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9/12

9.魔法学院入学へ

それからしばらくの時間をかけ、私は9つの基本魔法全てを習得した。

そして最後の基本魔法である『レブトーネ』を習得した時、私は不思議な感覚に襲われた。


具体的には、体の中に眠る見えないパワーが一回り強くなったような感じがした。

母にそれを言うと、保有魔力が上がったのだと言って喜んだ。

もちろん、私もだ。


 すぐに母は私の魔力を測定し、数値が300をマークしたと教えてくれた。

元の数値が100だったから、私はこの1カ月ちょっとで、保有魔力の数値が3倍になったことになる。


基本魔法は全て消費が50だから、単純に考えて1日につき6回まで唱えられるようになった。

シンプルに、嬉しい。


「私は6歳で魔法を始めて、基本魔法を全て覚えるのには1年近くかかったけど・・・アリアは優秀ね。私の娘なだけはあるわ」


 母は、ちょっと久しぶりに私の頭を撫でてきた。

やっぱり、これは嬉しいものだ。





 転生からもうすぐ6年が経とうとしていた、冬のある日。

いつも通り暖かい部屋の中で本を読んでいると、唐突に母に言われた。

「そろそろ、学院の入学準備を整えなきゃね」


「学院?」


「そう、魔法学院。魔法使いの子供はみな、魔法学院という学校に入ることになっているの。あなたも当然そうよ、アリア」


 まあ、それはそうだろう。私は「灼炎の魔女」の娘。

有名な魔女の子供とあれば、こういう所に入らないのは世間体的な意味でもまずいだろう。


「そう言えば、魔法学院に関して詳しく書かれた本を読ませたことがなかったね。

魔法学院は、魔法だけでなく魔法使いが生きる上で必要不可欠なことを教えてくれる場所。

そして、同年代の子たちとの出会いの場であり、家にいては出来ない経験ができる場所でもある。いずれにしても、行って損する場所じゃない」


 そうは言われても、という感じだ。

少なくとも前世で通っていた学校は、私にとっては損ばかりする場所だった。

自殺したのも、元はと言えば学校に行っていたのが原因だ。


この世界の学校、魔法使いの学校ってのは、どんな感じなんだろう。

異世界もののラノベとかだと、得てしていじめやら何やらがあり、現実の学校と大して変わらないイメージがあるが。


「その学校に入るのって、いつになるの?」


「来年の春ね。ちょうどアリアは7つになるし」


 こっちでも、入学は7歳なのか。

さて、それから果たして何年、いることになるのだろうか。


「わたしは、どこの学校に入るの?」


十中八九近くの学校だろうが、()()()()近い学校となるとまったくわからない。

意外と、この世界の地図とか読んだことないし。


「そうね・・・基本的には、ゼスメリア魔法学院になるかしら。ここから一番近いし、大陸に3つある中で一番の名門校だから」


 名門校か。私には合わなさそうだが、まあ私の生まれを考えると、やむなしか。


「ゼスメリアはいいところよ。一流の魔法使いになりたいなら、ぜひとも出ておきたい名門校。

もちろん出身だけでは将来は語れないけど、それでもゼスメリアを卒業した魔法使いはみな、地位の高い職についているの。だから、あなたにも出て欲しい」


「わたしにも・・・ってことは、もしかして母さん・・・」


「ええ。私もゼスメリアの卒業生。ゼスメリアは、卒業のためのハードルは他より高めだけど、出られれば将来はまず安泰と言っていい。

それに、他より高度な魔法を早いうちから学べる。その意味でも、強い魔法使いになるには避けて通れないところね」


 名門ってか、エリート校か。

ますます私には合わなそうだ。


「ゼスメリアに入学するには、試験があるの。でも私は、アリアは大丈夫だと思う。

私は、アリアにはゼスメリアの入学試験に合格できるだけの魔法を教えた。そしてあなたはそれを、1年もせずに覚えてくれた。

だから大丈夫よ、きっと」


なんと、母がこれまで私に教えてくれていたのは、大陸一のエリート校の試験にも受かるレベルのことであったらしい。

嬉しいけど、なんか素直に喜べない。


それだけ期待されてるってことなんだろうし、母の立場的な意味でもそうしたいんだろうけど、そんなことされても正直困る。

決めつけるわけではないけど、私にそんな力が、能力があるとは思えない。


「試験は、その年の入学式の直前の冬。だから、ちょうど1年後。今はまだ始めなくていいけど、その時までには、入学の準備を整えておかないとね」


「準備って、どんなの?」


「学校で使うもの・・・制服や教科書、バッグなんかね。どれも、市場に行けばすぐに買えるものよ」


 私立みたいな感じなんだろうか?だとしたら、結構高くつきそうだ。

いや、それよりも。

この言い方では、私が学校に入学できる前提の話である。


「でもさ、母さん・・・わたしがその、学校に入れるって、まだ決まったわけじゃないよね?」


「そんなことないわ、大丈夫よ。何せ、あなたは私の娘。自信を持ちなさい」


「う、うん・・・」


 世界最強の魔女の娘、と言うと確かに聞こえはいい。でも、実際の実力がイコールであるかは別だ。


私は確かに「灼炎の女皇」と呼ばれる魔女の娘であり、生まれながらの魔女だ。

けれど、やっぱり自信が持てない。

転生する前の、前世での性格や記憶が、今なお足を引きずっているらしい。


 しかし、私がゼスメリアの制服を着て、学校に行く姿を見るのが楽しみね、と微笑む母を見ていると、そんな期待にも応えたい、と思ってしまった。


変に前世の記憶が残っているというのは、何とも嫌なものだ。

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