結婚しない、子どもも作らない、ただ幸せに生きる
結婚しない、子どもも作らない、ただ幸せに生きる。
それが俺の価値観だ。
世間からすれば「ダメな大人」に見えるかもしれないが、そんな自分を、俺は誇りに思っている。
生まれてから今まで、女性たちに対しては「同じ人間」として接してきた。
けれど、ひとたび恋愛や結婚の話が出ると、資産、身長、学歴、デートのプレゼント……まるで成績表を差し出すように、ひとつひとつチェックされている気がした。
俺は全部不合格だって、自分が一番わかっていた。だから、先に自分を脱落させた。
相手の時間を奪わずに済むし、自分自身も「責任」だの「別れ」だのに悩まされることはない。
もし妊娠なんてことになったら、人生は一気に変わってしまう。――それが本当に自分の子かどうか、不安にすらなる。
……こんなことを考えてしまう俺は、最低かもしれない。
でも、そう思うようになったのは、身近な離婚や別れ、社会のニュースを見てきたからだ。
「結婚さえすれば幸せになれる」なんて、簡単な話じゃないって、痛感させられた。
俺たちに植え付けられてきた「子どもを増やせ」という刷り込みが、ふと、透けて見えた気がした。
俺は、女嫌いなのか?
――違う。たぶん、怖いんだ。
どれだけ頑張っても、相手の期待に応えられない気がして。
結婚生活って、女性にとっては「理想」みたいなもので、男にとっては「責任」か、あるいは「不可避の選択」にすぎない気がしてさ。特に「妊娠したら」って話になると、もう逃げ場がない。
それでも、父親や母親として頑張っている人たちは、本当に尊敬している。
俺の両親のように、心から感謝もしている。
だからこそ思うんだ。
「結婚したい人はすればいい。二重の幸せと未来の命を得ればいい。
でも、結婚したくない人にも、その人だけの幸せがあっていいはずだ」と。
俺は俺なりに、静かに、自分の幸せを見つけながら生きている。
誰にも迷惑をかけず、社会に負担もかけず、ただ日々を、淡々と。
この「自分で死を選べない世界」の中で、そんな俺の生き方は、ほんの小さな――本当にささやかな、抵抗なんだろう。
いや、もしかしたら「抵抗」なんてカッコいいものじゃなくて、ただの「逃げ」なのかもしれないけど。
でもそれでも、俺はこの自分が、嫌いじゃない。
この世界に嫌われようが、俺は俺を好きでいたい。
少なくとも、自分の気持ちを、裏切りたくないんだ。