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リュウ 〜社畜で終わるはずだった俺が、異世界で人間最弱から人生をやり直す  作者: F.R


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第2章 アルマ戦闘学院 ― 運命を決める刻印の歳

第2章 アルマ戦闘学院 ― 運命を決める刻印の歳


1 入学 



グラディスが13歳になった日、町中の大人が口を揃えてこう言った。


「いよいよだな、グラディス。」


「アルマ戦闘学院の入学の日だ」  


この国では、いや、この世界では 子どもたちは13歳になると戦闘訓練学校に入学し、


生涯の“役職”を決める。  


“獣士 “


“魔術士”


“ヒーラー”


“剣士”


 どれを選ぶかで人生の方向が完全に変わる。  


戦争の多い世界。  


生きるためには戦える力が必要だ。  


平和なグレイスの町ですら、それは例外ではない。  


……そして、グラディスは胸の奥がそわそわと高揚していた。


(ついに、か……。人生の分岐点……!)  


前世、日本にいた頃。  


彼が逃げ続けてきた “挑戦する経験” から


ただ――。


(前世の俺はダメだったけど、今の俺は違う。

転生して体は軽いし、運動も得意になった。  

それに……漫画で見た“主人公補正”ってやつ!)  


剣士が主人公になる漫画を思い出す。  


巨大な剣を持ち、魔物を切り裂き、仲間を守る英雄。  


カッコよかった。


(俺も……そんな風に生きたい。  

今度こそ、逃げない人生にしよう)  


心に火が灯った。


 グレイスの町から少し外れた丘に、巨大な石造りの校舎がそびえ立つ。  


それが―― アルマ戦闘学院  黒い旗に交差した剣の紋章。  


武骨かつ荘厳な雰囲気で、子ども向けとは思えない迫力がある。


「すご……」  


目を丸くして見上げるグラディス。  


遠くには同い年の子どもたち。  


獣人、エルフ、魔族、ドワーフ、そして人間。  


種族差が露骨に出る世界。  


強さも、成長スピードも、魔力量も――何もかも違う。  


この場所は、ある意味で地獄だ。  


だが同時に、英雄が生まれる場所でもある。


「よし……俺も今日から主人公だ……!」  


小さくガッツポーズをした。




2 運命の選択 ― 職能の選択式  



入学式が終わると、生徒たちは広い円形ホールに集められた。


「これより各自、職能を選択する」  


学院長の太い声が響く。


• ■ 武術科フィスト  体術、素手戦闘。獣人が得意。

• ■ 魔法科メイジ  元素魔法を扱う。エルフや魔人向け。

• ■ 回復科ヒーラー  希少。治癒能力を専門化。

• ■ 剣士科ソードマン  剣を扱う近接最強職。初期脱落率も高い。


「選んだ職能は生涯変更できない。」  


「その証として“刻印”が体に付与される。」


「覚悟して選べ」  


ざわ……ざわ……。  


周りの子どもたちがさざめく。


(さて……俺は、もちろん……)


「剣士科へ行きたいです!」  


誰よりも早く手を挙げた。


「おっ、早いな」


「お前、人間だろ?やれるのか?」


「剣士なんて無理だろー」  


周りに笑われたが、気にしない。


(いいんだ……主人公は笑われるところが醍醐味!)  


自分に言い聞かせるように胸を張り、剣士科の列に並んだ。 


刻印室は薄暗く、中央の祭壇だけが輝いていた。


「では、胸を出せ」  


ローブを着た老人が近づいてくる。


(怖っ……でも漫画でもこういうのあるよな……)  


胸元に手を当てると、青白い光が集まり――  


スッ……


「う……っ」  


刺すような痛み。  


だが一瞬で消える。


「終わりだ」  


老人が言った。  


胸を見ると、そこには淡く光る 剣の紋章 が刻まれていた。


(うわ……すげぇ……!  本当に俺……剣士になったんだ!)  


だけど老人は眉をひそめた。


「……珍しいな。刻印の光が“薄い”。  本来ならもっと強く輝くものだが……」


(え?何かダメなの?)  


不安がよぎる。


「まぁいい。剣士は剣士だ。気にするな」  


そう言われても不安は拭えなかったが、  グラディスは胸に手を当てて決意した。


(俺は俺の力で、絶対強くなってみせる)




3 クラス分け 



今年の生徒は総勢150名 


クラスは50名 1組 計3組 A B C クラスに分かれる


(俺は、Aクラスか) 


教室は体育館のように広く、床には消えない白線が引かれていた。  


大柄な男が中央で腕を組んで待っていた。


「俺が剣士科担当、ガストだ」  


無精髭に傷だらけの顔。  


筋肉の塊のような腕。  


そして教室全体を圧倒する気迫。  


この世界の“本物の強者”の雰囲気を持っていた。


「俺はレベル7だ。」  


「この学院で一番強いわけじゃねえが、お前らを卒業まで生かす自信はある」  


ざわつく生徒たち。


(レベル7……?  すご……。人間で7なんて聞いたことない)


「今年の1年は150名。」


「だが卒業まで残るのは5分の1以下だ。」  


「覚悟しろ!」  


気合いのこもった声に背筋が震えた。



4 レベル制度の真実  初めての授業



ガストは黒板に世界のレベル帯を書き出した。


• 魔族:平均レベル6


• ドワーフ:平均レベル4


• エルフ:平均レベル5


• 獣人:平均レベル5


• 人間:平均レベル1  


教室中が静まり返った。


「人間だけが……ほぼ成長しない。  レベルが上がりにくいんだ」


「な、なんでですか?」


「知らん。」


「古代からそういうものだ。」


「だが――」  


ガストはグラディスの方をちらりと見た。


「レベルだけが強さじゃない。」  


「“基礎値”と“強化値”のバランス次第だ」


黒板に新しく図を書く。


• 基礎値(素の能力) … 生まれつきの才能・限界がある。


強化値レベルアップ … レベル上昇ごとに劇的に伸びる。


「普通は1年に1レベル上がれば優秀だ。」  


「だが……人間は上がらん。 ほぼな」  


落胆する人間たち。


魔族やエルフは得意げに笑っている。


(……クソッ。人間だと不利すぎる……)


前世の記憶がよぎる。


(でもゲームや漫画って人間の主人公が無双するよな……?  


だったら俺だって……負けるわけにはいかない)



5 いじめ ― 魔族の少年“ヴァルド”  



その日の放課後。  


グラディスは魔族の少年に囲まれた。  


赤黒い肌。


角が小さく伸び、目は鋭い。


「人間のくせに剣士?笑わせんな」  


中心にいたのはレベル3の天才、ヴァルド。


「レベル1の雑魚が剣持つなよ。危ねぇだろ?」


「……別に良いだろ。」


「誰だって始まりは1なんだし」


「あ?言い返した?」  


ドンッ!  


腹に拳がめり込む。


「ぐっ……!」  


息が止まり、



(肋が折れた?)  


殴られるたびに、前世のことを思い出す。


(日本のいじめ……可愛いもんだったな……  これ……死ぬんだけど……)  


腕を掴まれ、地面に叩きつけられる。


「人間は地べたがお似合いだよ」  


その瞬間――。



「やめなさい!」  


澄んだ声が響いた。


長い金髪が揺れる。  


透き通るような白い肌。  


大人っぽく優しい碧眼。  


エルフの少女――サラ・エラメールが立っていた。


「エラメール家か、お前まで口出すなよ」


「学院は“育てる場所”。」  


「あなたたちのような暴力は必要ありません」  


ヴァルドは睨んでいたが、サラの背後に控えた教師を見て舌打ちした。


「……チッ。覚えてろよ、人間」  


去っていく魔族一同。  


サラはグラディスに手を差し出した。


「大丈夫……?」


「あ、ありがとう……」  


手を握ると、どこか温かい。  


まるで前世の記憶の深い部分に触れられるような気がした。


「あなた、グラディス、だったわよね?」


「う、うん……」


「私はサラ」


「サラ・エラメール。」  


「今日から同級生……よろしくね」  


優しい笑顔。  


そしてどこか大人びた柔らかい雰囲気。  


その日から、二人は自然と一緒に過ごすようになった。



6 サラとの日々 ― “親友”という距離  



サラは貴族の娘だが、一人暮らしだった。  


両親は王都で働いており、この町に来ることは少ない。  


寂しがり屋なサラは、グラディスの家に毎日のように来た。


「グラディス、今日の宿題一緒にしよう?」


「剣の握り方、私が教えてあげる」


「今日も夕飯、食べていっていい……?」  


優しく、甘やかされているような毎日。


前世では味わったことがない“家族のようなあたたかさ”だった。  


グラディスの両親もサラを可愛がり、まるで本当の娘のように接していた。


(……こんなの、俺の前世じゃ考えられなかった。


 一緒に宿題して、ご飯食べて、笑いあって……  


俺、こんな普通の幸せ……欲しかったんだな)



7 半年後 ― 初の“レベルアップ検定”  



そして季節が巡り、半年ごとのレベル判定の日が来た。  


学院中が緊張に包まれる。  



検定内容は3つ。

• ①基礎体力試験

• ②魔力量測定

• ③模擬戦  


グラディスは剣を握り、深呼吸する。


(やってやる……絶対レベル上がってみせる……!  


俺は主人公だ。


ここが見せ場なんだ……!)


 結果――。



「――残念だが、グラディス。」


「お前のレベルは“1”のままだ」


「……っ!」


膝が震えた。  


悔しさで胸が焼ける。


「そんな……俺……半年間、毎日特訓したのに……!」


「レベルは簡単に上がらん。」


「努力だけではどうにもならんのだ」  


周りの魔族は笑った。


「ざっこ」


「あんなに大口たたいてたのにな」


「人間ごときが剣士目指すからだよ」  


悔しくて、涙が滲む。


(俺は……また前世みたいに、何もできないのか?  


また追い抜かれて、また笑われて……  また……孤独で……)  


その時、ガスト先生が言った。


「だがな――グラディス。」  


「お前の“基礎ステータス”は異常だ」


「……え?」


「筋力、敏捷、持久、知力――  全部、レベル1の人間としてはあり得んほど伸びている。」  


「普通の子の二倍……いや三倍だ」  


教室中がどよめく。


「お前……本当に人間か?」


「へ、変なやつ……」  


ガスト先生は腕を組んだまま続ける。


「レベル1でも、お前は強くなる。」


「基礎が伸びるということは……“限界が高い”ということだからな」  


胸の奥が熱くなる。


(……俺にも……可能性がある……?)  


サラが微笑んだ。


「ね?言ったでしょう、グラディス。  あなたは……特別だって」



8 夜の森 ― 再び“声”  



落ち込む気持ちを晴らすため、学院の裏の森を散歩した。  


夕陽の赤が差し込み、影が長く伸びる。  


その時だった。


『……グラディス……』  


風でも鳥でもない。  


耳の奥に直接響く声。


「あ……!」  


この声――。  


天界のエルフ、セレス。


『見ている……あなたを……ずっと……』


「どういうことなんだよ……!  あんた……何者なんだ……?」  


声はすぐに消えた。


(……俺は……本当に普通の転生者なのか?)  


胸の奥に、不安と希望が同時に芽生える。



9 運命は静かに動き出す  



レベルアップには失敗した。  


人間としての限界も痛感した。  


だが、同時に希望もあった。


• 基礎値が異常に伸びていること


• 刻印の光が“普通ではない”こと


• そして天界のエルフが、自分を見守り続けていること  


サラは隣で微笑む。


「これから、もっと強くなれるよ。」  


「私、一緒にいるから」  


夕焼けに照らされるサラの横顔は、大人っぽくて優しかった。  


こうして――  グラディスの戦闘学院での日々が、本格的に始まった。  


これはまだ……序章にすぎない



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