超能力
実験作
「おめでとうございます。あなたは超能力に目覚めました」
病院でそう診断された。
「どんな超能力か教えていただけますか?」
一口に超能力と言っても色んな種類がある。
『未来予知』『時間遡行』『瞬間移動』『感応力』『念動力』等々、他にもどんな能力があるのか把握しないことには危なっかしい。
「当病院の検査だけでは超能力の詳細までは分かりません。専用の施設がありますのでそちらで確認するといいでしょう」
(最近は超能力も珍しくなくなった)
医師から言われるがままに従い、紹介状を持たされたので市内にある別の施設へと移動した。
ここには自分以外にも超能力の訓練に来ている人が大勢いるらしい。
「この先の白いキューブ型の部屋に入って超能力を試してみてください」
(落ち着いてるな)
一昔前なら超能力は騒がれたけど、目覚める人が増えて空想やオカルトではなくなった。
ほとんど流れ作業で係の人に誘導されて白い部屋に入る。
「さて、何から試そう」
部屋の中にはベッドや壁掛け時計の他に、ストップウォッチや図柄の描かれたカード、スプーン、ポラロイドカメラ、テレビ、人形、ラットの入ったケージ等、様々な物が置かれていた。
壁掛け時計の時間は午前9:30。今から2時間は自由に使える。
「最初はやっぱりコレを試して」
スプーンを持って心の中で強く念じた。
「(曲がれ!)」
視界が歪んでその場で尻もちをついた。
慣らし運転もしないでいきなり発動させようとしたからだろう。
「やっぱり、立ったままじゃ危ないか」
ベッドに腰掛けて今度は人形を動かそうとした。
「(動け)」
人形が壁まで飛んでった。
自分も同じ方向へ飛んでった。
(イタタッ!)
ぶつかって倒れ込む。他の道具も散乱した。
ラットがキイキイ鳴いている。
まるで制御が利いてない。
「難物だなぁ……」
ベッドと壁に挟まれながら散らかった道具を観て、頭が痛くなった。
これではまだまだ使い物にならない。
それから2時間みっちり念動力の訓練をした。
何度も壁、天井、床へと激突してヘトヘトだ。
今日でもっと訓練をしないと。
「時間か」
外に出ると大変なことになっていた。
アスファルトはめくれ上がり、周囲の建物には衝突痕が生々しい。
(どんな超能力の訓練をしたらこうなるんだ!)
その場から移動して、すぐに帰宅した。
「念動力は疲れる……」
まだ正午まで時間はあるけれど寝ることにした。
超能力の使い過ぎには睡眠が一番である。
◇◆◇
朝目覚めると頭が重たかった。
時間は午前7:00。カレンダーを確認する。
「うん、問題なし。病院行かなきゃ……」
別の県にある病院を検索。予約を取ってから朝食を摂り、身支度を整えて移動した。
《冒頭へ》
ちょっとしたトリック作品です。
必要な情報が出揃った上で冒頭から読み返すと、何が起こっているのかを推察できるようになっています。