当たれば致命傷は避けられないといった威力を持っている。ルークは咄嗟にバックステップで距離を取る。その速度は瞬間移動したとも思えるほどの速さだ。だがマーリンの魔法発動も速い。ルークが距離を離したとほぼ同時にマーリンの魔法も発動する。放たれたのは全てが違う属性を持つ魔力弾。対処はほぼ不可能とも思える攻撃。だがその攻撃は一瞬にして切り裂かれた。これにはマーリンも目を見開かずにはいられなかった。何故一瞬にして切り裂けたのか、その理由はルークの行った攻撃だ。ルークは後ろに下がると同時に剣を鞘に納め抜剣の構えに移った。剣を極めた人間の抜剣は音速の物体すらも切断することができる。その剣を極めた人間の頂点ともなるルークなら同時に十超える魔法を斬ることも容易い。だがマーリンは剣術に関しては素人、そのようなことを知ろうはずもなく、多少の動揺をしてしまう。対人戦に置いて動揺ほど危険な行為はない。そしてその微細な動揺を察せないほどルークも鈍感ではない。再び距離を詰め斬りにかかる。マーリンもすぐに防御を固めようとしたが動揺したがためか反応が数瞬遅れてしまった。その遅れは致命的、ルークの剣はマーリンの防御魔法を斬り裂いてしまった。そしてその剣は流れるようにマーリンに突き刺さる。普通なら絶命必死の一撃。だがマーリンはその貫いた剣を掴んだ。ルークは油断していた。ほんの一瞬の油断、勝ったと思ったがための油断。その油断の隙を今度はマーリンが掴み取った。ルークは剣を抜こうとするが抜けない。そして徐々にマーリンの形が変わっていく。それは大きな大木となった。その大木の強度は金属にも負けぬ強度を誇っている。ルークはその場の判断で剣から手を離し大木から離れる。すると先ほどまでルークのいた場所に突如として魔法が放たれた。その魔法を放った人物は木へと姿を変えたマーリンだった。
「どんなネタだ?」
「ふふ…お主が斬ったそれは最初から我ではない。我の魔法で作られた人形でしかない。だがそれだけでは貴様にバレるだろう。だから魔法で限界まで気配を消していたのだが…まさかバレるとはな」
「なるほど…」
ルークは強く剣を握りしめる。手のひらには爪が刺さり血が流れる。その怒りはマーリンへのものなのかはたまた己へのものなのかは本人にしかわからない。
始まりは両者相手の発想を超える攻撃の押し合いとなった。誰にも決着の予想できぬ戦いの開戦だ。




